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【ネタバレなし】三枝ゆきの・末永全 二人芝居 『カラノアトリエ』『トパアズ』観劇記


 2023年07月07日の七夕。

三枝ゆきの・末永全 二人芝居
『カラノアトリエ』『トパアズ』
@Book Trade Cafe どうひん (西武新宿線 野方駅より徒歩5分)
2023/07/07~/07/09

 …の初日を観に行ってきました。

 会場は壁一面が本棚になっている、本に囲まれているカフェ。
 その空間に、最低限の机と椅子だけが配置されているのが舞台面。
 客席も段状になっているとは言え、これまた簡素。
 椅子には当日パンフレットが置いてある。当パンとしては珍しくおられていない一枚の紙。紙質にこだわってセレクトされた「良い紙」を使っていて、上手く折ると文庫本カバーになる、と言う趣向だ。
 本番前には物販のチェキ写真の販売が行われている。

 キャストが二人、当日制作が一人。
 最低限の人数で構成された座組。
 音響こそ備え付けのスピーカーを使っているものの、照明は会場のものだけで、音照専任スタッフはいない。舞台監督ももちろんいないし、演出もクレジットがない。
 文字通りの「三枝ゆきの・末永全 二人芝居」だ。

 旧知の仲の三枝ゆきのさん(ゆきのちゃん)

 俺としてはゆきのちゃんとの共演で印象的だった、末永全さん(全さん)

 ふたりが温めていた企画。
 聞くところによると、全さんからゆきのちゃんに「二人芝居やりませんか」と持ちかけて実現したらしい。

 公演は2つの演目の上演。
 『カラノアトリエ』は差異等たかひ子さん(ぴこちゃん)のポエトリーリーディング(音楽の伴奏つき朗読劇)。
 『トパアズ』は西瓜すいかさんの手による二人芝居。
 壁一面の本棚という会場に合った演目。

 あとはなに書いてもネタバレになるし、「事前情報いらない主義」なのだけど、それじゃこの文章が情報不十分になってしまうので、公開されているあらすじをご紹介。

☆★☆★☆

アトリエには
作家志望の男がひとり

理想の少女に
「君が知りたい」と問い掛ける

少女は答える

「わからない」
「だって、貴方が書いてくれないから」

アトリエにまだ産声は響かない

ノートは未だに白いまま
煙草の煙で薄汚れて行く


音と詩的独白で紡ぐ物語
『カラノアトリエ』

☆★☆★☆

『トパアズ』

夫婦が居る

創作に励む夫コウ
支える妻チイ
美しい暮らし

父の死
実家の困窮
チイはしばらく絵を描けていない

次第に言葉を失い
本棚の本を開いては読み
読んではセリフを繰り返す

智恵子抄を下敷きにした、高村光太郎・智恵子の〈魂の交歓〉の物語。

「空には意志がありまして?」

☆★☆★☆

 ネタバレにならない表現を使いつつ、今日思ったことを。

『カラノアトリエ』は詩的表現で、それでいてわかりやすく心に残りやすい言葉で紡がれた、書けない作家の話を、オリジナルのピアノ演奏とともに、時にリズミカルに、時になやましく紡がれていく。
 同じような題材で俺は短編戯曲を書いたことがあるのだけれど、俺のはもっと世俗的。
 詩人の顔を持つ脚本家・ぴこちゃんの全力が注がれている。耳に残る音と言葉(≠文章)で、世界観がわかり、言葉遣いの巧さを俺は感じた。
 役者ふたりについて。
 全さんの、前半の表情と後半の表情、演技の持って行き方がドラマチックだと思った。言葉が耳に刺激を与え、演技で視界の世界を広げる。言葉・音が身体に落ちている証拠だ。
 それはゆきのちゃんにも言えて、音・言葉が身体に落ちている。だから演技過剰にはならず、音楽に合わせた感情・演技になる。
 それを盛り上げるのが、音楽。ピアノ一本の曲だけど、様々な表情を見せる。

 対して『トパアズ』

 あらすじにある通り、高村光太郎の『智恵子抄』を題材に、夫婦の魂の交歓、心が堕ちていってしまう姿を描いている。
 こちらは、有り難いことに、すいかさんの御好意で台本が無料配布されていた。
 なので、明日一日読み込もうかと考えている。
 まだ俺の中で整理の付いていない感情があり、それは本を読み解くことで解明されるだろう。
 役者に関して言えることは、ふたりで長い時間練り上げた、舞台上の「コウ」と「チイ」が居て、そのふたりの姿をただただ見入ってしまう、ということ。
 安易な言葉を使えば「スゲーよ!」

 8日のマチネは残席少なく、ソワレと9日の千秋楽はまだ比較的余裕があるとのこと。

 余計な文章はここまでにします。
 なにが言いたかったって言うと、
「観て!」
の一点です。

都内住まいの方はもちろん、多少遠方の方でも観た方がいいです。
映像記録は残るのかどうかわかりませんが、演劇は「ナマモノ」です。
あの会場に行き、同じ空気を吸い、感じることを持ち帰る。
だから↓のフォームからチケットを買って、現地へ行ってください

quartet-online.net/ticket/saesue

俺は、身内贔屓じゃなく、「芝居はこれだからやめられない」と心から思いました。

ところで。
【ネタバレなし】と書いているからには【ネタバレあり】も書きます。
それは千秋楽終了後、ゆっくり咀嚼してから書きます。

何せ、友人と千秋楽に行くので。
今回は、「初日と千秋楽の2回を観たい!」と思っていたから。

まあそんなこんなで、余計なおせっかいかもしれないけれど、告知めいた、今日今ある感情を思いっきりぶつけた文章を締めさせていただきます。

是非、足を運んでいただきたい。

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