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『大切な人を亡くすということ』

「#002 喪失体験-2」

今回は「#001 喪失体験-1」の続き。
「ロスがグリーフに変わるとき」についてお話しします。

●大切な人がいなくなるとぽっかり穴が開いたように感じる理由

大切な人や、関わりの深い誰かが亡くなった時、その人の身体だけでなく、これまで一緒に生きてきた時間や、その人がいたからこそ体験したり、つながったりしていた様々なことが失われてしまったように感じることがあります。心の中にある、その人に関わること全てが行き場所を失ったように思われ、常に落ち着かない感じがしたり、不安を感じたり、イライラしてしまうこともあるでしょう。
 
また、多くの人が死別体験直後、亡くなる前の人に関わる出来事を、急に思い出せなくなってしまうことがあります。喪失体験前の世の中は大切なその人がいることが大前提です。しかし、その人がいなくなったとたん、その人を経由してつながっていた様々なものにアクセスできなくなってしまうため、大切な人を亡くした後、すっぽりと記憶が抜けてしまったように感じてしまい、「ぽっかりと穴が開いたようだ」と表現したり、「心が引き裂かれたような気がする」と表現する人が多いのでしょう。

●喪失の現実を受け入れることで新たな毎日を過ごしていく

 もう、ずいぶん前になりますが、福山雅治が結婚した時には福山ロス、SMAPが解散した時にはスマロスと表現している人がいました。またガッキー(新垣結衣)が星野源と結婚した時は、ショックで会社に行けず休んでしまったという人がいたことを覚えています。応援していた”推し”がいなくなったり、その”推し”の状況が変わったりすることによる喪失感です。

でも、多くの場合は、”推し”が結婚して自分のもとから離れてしまったと感じた時の気持ちを、ファン同士で分かち合って大泣きしたり、解散LIVEのDVDを見て一緒に歌ったり踊りまくったりして、「解散しても音楽はいつも心の中にあるわ!」などと言ったりして、なんとか気持ちに区切りをつけた人もいるかもしれません。 
そうやって、さんざん泣いたり怒ったりして気持ちをいろんな形で表現して、気持ちがわかり合える人とシェアした結果、気づいたらなんだかすっきりして「あーぁ、昨日は会社休んじゃったから、明日からまた頑張ろうかな」などと、いつの間にか現実を受け入れて、今までのように毎日を過ごしていけるようになるのです。

●ロスがグリーフに変わるとき

実は、こうして喪失体験をした時に、湧き上がってくる自分のありのままの感情を、どんな形であれ、外に向かって表現することができて、気持ちを分かち合ったり、誰かが受け止めてくれたりすると、大切な人がいない現実を受け入れて、新たな毎日を送ることができるようになるのです。
 
ところが、喪失体験をした時、湧き上がってくる自分の気持ちを、人それぞれのいろんな事情で誰かに話したり、何かの形で外向きに表現することができず、心にフタをして押し込めて我慢したり、見て見ぬふりをして、日々を送る人が少なくありません。
 
この状態を英語で「グリーフ(grief)」と呼びます。

 ●心の傷は周りの人に気づいてもらいにくい

最近は、クマやイノシシが人間の生活圏に入ってくることも増えてきたので、野生の動物に遭遇する人もいなくはありませんが、多くの人は野生動物から身を守るために闘わなければならないような、危機的な状況に陥ることはほとんどないと思います。
 
一方で、今の社会では人間関係において心に傷を負うことが増えています。しかし、精神的・心理的な危機的状況に遭遇しても、血が出ていたり、一目見てわかるような怪我をしているわけではないため、周りの人にはなかなか気づいてもらいにくいものです。そしてその結果「グリーフ」の状態にある人が増えてしまっているのです。
 

●あなたの話をさえぎらすにじっくり聴いてくれる人を

大切な人をやモノをなくした時、誰もが「グリーフ」の状態になる可能性があります。

そんな時、深いグリーフの状態に陥らないようにするためにも、まずは自分が大切な人やモノを失った時に、ちゃんとその気持ちを誰かに話せているか、思い返してみてください。もし、誰にも話せていないとしたら、否定せず、最後まで話の腰を折らずに聴いてもらえる人がいないか、思い出してみてください。そして、その人にぜひ、自分の気持ちを聴いてもらう機会を作ってみて欲しいと思います。
 


【大切な人を亡くして、どうしたらいいかわからない方へ】

(株)ジーエスアイでは、死別や喪失体験をして苦しいけれど、誰に相談していいかわからない、という方に対するご相談をお受けしております。

カウンセリングや分かち合いの会などに参加する前に、どのような状況なのかをお聞きした上で、グリーフサポートの専門家が最適なサポートメニューをご紹介させていただいておりますので、お気軽にご相談ください。

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