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「タイの地獄寺ツアー」が思っていた以上にステキだった理由のお話

タイの地獄寺!
なんだそりゃ!?

という偶然の出会いから始まった今回の「タイの地獄寺ツアー」参加。参加直前までは「よし、地獄寺を観まくってやる!!」ぐらいの意気込みでしたが。実際に各地のお寺さんで出会ったのは、自分が思っていた以上に熱心な仏教への信仰と、それを支えるお寺さんの姿でした。そんな自分の感想を、以下にまとめておきたいと思います。ご笑覧いただければ幸いです

なお全て読み終えるには5分はかかると思います。ご注意下さい

〇タイの地獄寺について

タイの地獄寺については、地獄さん(@narok___こと椋橋彩香さんの書かれた『タイの地獄寺』(青弓社)に詳しい説明がありますのでそちらに譲りますが

大事なポイントとして押さえておきたいのは、タイに「地獄寺」と命名されたお寺があるわけではないこと。タイの地獄寺とは、タイ各地に点在する様々な地獄を表現したオブジェや展示を有する特徴を持ったお寺さんの総称であることです(当然地獄のオブジェの無いお寺さんもたくさんあります)

その展示もお寺さんによって大小異なり、今回ツアーで寄ったお寺さんのような多数のオブジェが置かれた大規模なものもあれば。数体の展示にとどまる小規模なものまで。いわゆる「展示」の形態を取るものからそうではないものまで、実際には様々だそうです(中にはジャングルにオブジェが点在するタイプのお寺さんもあるのだとか。行ってみてぇ…)

椋橋さんによれば、こうしたお寺さんは現在確認されているものでも120ケ寺近くあり。ただ実際にどのくらいのお寺さんがこうした「地獄寺」に該当するのかは、自分にもまだ分からないと言われていました

またこうしたお寺が出来た背景も、椋橋さんが今回、とても丁寧に説明をして下さいました

それによれば話は1970年代に遡るそうで。この時代タイでも社会の混乱が続き、多数の死傷者を出すような事件やクーデターも起き、地獄のモチーフには実は体制批判などの政治的なメッセージや社会風刺が込められており、僧侶による社会参加といった側面も組み合わさってそれが寺さんを通して発信され始めたこと。その一方でこれら展示にはお寺のお布施集めや市民への教育としての側面。また展示物の作成を貧困層や孤児などが担うといった、社会救済の側面があったというお話は、とても興味深いものでした

単に地獄に堕ちたら怖いぞ、という通り一編の説明ではなく。この世の行いがどのような結果を招くかを、地獄での仕打ちという具体的なオブジェで表現しているというわけですね…

そしてこうした動きがタイ全土に徐々に広がり。すでに何十年にもわたってオブジェを作り、増やし続けているお寺さん。最近になって作り始めたお寺さん。その一方で展示物が朽ち果てていくお寺さん…と実にさまざまなお寺が混在しているのだそうです

椋橋さんはこうしたお寺を訪問ごとに日に1~2か所づつ地道に周り。住職さんにご質問をされ、調査を行っているそうです。今回私たちは冷房付きのバスで快適に巡らせもらいましたが、椋橋さんの移動はバイクタクシーの荷台にまたがり。時にスコールに打たれ。泥まみれにもなりながらの調査を日々続けてこられたそうで。それでもそうしたことを苦労とは思わない(多少は実際にはあるけれども…)というお話には、本当に頭が下がる思いがしました

なおこうしたタイの地獄寺を専門的に調査をされている方は世界を見渡してもほとんどいないとのこと。椋橋さんの研究には本当に価値があります。単なる珍スポットマニアの域ではありません!

こうした椋橋さんの研究の成果は冒頭に紹介した『タイの地獄寺』という書籍に丁寧にまとめられています。論文をベース書かれた研究書であり、時刻寺のガイド書でもあり、とても読み応えがあります。通常の書店でも購入出来ますので、ぜひ一度みなさんにも手にしていただければと思います

(こちらはAmazon のリンクです)

〇今回参加したツアーについて

ツアーは12/22(土)に催行されました。タイとして乾季で、平均35度という過ごしやすい季節だそうで…汗

それはともかく、今回はバンコクに近く、展示の規模も大きく観光地化もされており。「タイの地獄寺」を代表とするようなお寺さんを一気に三つ巡ってきました。全行程300キロほど。ほぼ半日をかけてのツアーです。ご一緒したキートン増田さん(珍スポット巡りでは有名な方だそうですね)がその行程ログをを提供して下さいましたので、併せて紹介させていただきます

(一番下が出発地のバンコクです)

キートンさん、本当にありがとうございました

先にも書きましたが、一日で3つを巡るのは調査でもなかなか出来ないこと。それが出来ただけでも価値があるっ!!と椋橋さんも、ツアーを催行され「TRIPULL(トリプル)」の代表西尾さんも、何度も強調をされていました。実際いバスの移動でも、なかなかに疲れまして…わたしも含めて道中爆睡をされた方がたくさんいらっしゃいました(椋橋さんも、だったそうです笑)

また今回ツアーを企画された「TRIPULL(トリプル)」さんは現地の旅行会社さんです。日本人向けにタイのおもしろスポットや、食を巡るツアーを企画されています。直近では、タイの塩田?!を巡るツアーを催行されるそうです。こちらのツアーにもご興味のある方がいましたらツイッター(@tripull)やfbページ(@tripull)をフォローしていただければと思います

トリプルの西尾さん、本当にありがとうございました

さてようやくここからが、ツアーで回ったお寺さんのお話になります

〇一つ目の地獄寺 ワット パイローンウア

最初に行ったのはバンコクから1時間半ほどの距離にあるワット パイローンウアです。ちなみに「ワット」はお寺(寺院)さんのこと。カンボジアにあるアンコールワットの「ワット」も同じ意味ですね

こちらのお寺さんは1971年に作られたそうで、地獄のオブジェを置いた箇所も含めてとにかく広大なのが特徴。「数時間掛けても境内は周れませんよ」と椋橋さんに事前に釘を刺されていましたが、実際にどれくらい広いのかわたしにも全く見当もつきませんでした

またこちらのお寺の特徴はこのおっきな白い大仏!!遠くからも目立つほどで、鎌倉の大仏など可愛く見えるほどのサイズです(バスとその大きさが比較が出来ると思います…)

そしてこちらの地獄寺の特徴は、とにかくオブジェの数が多いこと。推定で700体以上…観た瞬間、マジかよ、ありえねぇ、おかしくねぇ?の連発でした 苦笑

(これでもまだごく一部です)

そしてその中でもご紹介したいのがこちらのオブジェ

日本人のデザイナーさんがお寺さんと交渉して最近作られたもので。モチーフは雑誌の廃刊など話題になった日本の女性議員さん。なぜその方がモチーフかと言うと仏教の中でも五戒、罪が重いとされる五つの罪の一つである「ウソ(嘘)」にちなんだものだそうで…ウソをつくと舌が抜かれるという罰とリンクしているのですね。羊さんがその舌を引っ張っているるのにも、きちんと意味があるのだそうです

といった形で始まった地獄寺ツアー…

最初はわたしも地獄寺のオブジェを観て楽しんでいたのですが、すでにひととりこちらの地獄を巡った辺りから、わたしの関心は「地獄」とそれ以外の展示や建物の両方に移っていきました。例えばこのワットでは冒頭の白い大仏に向かって、実にさまざまなオブジェが並んでいたりします

(大仏を背に撮った写真です)

またこの周囲の木の茂った空間の中にも、さまざまなオブジェや建物が置かれていまし

(これらもほんのごく一部です)

それぞれの展示のストーリーや意味付けはわたしにはよく理解出来ませんでしたが、お釈迦様に関わる故事はもちろんのこと。タイの神話や歴史、それと融合した仏教的な教えに関連したものでであることはなんとなく想像がつきます

そしてこうした展示はこの後に見学したお寺さんでも様々な形で作られており(中にはどのお寺さんでも共通するものもあり。)実は地獄寺は地獄を展示すると共に、さまざまな仏の世界や天国すらも展示するものだと徐々に分かってきました

しかもこうしたものが全て寄進、お布施を基にして作られているそうで。どんだけ信仰やお寺さんに対する信頼が深いんだ?と思わずにいられません

またこの白い大仏、おそらくこのあと金色に彩られるのだろうこともその後分かりました。というのも、大仏の足元で寄付を行うとお線香や蓮の花の他に 2cmx2cm ほどの金箔が数枚渡されます。人々はそれを受け取とり、時間をかけたお祈りが終わると大仏の足元や仏様の像ににペタペタとその金箔を貼っていくのです(写真を撮り忘れました…残念)

椋橋さんによれば、タイのお寺は日本と違ってきらびやかなであればあるほど好まれるそうで。大仏を金色に彩るのもそうしたきらびやかさを表現する行為の一つでであり。かつそれを人びとが寄進を通じて参加していくことに、意味があるのだろうなとその姿を見ながら思ったのでした…

日本のお寺さんのように、檀家さんの檀家料や拝観料。はたまた不動産業でお寺さんを成り立たせるのとは根本的に違う姿。わたしには若干の衝撃がありました。こうした姿を最初のお寺さんで触れることが出来たのは、本当に良かったです

〇二つ目の地獄寺 ワット ムアン

(大仏は足場のためにボケてるように見えています)

昼食をはさんで向かったのが、こちらのお寺さんワット ムアンです。1982年建てられたというこちらのお寺さんの特徴は、地獄寺のスペース(区画)がきちんと設けられていること。タイでも最大級の仏像があること。本堂の中がガラス張りでとてもきらびやかなこと。そして蓮の花を象ったお墓があることなどだと最初に説明を受けました

そして大変申し訳のないことながら、この時点で、もはやわたしの関心は地獄寺からお寺さんそのものへ移っていたのでした…

それはさておきまずは本堂です

鏡張りってどういうコトと思いましたが、中は思っていた以上の鏡張りでまばゆいばかり。そこにたくさんの方が出入りをし、熱心にお祈りをされている姿も

フロアの真ん中あたりにはこのお寺さんの高僧だった方なのか、即身仏のお坊さまが横たわっておりました。(日本でいうところの)ご本尊となる仏像と併せてこの即身仏さまに祈る方々もたくさんいらして

また建物を巡るように人を象ったお坊さまの像が並んでおり。こちらは歴代のこちらのワットのお坊さまだったのかもしれません

地獄寺の目玉は二体の巨大な像。椋橋さんのご著書『タイの地獄寺』でも表紙に用いられている写真の像です。高さ20メートル近くあるもので、下から見上げるとなかなか壮観(こちらは『タイの地獄寺』の書籍の表紙に使われています。)その周囲を取り囲むように、五戒(殺傷、盗み、お酒、浮気、嘘)をモチーフにしたさまざまなオブジェが並んでいるというスタイル。最初のお寺さんのようにごった煮感はなく、とても分かり易い展示でした


(地獄の苦しみも最期お坊さまが救って下さるのだそうです)

その奥に構えるのが、タイ最大級と呼ばれる高さ90メートルほどもある大仏像・・・

(逆光です。手前の屋根がお祈りするテントのものです)

工事中のため残念ながら近寄れませんでしたが、その大きさはまさに圧巻。これに合わせて大仏殿を作ったらどんだけの大きさなんだよ…とよく分からないことを思わず想像してしまいました。ちなみにこの仏像の手前には100人ほどの人が優には入れそうなテントがあり。ひとびとはそこから大仏に向かってお祈りをするように整えられていました。テントは厚さ対策だったのかもしれませんね

こちらの仏像、工事中のためにいまは白色。この後全体を赤に塗り直し(これも観たいっ!。)その上からに金色に塗るのだそうです。完成は来年の5月…というお話でしたが、まぁ現地のことなので実際には夏ごろになるでしょう笑という西尾さんからの説明もありました。修復中、そして修復が終わった後の姿もまた観てみたいものです

またピンクの蓮のオブジェに囲まれたこちらの施設

施設の用途はもしかしたら、葬祭のための「場」かもしれません。

(中の様子。ぐるっと蓮の花のオブジェが囲っています)

そしてそのお堂を囲むようにピンクに彩られた蓮の花のオブジェが並んでいます。実はこのオブジェ、一つ一つがお墓なんです。どうやら中にはご遺骨を入れられるようになっており。そして各花びらにはご遺骨を入れる部分に写真と亡くなった方のプロフィールを書いたレリーフを取り付けているものもいくつかありました。その前に、お墓によってはお線香やお花を添える具足的なものを置いてる処もあって。こんな形で、現地のお墓を観られたのも嬉しかったです

(一番手間のお墓にはお花が添えられてます)

またこのお堂の中は床を除いた全面に、お釈迦様の一生(であろうもの)が描かれていました。お堂といってもテニスコートほどの敷地に建物自体も高さが5階建てほどあり。その内装全体が個々の絵で覆われている姿もなかなか壮観でした。わたしが中に入った際は、仏教を学ぶために来られた若い方々なのか?お坊さまからの説明を若干つまならそうに疲れた表情で受けられていた若者でいっぱいでした

あとこちらのお寺さんは境内にたくさんの出店もありました。といっても、日本のようにお土産物屋さんというわけではなく。食べ物、飲み物、お菓子、日用雑貨、おもちゃなどを売っているという、どちらかといえば地元のマーケットという雰囲気。近くにショッピングモールなどがあったわけでもなく、こちらのお寺さんはそうしたマーケットの機能も兼ね備えていたのかもしれません

(おもちゃの出店。日本のキャラばかりでした)

〇三つ目の地獄寺 ワット プートウドム

陽も暮れて最後に到着したのがこちらのお寺ワット プートウドム。今回周ったお寺の中ではバンコクから一番近く、渋滞が無ければ一時間ほどで行ける距離にあります

こちらの地獄寺特徴はタイの中で最古であること。そして屋内型の展示施設であることです

この「屋内型」というのが本当に特徴で、他には無いスタイルであろうとの説明でした。また地獄の展示は本堂の地下にあるのですが、地下が地獄。その上に立っている本堂、つまり地上が天国というコンセプトで作られているのだそうです

(本堂=天国です。地獄はこの地下に…)

実はわたし、本堂はもう陽も暮れたし入れないだろうと思って地獄寺だけ見て諦めていたのですが。実は地獄寺を観た前後で天国(本堂)も観られたそうで…。それが今回のツアーの最大の後悔!!

これまたもう一回、このお寺さんに行け、ということだと悟りました 苦笑

ちなみに天国の展示は上に行くほどきらびやかになっており、8階建てほどの高さにある最上階に近い階には、やはり金ぴかに彩られたフロアがあるという感想を後で行かれた方よりお聞きした次第です

さて地獄寺の方ですが、ここは展示と壁画のダブル攻撃のみならず。その展示も電気仕掛けで動くという(しかもどのギミックも一回5バーツ笑)なかなかの凝りよう。しかも中には予想通りお金を入れても動かないものもあるという、なかなかお茶目な状態で管理されていました。ここは壁画もあって、一つひとつの展示の意味合いもとても理解し易かったです

また実はこの地獄展示。地下の納骨堂兼お墓を取り囲むように作られています。つまり地下の中心部が納骨堂兼お墓になっているわけです

(屋根の形をした部分がいわゆる「お墓」になります)

ここにもやはり一つ一つに写真とプロフィールが書かれたレリーフが、一つ一つのお墓にはめ込まれていました。ただ、それほど祀られている方は多くはなさそう

このお墓の周囲に地獄のオブジェの展示があり。誰かがお金を入れればギミックが動いて音も鳴り響くという、なかなかどうしてシュールな環境です。でもその音も静まり返ると、その空間の空気が異なって感じられるのがとても印象的でした

こちらのお寺さんは日没前後の訪問だっため、参拝客の姿も見えず。日中だったらどんな方々が来られているのかもとても気になるところでした。そしてなにより本堂をまた来て観てみないといけないなぁと想いつつ、後ろ髪をひかれつつ、お寺さんを後にした次第です

〇ツアーのまとめ

相変わらずの拙い文章になりますが、以上がタイの地獄寺ツアーのご報告と感想になります

実はこのツアー、わたしのような変わり者から、日本の地獄をテーマに修士論文を書かれようとされている方。「地獄」にハマってしまった方。日本内外の珍スポットマを巡る方々(冒頭のキートンさんもです)。そして現地在住の方がいたりと、それぞれに趣向の異なる方々の混成部隊で、それはそれで楽しい方々ばかりでした

そうした方々が徐々に今回のツアーの感想をアップされ始めています。それぞれの観点で感想が書かれるはずですので、ぜひそちらもチェックされてみて下さい。観るところ、感じたところの違いを、知っていただけたら嬉しいです

みなさんのお話をお聞きして、わたしも伊豆の極楽苑。深川のえんま堂。そして富山立山のまんだら遊苑(珍スポ度高しっ!)など、日本の地獄名所巡りもしてみようと思うようになりました

みなさんとご一緒出来たこと、本当に感謝しております

そしてそしてなによりも、ツアーの企画をされた椋橋さんの地獄寺に対する熱い想いが本当にステキでした。とにかく喋り始めたら止まらない。次から次へと地獄寺巡りのエピソードが湧き出てくるお姿からは、このひと本当にタイの地獄寺にハマってるという情熱がヒシヒシを伝わってきました。椋橋さん今後も帰国の際にはさまざまなイベントに登壇されると思います。機会があればぜひそのお話を聞かれてみて下さい。ちなみに日本でのトークの様子は、また違う感じだそうです

わたし自身は冒頭に書いたとおり、ほんの一瞬でしたが、あるいみ名所であって名所でないタイのお寺さんを訪問し。そこにある様々な展示とそこに集う方々の姿を通して、ほんのわずかでもタイの方々の信仰の姿に触れられたことがなによりの収穫でした。小さいお子さんからお年寄りまで、仏さまや高僧、そして仏像に向かって手を合わせ。ろうそくや線香を捧げ、熱心に祈る姿は本当に印象的でした。改めて、タイの小乗仏教とその信仰についてもより知りたいという想いを抱いて帰ってきました

実はまだまだ、椋橋さんの語って下さったタイの地獄のエピソードや道中記など、文章に出来ていない部分もたくさんありますが、まずは感想はここまでにしたいと思います

こちらのツアーに参加出来て、本当に良かったです

参加されたみなさん、ツアー会社の西尾さん&ガイドさん、バスの運転手さん、そしてなによりも椋橋さん、本当にありがとうございました。すごく、すっごく、楽しかったです!!

【1/5 追記】
一旦公開状態にしますが、シェアやリツィートなどは控えて頂けると幸いです

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