📷 写真で伝えたいこととか無い

先日の記事で、僕が写真を撮る理由は
「街でグッとくる瞬間を持ち帰りたいから」
という話を書いた

「写真を撮る理由」って複雑に考えてしまうテーマだけど、一言でまとめることができて自分でもびっくりしている

あ、そうか、持ち帰りたいだけだったのか、と

別に
生きた証を残したい　とか
世の中に訴えかけたい　とか
大それたことを思ったことはなかったんだけど
とても単純な答えにたどり着いて
それでいてしっくり来ている

そもそも写真でなにかを伝えるというのは
かなり難しい

これは芸術の序列によると思っているんだけど

「写真・文章」　と
「映像・マンガ」　では
何が違うか

それは
「受け取る側の想像力を必要とするか」
の違いだ

小説は、読者の想像力無しでは物語は生まれない
ただの文字の羅列に読者の想像力が刺激されて、初めて小説になる

でも映像（映画やYouTube）は視聴者の想像力を必要としない
ただ見ているだけで、具体的なイメージ、説明がされ、ダイレクトに脳で受容することができる

つまりは、昨今のYouTube覇権や、ヒット小説やヒット漫画の映像化という流れは、
「想像の代行」を売りにしている

かつて、「想像力を掻き立てる」という長所があった、小説・写真は
「想像しないと分からない」
「めんどくさい」
という立ち位置に移されてしまった

ハリー・ポッターの映画を全て観た人はいても
原作の小説を全て読破した人は少ない

「想像する」ことが「めんどい」時代なのだ

だから自己啓発本を読むより
YouTubeの本要約チャンネルを見るし
写真展より映画館に行くのだ

そんな時代に生き残る写真という芸術は
「伝える力」が極めて弱まっている

トランプ襲撃事件の写真など、歴史的な事件の瞬間を捉えた写真は持て囃されても、日常を撮ったストリートスナップはスクロールされて１秒も目に留まらない

ましてや、そこから撮影者の意図や感情まで汲み取ってくれるような人は限りなく少ない

Instagramの利用者数は日本でも3000万人、約４人に１人が登録していて、1日の全世界総投稿数は1億を超えている

このデジタル写真の濁流の中で、果たして僕の撮った１枚が、誰に、何を伝えられるだろう

しかし、こんな非力な１枚も
僕にとっては宝物なのだ

心が動いた景色を保存しておいて
何度でも同じ感動を味わえる

ただそれだけだけど
ただそれだけでいいのだ

なので、肩肘張らずに思うがまま
シャッターを切って歩いていこう

いつか、歩けなくなるその日まで
大事に「今」を探しに行こう