夢と熱と儚さと(for ルナラパン演劇部)(からっぽ男の憂鬱・2023/04/24)
そのバーは、中野駅南口徒歩3分の「餃子の満州」の、横の階段を下ると存在する。
「sports bar Angels」という広めのバー、の中の3つのカウンターのうちのひとつが、そのバーだ。
「ルナラパン演劇部」
お店全体がまだ「Bar ルナラパン」(正確な表記を忘れてしまった、すみません)という名前だった頃に生まれた、「役者がやっているミックスバー」をコンセプトにしたお店だ。
元々は、俺の復活の後押しをしてくれた「演劇集団LBGTI東京」の代表・小住優利子さんプロデュースのもと誕生した、ミックスバー。
「ミックスバー」とは、その名の通り多種多様なセクシャリティの人たちが集まった(ミックスされた)バーのこと。
様々なセクシャリティを持った役者さんがキャストに立つお店。
俺は開店前の下見に同行したことがあり、それ故に思い出も多い。
俺は都内へ金曜日に通院するので、その帰りに寄ることが多かった。
このお店では色々経験させてもらった。
アルコールが駄目な体質になってから通うようになったから、ノンアルで滞在するのだが、とても居心地のいい場所。キャストの役者さんと話すのがとても楽しく、ストレスが溜まれば必ず行く憩いの場。
毎年の誕生日をこのお店で過ごすことにもしていた。
(2021年だけできなかった、コロナの馬鹿)
ゆえあって、ゆりこさんが手を引き、中性役者の高木碧さん(あおいちゃん)が主に取り仕切る体制に変わったけれど、お気に入りな場所には変わらず。
昨日(2023/04/23)日曜日だけれど行ってきた。
何故なら、この場所がなくなってしまうからだ。
各方面、青天の霹靂だったようで、4月の半ば、突然4月いっぱい、それも週末だけ、という、お別れの仕方をしなければならなくなった。
なので、行けるチャンスを考え、昨日に決めていくことにした。
最終日と昨日と迷ったのだけれど、昨日はあおいちゃんと、もうひとりのキャストの内田りりこさんのBirthdayイベントだったので、昨日に決めたのだった。
あまりに悲しい最終日を敢えて避けた。
一番多く人が集まるだろうけど、翌日が平日の月曜日だから、キャストさんと話せる時間があるだろう昨日に、お祝いとお別れをしに行きたかった。
それが俺なりの流儀。
「流儀」っていうか、そうしたかっただけの話だったんだけど。
新宿駅でフルーツケーキを買い、中野へ
開店を待ってお店へ入ると、すでにいつものカウンターはほぼ埋まっていて、もう退店してしまったもうひとつのカウンターを使い、それでも来店が続いて、もうひとつのカウンターも営業中にもかかわらず場所を提供してくれた。
それだけ愛されていたということなのだ。
あらかじめ予約を入れておいたので、席を取っておいてもらって、ジュースと、あおいちゃんに頼んでおいた特別なノンアルのカクテルを飲みながら、いろいろなお客さんといろいろなお話をして、楽しんだ。
知り合いではあったけれど、たまたま再開した映像作家(でいいのかな?)の真宮凪さんと、映像作品について俺は熱くなって話してしまった。
以前、河田唱子女史に「映像の世界が向いているのではないか」と言われたのが、頭にあったせいもある。
真宮さんとは、映像の話の他に、お互いの文化的背景について、同性代でしか話せない話を話した。多感な時期に出会った「サブカル」が共通言語でつながれたのが嬉しかった。
ピークを過ぎた頃、今度はりりこさんに今後の自分について熱く語ってしまった。自分が今休養期間に入っていること、それが故に表現をやりたいこと、今考えているアイデアのことetc…
りりこさんは聞き上手で、つい熱弁になってしまった。
2020年にやるはずだった、三枝ゆきのさん(ゆきのちゃん)とのひとり芝居公演「その女、サエグサユキノにつき」を楽しみにしてもらっていたことを伝えてもらいうれしさと申し訳なさを感じた。
ゆきのちゃんとのひとり芝居公演は諦めていない。
コロナが完全に収束するまでやりたくない、という思いがある。
それに、用意していた芝居が、2020年時点の時事ネタが重要な役割を果たしていた(例のスポーツの祭典だ)ので、イチから練り直さねばならない。
それ以外に考えていることもいくつかあるし、俺の演劇人生を支えてくれている、ゆきのちゃんとしっかり公演をやっておきたいのだ。
それも熱く語った。
ゆきのちゃんとルナラパンと言えば、このカウンターで、以前日中に営業していた、差異等たかひ子さん(ぴこちゃん)のプロジェクトの実体化のひとつ、「カフェあめだま」のイベントの朗読会に、俺の作品の10分間のモノローグを読んでもらったことがある。
その時は、作家3人が、文章を書き、デザイナーさんに展示物としてその文章を展示物へ加工してもらい、さらにそこから朗読用テキストを作る、という趣向だった。
俺の文章はLGBTI東京に所属している立花みず季さんに文章をデザイン化してもらった。
幸いに、みず季さんとゆきのちゃんとのコラボは好評を得た。
イベントは盛況に終わった。
帰り道、旧友の舞台監督・長谷川ちえさん(ちえ)に出会ったのも、今思い出した。
ちえには、街中で偶然であったことが2回あり、3度目が、まさかゆきのちゃんと一緒の時とは想わなかった。
ちえは現役バリバリの舞台監督(今は演出部の仕事の方が多いのかな)で、10年くらい前に「ニイモトが何かやるなら力を貸すよ」と言ってくれた。
今はちえは多忙なので一緒に作ることは難しいと思うけど、それより、旧友が、演劇を続けていることを後押ししてもいいと言ってくれたことに喜びを得たことが大きかった。
そんな思い出も、ルナラパンは引き寄せてくれた。
ぴこちゃんもルナラパン演劇部の古参キャストだ。
今は多忙なので、さよならイベントには、キャストとしては参加しないが、顔を出すと言っていた。
ぴこちゃんとの付き合いの歴史も、ルナラパンは見てくれていたな。
映像と、考えている小説のこと、ひとり芝居への想い。
あの場で語ることで整理された気がする。
そういう出会いの場がなくなってしまうのは、実に悲しい。
りりこさんに、今年は自分のための時間を使い、区切りの年にすること、今現在あらゆる事が整理され始めていることを話すと、りりこさんも、自然と整理が始まっている、という話になった。
運命論者でもないが、でも、こういう話も、こういう流れも、運命なんだと思わずにはいられなかった。
帰り際、持ってきたBirthday用のフルーツケーキを食べてもらった。
いい選択をしたようで、喜んでもらって、それが嬉しかった。
もうひとり入っていたキャストのおおさわさきさん(さきぽよ)とも、楽しい時間が過ごせて、おなかいっぱいだった。
事情があって、あおいちゃんはあまり話せなかったけど…。
昨日は俺にとってラストのルナラパン演劇部だった。
でも、あおいちゃんは、姿を変えてルナラパン演劇部は続けていきたいと語ってくれた。
俺は笑顔で帰宅できたのが嬉しかった。
ルナラバン演劇部、また逢う日まで。
待ってます。
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