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【インタビュー】マーケティングディレクター富家翔平氏が語る、BtoBマーケティングとグロースの考え方
皆さん、こんにちは!
Growth Leaders Community運営担当の森綱です。
現代のビジネスにおいて、会社を成長させていくためには「個人」や「組織」の枠にとらわれない視点を持ち、事業を拡大していく必要があります。
そのため、高い視座を持つ「グロース人材」の役割はますます重要になってきているでしょう。
今回のインタビューでは、「グロース人材」に必要な視点や実践的なヒントについて、株式会社EVeMでマーケターとしてご活躍されている、富家翔平さんにお話を伺いました。
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富家翔平 株式会社EVeM Marketing Director
プロフィール:
大手通販会社のマーケティング、広告代理店にてマーケティングコンサルタントを経験。その後、コニカミノルタジャパンにて、営業改革プロジェクト×マーケティング組織立ち上げを推進。マーケティング企画部 部長として、事業部・全社マーケティング組織の責任者を務めた。
2023年秋よりEVeMに参画。実践者のひとりとして、マーケティングに「マネジメントの力」を掛け合わせた成果創出に挑戦している。著書:最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド(翔泳社)
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Sales Marker 森綱
本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。早速ではありますが、ご経歴と、現状の業務内容を簡単にお伺いできればと思っております。
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富家さん
よろしくお願いします!。1社目では通販会社のマーケティング、2社目では広告代理店に行き、BtoC、ウェブマーケティングのコンサルをやった後にご縁があって、コニカミノルタジャパンに入り、BtoBのマーケティングに出会いました。
最初は3人で事業部のマーケティングチームを立ち上げるところからスタートして、4年ほどで30人規模まで大きくし、その後に責任者として全社マーケティング組織の立ち上げを経験しました。
その後、2023年9月に株式会社EVeMへジョインしました。現在はマーケティング組織の責任者として、施策のプランニングから実行はもちろん、チームのマネジメントを行っています。最初の1年間は1人マーケだったのですが、今、マーケティングチームは4人まで大きくなりました。
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。マーケティングに興味を持たれたきっかけはどんなところでしょうか。
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富家さん
最初はマーケティングに関わるような仕事をするつもりはなかったのですが、1社目の通販会社の時に、リスティング広告やアフィリエイト広告といった運用型広告の担当になりました。
広告の「配信量」や「クリック数」、広告経由の「売り上げ」や「ROAS」が数字でパーンって出るのを見て、「これはすごい!」と思ったのがきっかけですね。
売り上げにつながる要素を分解して、「CPCを下げたりCVRを上げるためには、どんな施策が有効なのだろう?」という思考錯誤をするのがめちゃくちゃ面白かったんです。
支援して下さっていたパートナーの会社の方に教えてもらいながらではありましたが、もっともっと勉強したい、できるようになりたいと思うようになりました。
そこで、支援する側に回ってみようと思い、広告代理店に転職しました。
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。では、EVeMさんにジョインしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
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富家さん
「BtoBマーケティング×マネジメント」を自分のスペシャリティにしていきたいと考えたからですね。
BtoBマーケティングの現場では、マーケティングの戦略と戦術が優れているだけでは成果は出ません。ステークホルダーと共創していきながら、実行部分のマネジメントと両輪でないとうまくいかないことばかりです。
でも、マネジメントに悩んでも、解決のための実践的なナレッジがあまりシェアされていないように感じています。
EVeMはまさに「マネジメントナレッジ」を扱っている会社です。EVeMが伝えているナレッジを一番近くで学び、それを実践することによって「BtoBマーケティング×マネジメント」の可能性を探り、体現できるのではないかと思って入社を決めました。
大企業でBtoBマーケティングをやってきたので、人も予算も時間もない過酷なベンチャー・スタートアップの環境で、事業とマーケティング組織をイチから立ち上げるのはどんな感じなのかを経験したかったというのもあります。
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Sales Marker 森綱
少人数組織でマーケティングを行っている会社を探されていたわけですね。
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富家さん
そうですね。ただ、じつは転職活動らしい転職活動はしてなくて、受けたのはEVeMだけでした。
「これから事業を大きくしていくフェーズ」「10人目」「マネジメントというドメイン」「底冷えするマンションの一室」という条件で、僕のやりたいことが全部ある!と思ったので、EVeMしかない!と思いましたね。
これからのことは常に考えていますが、次は自分の会社を作って挑戦したいと思っています。
「BtoBマーケティング×マネジメント」のドメインでなにかできることはないかと思ってるんですが、上司でもある長村さんとは、評価面談のたびに「まだやめないでね」って言われますね。(笑)
もちろん、EVeMをもっと知ってもらって、事業を大きくして、マネジメントに悩む人をひとりでも減らしたいな、という気持ちの方が強いのでまだまだ先の未来として、です。
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Sales Marker 森綱
富家さんはどこにいっても引っ張りだこですね!
では次に、「富家道場 マーケとグロースの考え方を教える 〜経営層と対峙する人物になるマーケティング思考を伝授します!〜」のイベントの感想についても合わせてお伺いできますか。
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富家さん
僕の話に「うんうん」と頷いてくださる方が多くいらっしゃって、とても話しやすかったですね。「グロース」というテーマに興味を持っている方々だからかもしれないのですが、事業や組織などの経営や事業責任者に近い視点で全体を見られている方が多かったという印象があります。
特徴的だと思ったのは、お酒を飲みながら聞いていただいているという点でしたね。そういったラフさは、このコミュニティの強みではないでしょうか。
BtoBのマーケティング施策はどうしても真面目になりすぎてしまうことってありますよね。豪華なホテルや、おしゃれなイベントスペースを借りて、やっていることが「人の話しを聞くだけ」っていうのは、もったいなくないか?退屈なんじゃないかな?なんて思うことも増えてきました。
学びを最大化するという目的を果たすためには、もっとくだけた部分や縦揺れする瞬間があっていいと思っているので、それを感じられる素敵なイベントだったなと思っています。
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。イベントの中で伝えきれなかったことがもしあればお願いします。
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富家さん
登壇の際に話した内容はドラフト版だったので、それをブラッシュアップしたものを『note』として公開したいと思っています。
テーマは、課題や打ち手が複雑なBtoBマーケティングの現場において、思考をシンプル化しつつ、ステークホルダーとの「意思決定×合意形成」をスムーズに行ってもらうためのフレームワークです。
拙著『最高の打ち手が見つかるマーケティングの実践ガイド』には書ききれなかった、かつ、EVeMでの学びを最大限に活かした内容です。書籍を書き終わった後は「もうしばらく書きたくない」なんて思っていたのですが、結局、誰に頼まれたわけでもないのに苦しみながら書いてますね。(笑)
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。今回お話しいただいたのは「マーケティング」に関してでしたが、コミュニティの軸はあくまで「グロース」についてです。「グロース」とはどのような言葉だとお考えでしょうか?
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富家さん
「グロース」とマーケティングはとても近い関係というか、同じ文脈で語られることが多い言葉ですよね。
当たり前すぎて今更なのですが、自分たちの仕事の目的は常に「事業を大きくすること」であるべきなので、マーケティングすら手段と言えますよね。
ただ、マーケターとしての職務を全うしようとするあまり、「マーケティング施策を実行すること」が目的になっていることもあるな、と思いました。
特に、拭けば飛ぶような小さい会社であるEVeMに来て、生きるか死ぬかの戦いに身を置いてそれを感じたんですよね。
「グロース」させるために今日やるべきことをやれているのか、それはマーケターという役割の中に閉じていないか、と。
こうした自問自答は必要に迫られないとできないと思うので、環境を変える挑戦をしてよかったと思えることのひとつですね。
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Sales Marker 森綱
確かにそうですね。事業をグロースするためにマーケティング施策を実行できているか?というのは今後も論点になりそうです。そんなマーケとグロースの繋がりについてもっと深掘りしても良いでしょうか?
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富家さん
そうですね、事業の「グロース」に加えて「組織」のグロースも大事ですよね。
単純に人数を増やすというのではなく、組織の実行力をどう伸ばしていくかっていうこともセットで考えないと、できることが広がりません。
マーケティング施策をプランニングする時に、事業を成長させることと、組織や人を成長させることをどうリンクさせるかが大事だと思っています。
例えば、森綱さんがやりたいことを叶えてあげようとか、森綱さんが成長することだけを考えて、事業上メリットのないコミュニティの立ち上げを企画してそれにアサインするって違いますよね。
あるいはコミュニティを立ち上げるという目的を先行させて「じゃあ、とりあえず森綱さんやって」とするのも、やる意味や意図が分からなかったり、少しもやりたいと思っていなかったら成果はでなさそうですよね。
もしその「やらないといけないこと」が先行したとしても、「森綱さんにとって成長があると思うから、このコミュニティをやってほしい」と一言添えるのは全然違うと思うんです。
マーケターとしてそういうことを考えるのが、事業と組織の「グロース」を両立するための思考であり、アクションだと思います。
一番上流かつ全体を俯瞰で見ているマーケター自身が、事業と組織の「グロース」を目的に据えること、そこがずれないというのが大事なのではないでしょうか。
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。
「事業をグロースさせるためにマーケしてます」というように、特に上流のマーケターの方はグロースについて仰る傾向にあると感じていたので、今のお話は非常に納得感があります。
組織や個人のグロースと会社のグロース、2タイプのグロース両方に触れているのはすごくいいですね。
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富家さん
意思決定する際に目的を見失いそうになったときや、関係者と合意形成するときに「事業をグロースさせたい」と考えられるか、そういう話が添えられるかどうかで、気迫や目に宿る熱さが違って来ると思います。
BtoBマーケティングは施策単体で大きな成果が出ることはほぼなく、その前工程や後工程に関係者が多くなりがちです。
自身の管掌範囲が広がっていく中で発生する調整ごとにおいて「何を目的とするか?」が問われる機会が多いからですね。
事業をグロースさせるという目的のためには、時には「CPAを悪化させてでも後工程の効率を取る」ことや、「全体最適のためにツール導入のプロジェクトを推進する」「営業組織にCRMへの入力を徹底してもらうようにお願いする」といったことも必要ですよね。
その時に自分たちの理だけで押し付けているように見えてしまうと、調整の難易度が上がってしまいます。
なので、常に経営者目線で目的を考えて、その意義を自分の言葉で伝えることが求められるんだろうなと思いますね。
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Sales Marker 森綱
ありがとうございます。今まで結構謎だったんです。マーケティングの方が「グロース」と頻繁に言うのはなぜなのかな、と。マーケは経営手段に近いからだったんですね。
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富家さん
そうですね。仕事への向き合い方も大切だと思っていて、特に「観点と言語化」は意識するようにしています。
例えば「事業をグロースさせる」「BtoBのマーケティングで成果を出す」って問い自体がすごく大きいですよね。
そうではなくて、BtoBマーケティングで成果を出すためには、例えば「リード管理」「リードジェネレーション」「予算の最適化」など、考える際の「観点」の幅を広く持ったり、使い分けたりすることで思考も深まると僕は考えています。
そして、その「観点」で考えて「言語化」してみるのを繰り返していくことで成長していけると思っています。
生成AIもこの「観点」の洗い出しと「言語化」を助けてくれるのですが、最終的に求められるのって意思決定の強さだと思うんです。納得感とも言えますね。
自分が考えに考え抜いて「よし、これやるぞ!」っていう時の意思決定の力強さと、生成AIの出力を見て「ああ、これ良さそうだから、やってみようかな」っていうのって、結果的にアクションが同じでも、生まれる成果は違ってくると思うんです。
BtoBマーケティングで成果を出すためにはマーケターがリーダーシップを発揮して、周りを引っ張っていく必要があるんです。その時に、「生成AIで言われたから、これかな」という程度の意気込みだと最後の最後で覚悟を問われた時に迷いが生まれると思うんです。本当にこれでいいのかな、って。
「観点」の洗い出しと「言語化」は生成AIで効率化されていくので、その先にどんな言葉に魂を込めてみんなを引っ張っていくか、が大切になっていくと思います。
その時にできるだけ、事業や組織のグロースという目的を達成するために!という目線で語れると、出てくる言葉や見える景色は変わってくるはずです。
もちろん僕も全然できてないので、一緒にがんばりましょう!
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Sales Marker 森綱
僕自身もそうですが、耳が痛い人は多いのではないでしょうか。
ChatGPTを利用するのもいいのですが、結局、最終決定に関しては自分の頭を使う必要があるなと思っています。
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富家さん
観点を広げたり、自分になかった観点で物事を切るという点において、生成AIは心強いですよね。0→1の言語化もバババってやってくれますしね。
今までは「経験」や「センス」と呼ばれていたスキルの差が縮まった、ということですよね。
だからこそ、やるぞ!と「意思決定する力」「それを語って合意形成を図る力」、そうして「組織引っ張っていく力」は、差分として残ると思うんです。
マーケターに求められるスキルとして最後に残るのはそういう部分だったりするかも知れませんね。
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Sales Marker 森綱
私もAIを利用して作った、自分の中で非常に納得した案や観点でも、Slackなどの連絡ツールを使って他人に届けた時には、「これちょっと違うな」と思うことがあります。
そこが言語化できていない、自分の魂を込められていない部分なのかもしれませんね。
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富家さん
これもよく話していることですが、人間には感情がありますからね。「あなたの言っていることは分かるけど、あなたのことが嫌いだから言うこと聞きません」ってあるじゃないですか。
逆に「あなたの言ってることはよくわからないけど、大好きだから協力します」ってこともありますよね。
結局は人と人同士が顔を合わせながら協力することで仕事は前に進んでいくので、突き詰めていくと、後者の方が成果が出るはずです。
「理屈」はもちろん大事ですが、マーケターとして向き合うべきは、互いの感情に寄り添いながら一緒に「納得」して、元気よく目標に立ち向かうことなのかなと思います。
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Sales Marker 森綱
最後にとても良い締めのお言葉、ありがとうございました。
大きな組織の中のマーケ責任者のご経験だけでなく、さまざまな経験を経てマーケティングディレクターとして活躍されている富家さんならではのお話しを沢山お伺いすることができ、非常に有益なお時間を頂戴いたしました!
富家さんはいつも快活で笑いの絶えない方で、私もどんな面白い話が聞けるのかいつもワクワクしています!
もしかしたら「グロース人材」とは「笑顔を生み出す人」なのかもしれません。
引き続き富家さんのようなグロース人材とお会いできることを楽しみにしています。ぜひ皆様も引き続き記事を楽しみにしていてくださいね!