見出し画像

手の器を、水がすり抜ける速度で、落ちていく。落ちていく。

正しさのことを、正しく理解しないから、それは毒みたいに身体中を蝕んで、いつのまにか素直になる方法を手放してしまった。言葉には重みがあるんだって。その重さは流した涙の重さと比例するらしいんだけど、そんなことを真顔で言われたら鼻で笑ってしまうかもしれない。あなたにだって、あるでしょう?踏み込まれたくない領域が。感情ってやつはものすごい速さで自分の中を駆け巡っていて、それもたくさん。たくさんの感情がひしめいていて、その一瞬。その一瞬のうちに捕まえることができた言葉だけが、口から出ることを許されている。素直になりなよって言われても、どの言葉も素直なんだからしょうがないじゃないか。わたしの中にあるんだ、すべての感情は。両手でつくった手の器を、水がすり抜ける速度で、落ちていく。落ちていく。落ちていくことなんて気づかずに、手のひらの中にある水溜まりだけを覗いている。見る必要なんてないんでしょうね。いなくなる瞬間なんて、興味がないひとがほとんどでしょう。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?