長距離走
バスケ部の弱小チームの下りで、あまり声出しや外周走りなどが主な練習で、試合形式の練習は声出しのみの2年間という話をしたが、明けても暮れても外周を走り続けるので、望まなくとも長距離走が得意になった。
陸上競技大会が毎年校内で模様され、全員参加で何かの競技を選ばなければならない。数多くの選択肢がある中で、長距離走だけは皆やりたくない。
苦しいからだ。
長距離と言っても、陸上競技会での距離は1500メートルなので、プロの世界で言えば、ほぼダッシュで走るくらいの距離である。
しかし、中学生からすると、結構な長距離なのである。
この長距離は、いつの日からか「指名されたら断わってはいけない」競技となっていた。
1年の頃に1500メートル走を選んだことがある。
陸上競技大会が近づくと、体育の先生が、直近数週間の体育の時間を、全て陸上競技会の練習に充てる。
周ごとのタイムを記録して、過去最高の記録が出るように指導していくのだ。
立候補したものを除き、大抵サッカー部とバスケ部のように、普段から走り込みをしているものが指名される。
バスケからは私が選出され、サッカー部からも一人選出される。
選出されたサッカー部員はキーパーで普段走るポジションではないものの、中学に入るまでは地元サッカークラブに所属をしていて、常日頃から足が速かったし、長距離も早かった。
毎年、同じメンバーが選出されタイムを競っていた。
当時は、5分を切ることを目標にされた。
一般の成人男性で恐らく6~7分台かと思う。
高校生の男性アスリートで4分半程だろう。
中学だったので5分を若干過ぎるかくらいのタイムだった。
その5分の壁を破るように訓練された。
これが非常にきつい。
マラソンでもなく短距離走でもないので、いまいちペース配分が分からない。
体力を温存するほどの距離でもない。
温存しようと思っていたら、もうスパートだというくらいの時間しかない。
当時の感覚で言うと、ダッシュではないものの、マラソン以上ダッシュ以下の間で走っているので、呼吸がかなりしんどい。
しかも、練習が毎日ではないのも、呼吸や体力が定着しにくい要因。
部活で毎日、外周を走っているとはいえ、その時はスパートをかけないマラソン速度なので、1500メートル走よりは遅い。
残念だったのは、目標の記録を出せても全く嬉しくなかった。
苦しかったからだ。
実は、この経験は、社会人になってからも同じ体験を持つことになる。
後述もするが、社会人になって営業とマーケティングという職種で働いた。
自分が好きなのはマーケティングだが、営業が長いため、転職活動だと営業での転職の方が年収もアップし面接も入りやすい。
しかし、営業は好きではない。
営業マンは調子いいし、嘘もつかされる。
「顧客目線になって考えれば分かる」と言っている上司は、常に自分自身の利益を見ている。
顧客や消費者が喜ばないだろうと思えても、会社が大量仕入れしたものは無理矢理売らされる。
売った後で顧客より「商品が動かない」とクレームを貰うが、営業マンが矢面に立たされるだけで、上司は傷を負わない。
顧客が本当に喜ぶサービス程、利益が薄いことが多い。
そういう商品は、サービスは、もう製品寿命を過ぎていると思うが、顧客が一番喜ぶ製品を売り続ければ利率が下がると叱責され、無理やり値上げをする。値上げ後売れなくなり、また叱責。
そもそも利益が取れなくなっている商品で、且つ販売速度も速いものが、値上げをしたら全く動かなくなった場合、製造コストや仕入れコストを下げない限り、寿命が終わっていると思って間違いない。
本当に需要があれば、多少値上げしても売れる。
私の中で言うと、「サッポロ一番味噌ラーメン」と「おかめ納豆」がそれにあたる。
他の多くを食べて尚、この2つの製品に戻ってきているため、ニーズは金額ではなく味になっている。
高くなれば頻度は落ちるかもしれないが、他に目が行くこともない。
全く売れなくなる商品は、頻度が下がるわけではなく、「消費者から相手にされない」状況になっているので寿命を迎えたと言っていい。
こういう状況でも新たなビジネスモデルを考えるでもなく、新商品の開発をすることもないで、既存のものを値上げするだけだと、営業マンはクレームの的になるだけ。
また営業は、会社全体が傾くと、「営業が弱いからだ」と責任を擦り付けられることも多いし、多くの営業責任者はそれを「宿命」と言っている。
そんな宿命はいらない。だから営業は好きではない。
私にとって当時の長距離走は、営業と同じ。
「実績が出せる=好き」とは限らないということ。
世の中には、好きではない事に従事することが多いということである。
一つ大事なことは、会社が嫌になって起業をしても、モノやサービスは売らざるを得ない。
営業の力がないと売れない。
私は営業とマーケティングを一通りやらせてもらった。
今自分に残る唯一の自信は、どんなものでも売り込むことが出来るという点だ。
それは、この好きではない仕事から得た知識。
持久力もくるしかったけど、ゴールまであきらめない強い意志は学んだと言える。