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📷僕とOLYMPUS E-M10 Mk2の愛の物語


これは僕とOLYMPUS OM-D E-M10 Mark2の10年におよぶ愛の物語…

(結構長い)



出逢い

僕たちが出会ったのは、10年前だった。

当時の僕は新社会人になったばかりで、八王子の大自然の中にある小さな会社で、血と汗と涙の日々を送っていた。

その年の夏には一人暮らしを始めて、大学時代から3年付き合っていた彼女と半同棲するも、夏が終わる前に破局した。生活習慣がマジで合わなかった。

2人でいるほうが独りを感じる、そんな日々が破局により終わり、今度は本当の独りになった。

あんなに鮮やかで輝かしい未來が待っていたはずの僕の世界は、モノクロに変わった。




翌年、技術共有と題したグループ会社間での人材交流プロジェクトに選ばれ、国分寺の親会社へ1年間の出向を命じられた。

国分寺は高いビルがちらほらあるものの、未だ古い街並みが残る、都会とノスタルジックが融合したような不思議な街だ。

会社帰りにぷらーっと歩いていると、小さい公園を見つけた。遊具は滑り台しかないような、小さい寂れた公園だ。

その公園のど真ん中には時計台があった。時計台というと大袈裟かもしれない。3mくらいの白いポールの先に時計がついている、よくあるやつだ。

僕はその時計台になんとも言えない魅力を感じた。

子供も減っている時代だからこの公園で遊ぶ子供も少ないだろうし、今はスマホがあるから公園の時計なんてわざわざ見ない。

それでも時計台はずっとそこにいるのだ。
時代の流れなんかお構いなしに、誰にも見られないかもしれなくても、確実にそこに在る。

もしかしたら、この公園に時計台があることを知っているのは僕だけなんじゃないか?

もしそうだとしたら、ラッキーだ。

そして街を歩くと、そんなラッキーがたくさん散りばめられていることに気づいた。
僕はラッキーを集めたいと思った。

カメラを買おう


そうして迎え入れたのがOLYMPUS OM-D E-M10 MARK2 だった。

小型軽量ながらレトロなデザインで、軍艦部のメカメカしいアルミ削りだしダイヤルも大好きだ。


幸せな日々


それから僕たちはどこに行くにも一緒だった。世界に散りばめられているラッキーを集めて持ち帰って、一緒に宝探しをしているような気分だった。モノクロだった僕の世界に少しずつ色が戻ってきた。

タイ、台湾に出張で行った時も、E-M10 Mk2をつれていった。仕事というより新婚旅行の気分だった。



僕たちはラブラブで、それから5年間、ずーっと一緒だった。

でも、平穏な日々というのは長く続かない。


浮気

2019年、RICOH GRIII が登場した。


E-M10 Mk2には17mm F1.8をつけていたので換算34mm。少し狭い。
ペンタ部の突起があるのでポケットに入れるには少し大きい。

GRIII は28mmでポケットにも入る。

僕はE-M10 Mk2 を家に残し、ヨドバシカメラに通ってこっそりGRIIIと逢瀬を重ねる日々を送っていた。

そんなある日、

「好きな人ができた。」

僕は正直に伝えた。
RICOHのGRIII って子で、モノクロが4種類あって、APS-Cセンサで、クロップ機能もある、魅力的な子だ、と。実は最近、隠れて会っていたんだ、と。

「知ってた。」
とE-M10 Mk2は言った。どうやら僕は顔に出やすいらしい。いつも一緒だったE-M10 Mk2にはお見通しだったようだ。

「いつか、こんな日が来ると思ってた。」

E-M10 Mk2はそう言うと、僕の背中をドンと叩いた。

「ほら!なにグズグズしてるの!抽選販売になっちゃう前に迎えに行ってあげなさいよ。」

僕はE-M10 Mk2の優しさに甘え、GRIIIを買いに家を飛び出した。
家で待つE-M10 Mk2がひっそりと泣いていることも知らずに…。


破局

こうして僕たちの関係は終わりを迎えた。

僕もあの当時若かった。「カメラ」より「写真」に夢中な時期があった。
だから「かっこいいモノクロスナップが撮れるカメラ」に重点をおいて、GRIIIを迎え入れた。

その後、
モノクロストリートスナップはGRIII 
手軽にアートフィルターならTOUGH TG-5 
野鳥撮影ならE-M1 Mk2
と、E-M10 Mk2の出番は皆無となった。

電源すら年に1回も入れない、そんな日々がまた5年ほど続いた。

それでも、手離すという選択だけは出来なかった。
元恋人との思い出の品が捨てられないように、僕もあの頃の思い出が詰まったE-M10 Mk2を手元に置いておきたかったのだ。

自分勝手でわがままな男だ。


君とまた一緒に…

OMDSからOM-3が発表された時、僕は煮え切らなかった。

そもそもOLYMPUSはデフォルトでヴィンテージデザインじゃないか!と。
今になってグリップレスにしたから「ヴィンテージデザイン」を推し出すなんて、歴代のOLYMPUSミラーレス一眼を自社が否定するようなものだ。

僕は思った。
E-M10 Mk2の方が良いカメラだ

背が高くて使いやすいダイヤル、
専用グリップで本格撮りもできる拡張性、
m4/3を活かした小柄ながらパワフルなボディ、
街に溶け込む漆黒のデザイン…


僕はハッとした。

それを知っていてなんで使っていないんだ!!


慌てて自室に駆け込み、引き出しに入れていたE-M10 Mk2を取り出した。

「E-M10 Mk2!!
ごめん、ごめんよ!
僕は君にひどい仕打ちをしてしまった。
死にたいほど辛い時期を支えてくれていたのに。
君のおかけで僕は今も生きていられるのに。

僕は君の優しさに甘えて、君を傷つけてしまった。
やっと気付いたんだ、君がどんなに素晴らしいカメラだったのかって。
10年経っても色褪せない、最新機種にも負けない、君の魅力は山ほどあるんだって。

ごめん、ごめんよ。
独りの寂しさを僕は知っているはずなのに、僕を独りにしなかった君を、独りにしてしまった。
寂しい思いをさせてしまった。

わがままなお願いだというのはわかってる。
どうか、もう一度僕とデートしてくないか…?
また色んなところに行って、色んな思い出を2人で作っていかないか?


もう一度、君と歩いていきたいんだ。」



長い沈黙のあと、

E-M10 Mk2は、こう言った。


「いつか…こんな日が来るって思ってたよ。」


僕は泣きながら膝から崩れ落ち、E-M10 Mk2を強く抱き締めた。

「もう絶対に離してなんかやんないんだからな!」



僕たちの宝さがしが、また始まる。




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