ザ・ビートルズ・ソングブック・アラウンド・ザ・ワールド
明日は10月5日。
62年前のこの日にThe Beatlesがレコード・デビューしたんですね。
ご存知「Love Me Do/P.S.I Love You」。
この偉大なグループは、大衆音楽史における革新性や芸術性、カリズマ性などが広く研究・批評の対象となり、その偉大さゆえに私のような世代のものには見えにくくなっているものも多くあるように感じます。
ですよね、と私も思います。
そうであればこそ、この素晴らしい音楽家たちの仕事を同時代的に受け止めてきた方たちには、強い羨望を抱かざるを得ません。
このグループに限らず、偉大な音楽家たちの仕事を遡って知るたびに。
さて、レコード・デビュー62周年おめでとう!
とは思いつつ、ただ単に「The Beatlesの好きな曲」を並べたとて、なによりひねくれ者の自分自身に対して説得力がない。
名曲ばかりなんだから、様々なミュージシャンがカヴァーしたくなるのも道理。
というか世界で一番カヴァーされているグループでしょきっと。
というわけで原曲の素晴らしさに、さらに「Something」を感じさせてくれる名カヴァーを集めてみました。
♪ "A Day In The Life" by Wes Montgomery(1967)
私、The Beatlesのカヴァーというと最初に思い浮かぶのがこの曲です。
67年、「Sgt. Pepper's」が発表された直後にこのカヴァーが録音されているんですね、とんでもないですね。
あのアルバムが世界に与えた衝撃を表しているようです。
♪ "Eleanor Rigby" by Sarah Vaughan(1981)
ビ・バップの歌姫、Vaughanさんも全曲The Beatlesのカヴァーでアルバムを作っています。
David Paichさん、Jeff Porcaroさん、Steve Porcaroさん、Lee Ritenourさんなど、当時最前線のファースト・コール・ミュージシャンがバック。
華やかなアレンジで踊る、芳醇で自由自在な歌声にしびれます。
ハーモニカはToots Thielemans男爵!
♪ "Please, Please Me" by Bill Frisell(2011)
もうひとつジャズ畑から。
こちらは大御所ギタリストBill FrisellさんのJohn Lennonさんへのトリビュート・アルバムから。
特徴的な、伸びやかな弦の鳴らし方と浮遊感がいつもながら気持ちいい。
ライフ・ワークだというアメリカーナ志向も選曲にハマってますね。
♪ "Lady Madonna" by Caetano Veloso(1975)
私の敬愛するVelosoさんの75年作から。
ジャケットも「Let It Be」の4分割画面を模しているみたいですね。
反体制活動からのイギリス亡命を経て、帰国を果たしたころの録音です。
ギターにもうっとりですが、なんといっても天から降ってくるようなこの声!
♪ "Dear Prudence" by Siouxsie And The Banshees(1983)
ロンドン・ポスト・パンクのお姫さま、Siouxsie Siouxさんカッコイイ。
サイケ感を残しつつポップに仕上げたアレンジが好き。
Robert Smithさんのギターも聴けるし、完成度の高いカヴァーです。
英国のミュージシャンたちって、いわゆる「ホワイト・アルバム」のこと好きですよね、そんな印象がある。
♪ "Tomorrow never knows" by Ergot Project(2016)
こちらはイタリアのユニット。
ポスト・ロック/エクスペリメンタル/ゴス系の人脈で作られた本作中でも、Daniela Pesさんの強靭なヴォーカルが聴きどころ。
タメを効かせたアレンジとシンプルなバンド・サウンドが支える楽曲は、カヴァー作品として以上にアルバム全体のクォリティが高いっす。
♪ "Come Together" by Meloscience Corp.(2012)
ブエノスアイレスのミュージシャンたちによるThe Beatlesカヴァー集より。
単なるタンゴ・ヴァージョンに陥っていない、よく練られたアレンジ。
でもこのデカダンな雰囲気はタンゴならでは。
原曲の粘り気のあるファンク感がそのままどこかへズレていくような、不思議な快感があります。
♪ "Nowhere Man" by Giacomo Bondi(2016)
ジェノヴァ生まれののポップ・マスター、Giacomo Bondiさん作。
The Beatlesマニアの彼らしく、キラキラしたギターや多重ヴォーカルなどで原曲を思い切り尊重しながら、愛情たっぷりに仕上げています。
他の曲もめちゃめちゃポップ!
♪ "Strawberry Fields Forever" by Peter Roar,Lucky Guri & Others(1972)
バルセロナのプログレ/ジャズ・ロック系の凄腕ミュージシャンが集まって作ったカヴァー集より。
不思議な音色のイントロからダイナミックなリズム隊がなだれ込んで、ピアノのリズムに絡むエキゾティックなリード楽器も効いてます。
このカヴァー、大好き。
♪ "While My Guitar Gently Weeps" by Prince, Tom Petty, Jeff Lynne and Steve Winwood(2004)
こちらの映像はよく知られているものでしょう。
2002年に殿下がRock & Roll Hall of Fameにおいて披露した、曲後半における伝説的なギター・ソロ。
リハーサル時から殿下を苛立たせる出来事があったようで(なおかつロックの殿堂財団を統括するローリング・ストーン誌との確執もあり)、ニコリともせずに鬼気迫るプレイの殿下。
歌唱にギターを被せられて戸惑うTom Pettyさん、ちょっとかわいそう。
終わった途端にギター放り投げてさっさと帰っちゃうし。
のちに、共演していたGeorge Harrisonさんの子息Dhaniさんが「殿下と他のミュージシャンとの間でヒヤヒヤしてた」みたいなことを言ってましたねw
今日もいっぱい聴いたなぁ。
それにしても素晴らしいカヴァー・ヴァージョンを聴くたび、改めてオリジナルが持つマジックを実感してしまいますね。
(という良くある結論に)
反省点:
①「アラウンド・ザ・ワールド」と銘打ったわりに、一部地域の曲だけになってしまったこと。
②金沢明子さんの「イエロー・サブマリン音頭」を入れ忘れたこと。
top image : Alexas_Fotos, Thank you for letting me borrow your wonderful work.