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「バイアス」をなくすことはできるのか

みなさんこんにちは。
喉の不調により全体的に体調が悪いです。大杉です。

私、最近勘違いが非常に多い気がします。
少ない被害で終われば良いものの、時には大きな事態を引き起こすことすらあります。

さて今日は、それに関連して(?)みなさんもよく耳にするかもしれません、見方のメガネ「認知バイアス」についてお話ししていこうと思います。

認知バイアスとは?

さてそもそもですが、「認知バイアス」という単語を耳にしたことはあるでしょうか?

認知バイアスとは、私たちが意思決定をする際、先入観や経験則、直感などに頼って非合理的な判断をしてしまうことであり、誰にでも生じるものです。

認知バイアスの例

かの有名な川合信幸先生が認知バイアスについて講演された際の記事に、こんな問題がありました。(直接引用するのは流石に、、と思ったので、ある程度内容は変更して記述しています。)

医者である大杉は県内では有名な医師である。冷静沈着、優秀な外科医で、地元の市長からも熱い信頼を受けている。そんな大杉が働いている病院に、交通事故にあった親子が運ばれてきた。父親は即死で、息子は重症。その運ばれてきた息子を見て大杉は衝撃を受けた。患者は大杉の息子であった。

川合:2024参考

みなさんはこれを読んで、大杉とこの親子がどういう関係か推測できましたか?

ちょっとだけ考えてみてください。



大杉は妻と離婚し、再婚した妻の父子であると考えた人もいるかと思います。
ただ、今回の答えはもっと簡単です。

大杉は母だった。

これだけでしっくりくるかと思います。

とはいえ、この答えを予測できた人はどれだけいるでしょうか。
外科医であり、冷静沈着で信頼が厚い、このnoteの作者の私と同じ苗字、これらの条件から、自然と今回の「大杉」を男性と想定したのではないでしょうか。

こういった思い込みを、いわゆる「ステレオタイプ(固定観念)」と言います。
ただ、これは必ずしも悪いことではなく、逆にこのステレオタイプのおかげで効率化が図れる、行動しやすくなるということもあります。

このステレオタイプも認知バイアスの一つです。


そして、この認知バイアスには、ステレオタイプのようにいくつかの種類があります。
ここからはそれらを一つずつ見ていきます。

確証バイアス

確証バイアスは、簡単にいえば

自分が正しい!と思ったものにしか目がいかなくなる

というものです。

これが正しいと思い込んだ一つの結論に執着してしまうことで、反論する情報や事実を見逃してしまうのです。

わかりやすい例を挙げると、最近流行りの「MBTI診断」なんかがあるのではないでしょうか。
MBTI診断は、16の性格タイプのうちこれに近いだろう、という性格が10分程度のアンケートから導き出されます。

もちろんアンケートに従って出される結果なのである程度の信頼性はあるのかもしれません。
ですが、必ずしも結果通りの性格というわけではありません。
ちなみに私は運動家(ENFP)でしたが、Eであるほど外交的だとも自分では思いません。人と話すのは好きですが得意というわけでもないです。

MBTI診断の結果(一例)

このMBTIに頼って、
「この人はMBTIがこれだからこんな性格だろう」
と決めつけて話してしまい、結果的に相手を傷つけてしまうかもしれない。これが、確証バイアスです。


行為者ー観察者バイアス

これまた簡潔にいうと、

自分の失敗は環境のせい、相手の失敗は相手のせい

と決めつけてしまうバイアスのことです。

  • 自分が行為者となって悪いことをしてしまった場合、それを環境要因のせいにしてしまう

  • 自分が観察者となった場合、相手の悪いことは相手のせいにしてしまう

こういった事象が行為者ー観察者バイアスによって起こってしまいます。


例えば「遅刻」が事象として起こった時、

自分が行為者(遅刻してしまった人)なら、
・遅延する電車が悪い
・そもそも最近寝れてないから仕方ない
・予定時刻より数秒早いのに電車が出発してしまった
などなど、それを環境のせいにします。

自分が観察者(遅刻された人)なら、
・相手が時間に余裕を持って出ないのが悪い
・相手の準備が遅いのが悪い
など、相手が悪いという思い込みが先行してしまいます。

これが行為者ー観察者バイアスです。


正常性バイアス

これは最近よく耳にしますね。
わかりやすくいうと、

「どうせ自分は大丈夫」だと思い込む

バイアスです。

自分の身に降りかかる困難や事象について、自分には起こるはずがないと思ってしまうのです。

つい先日、ラーメン二郎で起きた事件で正常性バイアスがトレンド入りしていましたね。

この事件では、火事が起きているにもかかわらず、お客さんが席に座ってラーメンを啜っていたという一見異常な事態が注目を集めました。

これが自分には起こるはずがない、という正常性バイアスなのか、はたまた後ほど説明する同調性バイアスなのかはわかりませんが、そういった無意識の認知バイアスが引き起こした現象の一つであると思います。


同調性バイアス

さて、その同調性バイアスとは、

周りに合わせる

バイアスです。

バイアスじゃないやん!ただの心理じゃん!って思ったかもしれませんが、これが無意識に起きるというのが同調性バイアスです。

例えば食べログなんかがそうです。

なんとなく評価がいいところに食べにいきたい、それはもちろんです。

それに加えて、上に出てくる口コミがいい評価だと余計いきたくなりませんか?
やらせかもしれませんが、誰かが良かったと言っていた、というコメントは安心感を生みます。
自分一人で決定する負担を減らすという意味でも、この同調性バイアスはかなり起きる場面が多いバイアスの一つです。


バイアスはなくなる?

さて、ではここからが本題です。
マイナスな事態を引き起こす恐れのあるこのバイアス、果たして無くすことができるのでしょうか。

そもそも無くす必要はあるのか?

の前に、そもそも無くす必要があるのか、というお話からしようと思います。

結論から言うと、無くす必要はありません。

バイアス自体は、悪ではないのです。

ステレオタイプのところでもお話ししましたが、バイアスのおかげで自身の行動が決定できる、効率化が図れることもあります。
また同調性バイアスのところで口コミのお話もしましたが、バイアスに従った結果良いお店に行けるということもあります。

とはいえ、先述したようにバイアスによるデメリットもたくさんあるのが事実です。

バイアスはなくすのではなく、見直して軽減する

また、ここでもう述べておきますが、バイアスは無くなりません。
そして、なくす必要もありません。

自身にとって自覚できていないバイアスに気づき、無自覚な差別、エラーをなくすことが必要なのです。

軽減法①:第一印象を信じすぎない

まずはこれです。

一見してこれだ!と思うことが、実は合っていたということはよくあります。

ですが、そこでも一度立ち止まって自分の考えが正しいか振り返ってみてください。
実際私も、一瞬だけ立ち止まって考えた結果考えが変わったことが何度かありました。

そこでの考え方としては、

  • 事実のみを見つめてみる

  • 他の見方がないか考える

  • 自分がなぜそう感じたのかをよく考える

などがあります。


軽減法②:クリティカル・シンキングを常に行う

クリティカル・シンキングとは、
「何を信じ、行うか決定するための合理的で省察的な思考」(Ennis RH,1985)であり、言い換えると「批判的思考」です。

よくインターネットで情報を適切に見極める力としてネットリテラシーが挙げられますが、それにもこの批判的思考が必要です。

このクリティカル・シンキングの方法として、
とにかく「本当に正しい?」を疑い続けるという手法があります。

常に正しいかを検証し、確かめる。地道な方法ですが、正しい情報、事実を受け止められるようにするには必要なことです。


軽減法③:俯瞰的、または客観的に捉える

俯瞰的にみるというのは、いわゆる「メタ認知」です。
某人気サッカー漫画でよく出てきますね。サッカー漫画って圧倒的パワー強すぎストライカー主人公ストーリーというよりはこういう系統の方が流行りなんでしょうか。

メタ認知は、自分や物事を一つ上の次元から捉えるということです。物事を正しく、全体的に捉えるために必要です。

客観的に捉えることは、相手目線に立つ、という意味でも必要です。
相手の目線に立つ(客観的に捉える)ことで、事象の原因を相手に押し付けるだけにならず、より良い関係を相手と築くことができます。


軽減法④:いろいろな立場の人と話す

長くなりすぎてもよくないので、一旦最後にさせていただきます。

例えば会社でも役職の違う人、もっといくと業種の違う人、もっともっといくと年齢も大きく違う人、さらーに行くと国境を超えて人種の違う人など、いろいろな人と話すこともバイアスを軽減する中では効果的です。

全く違う立場の人と話していく中で、こんな考えの人もいるのだ、こんな考え方もあるのだと、自分の思考の幅を広げることができます。
その結果として、この人はどうせこうなのだろうな、という偏ったバイアスを減らすことができます。


終わりに

さて、ここまで長々と書いてきましたが、これ以外にも軽減法はたくさんあります。
自身の行動、思考が正しいかを常に振り返ったり、自身の思考の引き出しを増やしていったりしていくことで、自身にかかる悪いバイアスを減らしていくことが重要です。

そして何より大事なのは、誰にでも、当然自身にもバイアスがあるということを理解し、柔軟に現実を捉えていくことです。

自身にもバイアスがあることを知っておくだけで、これからの関わり方は大きく変えられると思います。

ここで注意したいのが、バイアスがあると理解することと、自身の軸をぶらすことは違います。
「自分はこう思い込んでいるだけかもしれないから、自分のスタイルは持たずに毎回相手に合わせて慎重になろう」
という考えだけになってしまうと、相手の出方を伺っているだけの人だと思われる恐れもあり、逆に相手と円滑なコミュニケーションを取ったり、信頼関係を築いたりすることがむずかしくなります。

人とどう接していくか、そのためにどう言った知識を持っていくことが必要か、今回のバイアスも一つの例としながら、私も考えていきたいと思います。

それではまた!


参考文献

・認知バイアス -判断し行動するときの心のクセ-
川合伸幸 第57回日本作業療法学会基調講演 2024年43巻2号p.159-163

・「脳のクセ」に気づけば、見かたが変わる 認知バイアス大全
川合伸幸 監修 ナツメ社 発行 2022.6.6

・認知バイアスとは?具体例や企業にもたらす影響・対策を紹介
株式会社あしたのチーム 2023.4.27 更新 2024.5.30 23:26 閲覧

・バイアスとは|意味と種類【データ分析時の注意点まで解説】
サイカロン 2023.4.25 更新 2024.5.30 23.28 閲覧

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