「君の地球が平らになりますように」感想
はじめまして。中川と申します。
先日、とんでもない本と出逢ってしまい、感想を綴りたくてnoteを始めてみました。
その作品がこちら↓
5つの恋路を収めた短編集で、可愛らしい表紙ですが、もれなく猛毒、愛の地獄絵巻でございます。
読書家でもないわたしが、あまりの修羅さに深手を負いながらも読了したのは、そのうちの一つの地獄が、奇しくもほぼわたしの実話だったからです。
じつは数年前、わたしも桃華さんや小町さんとおなじく、長い年月をともに過ごしてきた恋人を、陰謀論で失いました。
『君の地球が平らになりますように』という表題は、偶然にもまさにわたしの祈りであり、眩しかった日々への追悼です。
世界で一番気が合う相手だったはずなのに、いつの間にか変質してしまい、対話は不可能、もはや完全なる別人になってしまったとき
わたしも小町さん同様、恋人のために狂気を誂えました。
肯定も否定もせず、大切な人を失いたくないばかりに、人生を明け渡して必死に静観しました。
それをやさしさだと、寄りそうのが愛だと無理をした結果、わたしは見事に心身を壊し、なんとか袂を分けた現在も、恥ずかしながらバリバリの後遺症生活でございます。
当時の心境や、不穏な現実、日を追うごとに悪化する関係性を、ここまで色鮮やかに言語化してしまうとは、斜線堂先生の恐ろしさたるや!
同時に、素晴らしい名医に診察していただいたような、あたたかい安堵と救済を賜りました。
こんなにメモをとりながら読んだ小説は初めてです。上品で美しくて、わかりやすい文体で綴られた、血塗られた極上の処方箋です。巡り会えて幸運だった素晴らしい作品です。
いま地獄にいる人、いたことがあった人、これから行くことになりそうな人に、ぜひ届いてほしい一冊です。本当にありがとうございました。