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中学校における「保健科」の重要性

みなさんこんにちは。
休みという休みはないですが、一泊二日くらいでまたデトックス旅に出ようと思います。大杉です。
全てを当日の気分で決めるアテのない旅ですが、毎回何かしらの気づきを得られる素敵な旅になっちゃうので今回も楽しみです。
みなさんもぜひ行ってみてくださいな。

さて、話は変わりますが、今回は久しぶりに学校教育についてのお話です。

今日のテーマは、「保健体育」の「保健」の部分です。

教育実習の時期が近づき、最近友人や知人にその参考として「保健ってどんな授業してた?」と聞くことがあります。

その時によく言われるのが、まず「あんま覚えてない!」です。
さらに言うと、「やった覚えがあんまない!」もありました。

確かに保険の授業は体育とひとくくりにされているせいか、
・体育の付随授業
・雨が降った時などに仕方なくやるいわゆる「雨降り保健」
などのイメージが多いように感じます。

ですが、それでいいのでしょうか。

保健の学習指導要領や教材を読み進めていくと、実生活に必要な知識、知っておかなければいけない情報がふんだんに詰め込まれています。

今日は、それらをいくつかピックアップしてみていくとともに、改めて保健授業の重要性をお伝えできればと思います。


そもそも保健って何するの?

さて、まずはそもそも保健とはどんな授業なのかと言うところからお話ししていきます。

目標

保健体育科の目標を以下に引用します。

体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的な解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1)各種の運動の特性に応じた技能等及び個人生活における健康・安全について理解するとともに,基本的な技能を身に付けるようにする。

(2)運動や健康についての自他の課題を発見し,合理的な解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。

(3)生涯にわたって運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,明るく豊かな生活を営む態度を養う。

中学保健体育 学習指導要領より引用

学習指導要領に記載されているように、保健体育科を通しての目標は、

  • 心身の健康

  • 豊かなスポーツライフ

を実現するための資質・能力を身につけ、表現しようとすることです。

重要なのは、体の健康はもちろん、心の健康も目指すことです。

保健体育科では、これらを身につけるためにさまざまな単元が設定されています。

では、ここから実際にどんなことを学ぶのか、簡単にみていきましょう。

内容構成

保健科の内容構成は、ざっくり以下の4つに分かれています。

  1. 健康な生活と疾病の予防

  2. 心身の機能の発達と心の健康

  3. 障害の防止

  4. 健康と環境

意外と少ないと思う方もいるかもしれませんが、この一つ一つの単元の中に、たくさんのテーマが詰め込まれています。

ではここから、一つ一つの単元とそのテーマ内容についてみていきましょう。

保健科で取り扱う内容

健康な生活と疾病の予防

ここでは、大きく6つのテーマを扱うことになります。

  1. 健康の成り立ちと疾病の発生要因

  2. 生活習慣と健康

  3. 生活習慣病などの予防

  4. 喫煙、飲酒、薬物乱用と健康

  5. 感染症の予防

  6. 健康を守る社会の取り組み

一つずつみていくととてつもなく長くなるので、気になる方はぜひ学習指導要領や教科書を手に取ってみてください。

ここは、健康についての要因には主体的なもの(自身の行動や遺伝、体質など)と環境的なもの(温度や感染症、人間関係など)があることを理解した上で、その両方の要因を詳しくみていく単元となっています。

特に生活習慣についてのテーマは、中学生の現在の生活習慣は生活習慣病などに大きく影響することがあったり、運動や睡眠の習慣が身につく時期であったりと、中学生のうちに学んでおくべき重要なものとなっています。
中学生は部活動の加入、体育授業の積極性などで運動習慣・運動量が大きく変わってきます。幼児期にスポーツに触れておき、楽しいものだと感じられるようにすることはもちろん、この時期に運動をいかに習慣化することができるかが、のちの運動習慣に大きく関わってきます。

また、テストが増えたり受験を意識したり、はたまたゲーム(画面を見るものや通話しながら行うもの)が流行したりする時期でもあるので、睡眠時間が短くなる生徒が多くなります。睡眠時間の短さを自慢しがち(当時の体験談)な中学生ですが、ここで睡眠の重要性を知ってもらい、睡眠をとるようにしてもらうことが成長にも健康にも重要です。


生徒によっては、してはいなくとも喫煙、飲酒が自分の身近にある人が多いこともあります。
もちろん生徒の悪ふざけでついやってしまう可能性もありますし、これから人間関係の中で起きてしまうことも十分あり得ます。
そして大人になったら、生徒自身も当然のように喫煙、飲酒をすることになるでしょう。
その前に、喫煙や飲酒が健康にどんな影響を及ぼすのか、どんな疾病が起こるのか、どんな危険が潜んでいるのかを知っておくことで、自制できるように知識をつけておくのです。
薬物乱用とも合わせて、これらは中学生のうちに学んでおくことにこそ意味があるのです。

他にも、健康を守るために社会で行われている取り組みや施設についても学ぶことができる単元となっています。


心身の機能の発達と心の健康

ここでは4つのテーマにそれぞれ分かれます。

  1. 身体機能の発達

  2. 生殖に関わる機能の成熟

  3. 精神機能の発達と自己形成

  4. 欲求やストレスへの対処と心の健康

ここにも、中学生だからこそ学ぶべき内容が、盛りだくさんです。

まず身体機能や生殖に関わる機能の発達・成熟については、成長には個人差があること、これまでなかった異性への性衝動が生じたり異性への関心が高まったりといわゆる「思春期」に入ることなど、今の自分の成長や気持ちに不安を感じる時期だからこそ知っておくべきことなのです。

他にも、中学生はスマホを持つようになったり生徒同士で遊ぶようになったりして小さな社会がいくつも形成されること、前述したように気持ちにさまざまな変化が起きることからも、精神が不安定になることが多くなる時期です。
そこで、そういったストレスや欲求に対処する方法を見つけたり、外界からの影響で起きること、精神発達上避けられないストレスもあることを理解したりするテーマもあります。

ここで重要なのは、生徒自身に考えさせ、実践できるような授業をすることです。
特にストレス対処などは完璧な正解があるわけではなく、どういった方法が良いのかは千差万別です。そのため、自身の現在の悩みは何か、それを解決するためにどうすれば良いかを教え込むのではなく、自身で考えてもらう必要があります。
そうすることで、今後同じような悩みに直面した時、自分自身で考えられる基礎が身につくのです。
これは評価で言うところの、「思考・判断・表現」となります。

傷害の防止

こちらも4つのテーマに分かれます。

  1. 交通事故や自然災害などによる傷害の発生要因

  2. 交通事故などによる傷害の防止

  3. 自然災害による傷害の防止

  4. 応急手当ての意義と実際

中学生になると、自転車通学や部活動に参加する児童が多くなります。
その中で起こりうるのが熱中症や移動中の交通事故などによる傷害です。

また、強度の強い運動や激しいデュエルの多い運動などで必ずしも起こらないとは言えないのが、脳震盪や心臓震盪など命に関わる傷害です。
そういった事態が起きた時、近くに顧問やコーチがいないこともあり得る中で、どういった対応をすれば良いのか、応急手当ての方法を少しでも知っておくことで安心につながったり、命を助けたりすることがあります。

他にも、南海トラフ地震が近いうちに起こると言われている中で、地震が起きたときに自分はどういう動きをすれば良いのか、どういった準備をしておく必要があるのかをあらかじめ心得ておくことは、自身の命を守るために大切です。

ここでも、実際に障害が起きたケースや自分たちの住んでいる場所で災害が起きた時にどう行動すれば良いかを考えさせることが重要です。
結果として、仮にその答えを忘れていても考え方を覚えているため、素早く考え、行動に移すことができるようになります。

健康と環境

この分野は、これまでの単元と関連している部分が多いです。
そのぶん、これまでのテーマと関連を持ちながら学んでいくことで、より深い理解を得ることができるようになります。

ここでのテーマは大きく3つです。

  1. 身体の環境に対する適応能力・至適範囲

  2. 飲料水や空気の衛生的管理

  3. 生活に伴う廃棄物の衛生的管理

部活動の話で少し述べましたが、部活で起こる傷害の一つとして熱中症があります。
これは、気温に身体の適応が追いつかなくなった結果起きる反応であり、健康に重大な影響を及ぼします。
そのような適応を超えた障害の対策として、どういった方法が考えられるのか、逆に活動しやすい至適範囲とはどのようなものなのかを考えるテーマが1の適応能力・至適範囲となります。

他にも、日本ではあまり考えることのない水道水や空気の衛生管理、なかなか自分からは気にすることのないゴミ問題や公害問題などについても考える機会となります。
実例に触れながら、自分たちはどんな問題に直面していて、これからどういった行動を取らなければならないのかを考える重要なテーマです。

ちなみに、私は昨年フィリピンに行き、ゴミ山の問題について直接目にする機会がありました。
日本で生活していると目にすることのないような、でも放っては置けないような、そんな意識しにくとも意識しなければならない課題が詰め込まれています。


保健の重要性

さて、ここまで何を学ぶのかについて簡単に触れていきました。

私の書き振りからもわかったかもしれませんが、この保健の内容は、
中学生だからこそ学ぶべき内容が多いです
逆に、中学生のうちに知っておかないと、心身の健康を害してしまったり思いもしない事態が起きてしまったりしてしまうことがあり得ます。


ここからは、ちょっと思想が強いと思われるかもしれません。

私は、だからこそ保健は主要5教科に匹敵する、それどころか主要5教科以上に重要な科目であると考えます。

学力的な知識というより、生きていく上で必要な知識である保健は、雨降り保健のように仕方なくや穴埋めで行われるべき授業ではないと考えます。

保健授業のあり方

そんな保健授業は、途中でも述べたように一方的に教えるだけでは身につきません。
知識及び技能の習得はもちろん、その上で「思考・判断・表現」ができるか、応用して自己の課題も発見し、その解決に向かうことができるかなど、より実践的な学びが求められます。

そのため授業内では、生徒同士で考える機会の提供、テーマに沿って自身の回りの課題について考えるワーク、実生活に活かせるような具体的なケース設定やその学びを与えられる環境づくりのための効果的なICT活用など、たくさんのことを考えなければいけません。

これは他の教科でも同様です。

効果的で実践的な学びを得るために、どんな教師の環境づくりが必要か。これを常に考えながら授業を作っていく必要があります。




まだ大学生の私が何をいっているんだという感じですが、教育学部に在籍し、教育やスポーツを学んでいる身として、改めて「保健」の重要性を伝えたかったので、今回は記事にさせていただきました。

他の投稿も見ていただけると幸いです。

今回はこの辺りで終わりにします。
興味を持っていただけた方は、ぜひご自身でも学習指導要領や教科書をご覧になってください。

それではまた!

参考文献

中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 保健体育編
平成29年7月 文部科学省

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/03/18/1387018_008.pdf

中学保健体育
令和6年1月20日発行 株式会社Gakken

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