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街の基準 店の基準

先日、父親の命日で久しぶりに帰省した。

僕の実家は、神奈川県藤沢市の鵠沼という海沿いの街にある。

なんのことはない。東京から小一時間のベッドタウンだ。

家から海までは、歩いて20分〜30分ほど。

父親の墓も、お隣鎌倉市の腰越にあって、こちらも高台から江ノ島の海岸が見渡せるところにある。

どこを歩いていても、どこか潮の香りがする、いい街だ。


ところで、


帰省するたびに思うのだが、我々海沿いに住む人間にとって、自分の街を認識する時、常に「海がどっちにあるか」が基準になっているような気がしてならない。


街を歩いているとき、迷子になったとき、知人を案内するとき、

常に、海からの距離・方角を意識している自分がいる。


そんな話を、お客さんにしたら、

「あ、それ、わかる。私は長野出身なので、それが常に「山」です。」

と、言われた。

育った土地によって、それが「海」だったり「山」だったり「湖」だったりするのかもしれない。

とにかく、そんな自分の街を認識する「基準」みたいなものが、誰しもあるのではないだろうか。


  ◆


僕が社会人になって最初に勤めた会社は、いわゆる都市計画系のコンサルティング会社で、官公庁向けの企画・提案や、調査・報告書などの作成を請け負っていた。

最初に就いた僕の上司は、とても優秀な人で、特に自治体の主催するプロポーザルコンペや、競争入札などの際には、抜群の集中力を発揮して、連戦連勝、必ず競り落としていた気がする。狙った獲物は逃がさない、と同時に、どこか主催者側の担当者の勘所を掴むのが得意なような感じだった。

一度、何かの酒宴の席で、少し照れ臭そうに、そして、少し誇らしげに、

「親父がな、県庁に勤めてたんだ・・。」

と話してくれたことがあった。

そのとき、なんだか少しだけ合点がいったような気がした。

その上司は、どこか心の中で、自分の父親へプレゼンをしているつもりで望んでいたのかもしれない。


  ◆


僕の父親は、商社に勤めていて、藤沢から「東京駅(正確にいうと大手町)」へ、通勤していた。

それこそ定年まで、40年以上。

そうやって、僕を育ててくれた。

僕が店を出すと言った時も、特に反対もせず、しょぼいビジネスプランに半分呆れながらも、得意の経理面などを受け持ってくれた。

お店の物件を探し始めてからしばらくして、場所を繁華街からオフィス街へシフトした経緯は、以前この note にも書いた。

カップルや、夜通し飲み歩く飲兵衛相手に商売するのも悪くはないが、心のどこかで、日々堅実に「働いている人」への、ちょっとした息抜きに使ってもらえないだろうか、というのが自分の頭の中にあった。(カップルや飲兵衛が堅実に働いてないという意味じゃありません(笑。念の為。)


お店としての、お客さんの「基準」みたいなもの。


そんな心積もりもあって、東京駅から程近い、この神保町に落ち着いた。


この街に「海」や「山」は無いが、

代わりに、それに当たるのが、

「東京駅」になっている気がする。

(実家に帰るときに乗る、JR東海道線の窓口というのもあると思うが・・・。)


こんな時代になってしまった、昨今。


繁華街まで繰り出すのが、憚られる企業さんも多いと思う。


そんなときに、ちょっと足を伸ばしてもらえれば、幸いである。


神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。

東京〜神保町。歩くとちょうどビールの美味しい距離です(笑。

お待ちしております。


Warm Weather / Blank and Jones
Soundcolours GmbH & Co. KG
2010

(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)

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