薬局薬剤師のお仕事② 服薬指導
「薬局薬剤師のお仕事」シリーズ。第二回は「服薬指導」です。
第一回はコチラ。
自分の持てる知識を最大限引き出して、一人ひとりに合う形に成形して説明する。服薬指導は薬局薬剤師にとっての花形です。
実は結構いろいろ考えながら喋っています。その点では「AIに置き換わらない業務第一位」といえるかもしれません。
しかし一方で、
「医者に話したことを何で薬局でも聞かれるの?」
「毎回同じこと説明するなら要らないんだけど」
と批判の槍玉に挙げられることもしばしば。
今回はそんな不遇な子、服薬指導について解説していきます。
「服薬指導」とは何か
服薬指導とは、ひとことで言えば、
「薬を正しく使うための説明」のことです。
効能効果、副作用、飲み合わせ、薬の使いかたなど。
患者さんからすれば「医師に話したことを薬局でも言わされる」という点でちょっと面倒だなと思う場合もあると思いますが、
服薬指導中に気になることがあれば医師に連絡する場合も多々あります。
そのための確認が必要なのです。
あとは指導した内容を記録に残さないといけないから、という事情もあります。
一般的には下記のような「SOAP形式」で、毎回の記録を残しています。
(この記録のことを薬歴といいます)
「前回、薬飲めなかったって言ってましたよね〜」と薬剤師が話しかけてくるのは、この薬歴があるからなのです。
服薬指導はAIには難しい
昨今はさまざまな業界でAIに仕事が取って代わられると言われます。
それは薬剤師においても例外ではありません。
ただし服薬指導についてはAIにはかなり難しいだろうと考えています。
その理由は服薬指導が「オーダーメイド性の強い」業務だからです。
患者さんの症状、検査値、家庭環境、家族構成、医療に対する考え、そのとき急いでいるのか否か…
あらゆる可変的な要素を総合的に考えて説明を変えなければなりません。
これはAIには苦手な行為です。
AIにやらせようとすると「その疑問に回答するには以下の15個の質問に答えてもらわなければなりません。まず、お子さんにご兄弟は居ますか?ご兄弟はおいくつですか?・・・」みたいな感じになり、膨大な時間(とストレス)が掛かることになります。
さらに人間のパフォーマンスに近づけるためには、患者さんがまだ納得していないことを声色で判断するフィードバックプログラムや、患者さんが時間を気にしているかどうかを判定するセンサーさえも必要になるでしょう。
服薬指導には、人間による「そのとき不要な情報を瞬時に判断し、切り捨てる」能力が必須なのです。
質問をさばく
薬剤師は患者さんのもとに向かう前に「何を話すか」を大まかに決めています。
先述の指導記録(薬歴)を確認しつつ、例えば次のような感じです。
・処方内容から、風邪症状で鼻水が特に強く出ているようだ。
・気管支拡張薬は初めて使うようなので詳しい説明が必要だな。
・お薬手帳を見る限り皮膚症状で抗アレルギー薬を飲んでいる。
・じゃあ飲み合わせが問題ないことは伝えたほうがいいな。
この準備により、基本的に淀みなく説明を終えるのですが、
服薬指導で大変なのは「質問をさばくこと」です。
この質問への対処能力には薬剤師の経験とスキルが問われます。
例えば、
「この塗り薬って、お薬手帳のコレとどっちが強いですか?」
という質問に答えるにはステロイドのランクを覚える必要があります。
(薬剤師になるとたいてい丸暗記させられます。)
その他にも、薬の効能効果だけでなく、薬が「どうして効くか」ということも覚えておかなければ質問に答えられないケースもあります。
便秘薬と一口に言っても、
「これは水分を便に引き込むタイプです」とか、
「これは腸のぜん動運動を高めるタイプです」とか、
「これは腸内で緩やかに発酵して腸壁を刺激するタイプです」とか。
このあたりが分かっていないと質問に回答できません。
ちなみに、どうしても分からない質問もあります。
そのときは申し訳ないのですが、いさぎよく調べます。
(その場合は次から答えられるように、後で周辺情報を調べます)
まとめ
服薬指導は難しいです。
やっぱりその場その場での対応が求められますし、絶対に適当なことは言えないので緊張します。
新人だと配属されてから3ヶ月ぐらいで初めてチャレンジする業務です。
(初めは、塗り薬だけの人などで練習させてもらうことが多いですね)
上記のように、服薬指導中の質問は薬剤師の成長にも繋がりますので、気になることがあれば何でもお気軽に聞いてもらえればと思います。
(たまに「説明要らないです」と言われることがあるのですが、なまじ準備してから向かうだけに薬剤師は結構傷つきます。
面倒でも1分くらいお時間いただけるととても嬉しいです。)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
第三回はコチラ。
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それでは、また。