みんなどこかの尾根を歩く。
最近、職場であるミスがおこり、顧客に頭を下げることがありました。
矢面に立つ人間。
そんな立場にあるため、誠意をもって対応しなければなりません。
これが自分の役割だと思いながらも、まだまだ小さな人間なので、なかなか割り切れなかったりします。
上手く言葉が出てこず、慣れないせいでまた別の人を頼ることも少なくありません。
緊張して、ハラハラして、安堵して。。と感情の起伏が激しい日でした。
◇
それと同じ日、私はプライベートで携帯会社に問い合わせたい件があり、相談窓口に電話をすることにしました。
なかなか繋がらず、やっと繋がったかと思えば途中で通話が切れ、再度かけ直すも、窓口の受付時間が終了。。
繋がりにくいとは聞いていたもののここまでとは、、とモヤモヤを抱えていました。
仕方なくまた翌日かけ直し、ここでもかなりの時間を要しました。
やっと繋がり、電話口に出たのはオペレーターの女性でした。
女性は、第一声、こちらを気遣うような言葉をかけてくれました。
私の気持ちを汲んでくれるような声色、声のトーン、言葉選び。
見えないけれど、申し訳ないという表情、何度も頭を下げてくれているような。それが電話越しに伝わってくるようでした。
そのとき思いました。
ああ昨日の私もこうだった。
誰かのために、頭を下げている。
会社を守るため。
失敗した人を守るため。
相手の気持ちを受け止めるため。
(まわりまわって自分のためでもある)
この人は、私に誠意を尽くそうと謝ってくれている。
感情の落としどころを作ってくれている。
もちろん、そういう仕事だからと言われればそうだけど。
この人は、『ありがとう』をもらうより、『すみません』を言うことの方がきっと多いのではないか。
見えない相手に、今まで何度頭を下げたのか。
「あなたの心は大丈夫ですか。」
と勝手ながらちょっと心配になる。
「ほんの少し分かります。私も昨日同じようなことがありました。」
とひっそり心の中でつぶやいて。
女性オペレーターとの通話を終了しました。
私の要領を得ない質問にも、丁寧に寄り添い答えてくれました。
この女性でなければ、私は矛を収めることができなかったかもしれない。
感謝をする一方で、向こうの出方次第でいくらでも自分の感情が変わってしまうことの危うさにも気づく。
◇
山頂の幅ギリギリの尾根を歩いているような、言葉選びを一歩でも踏み外せば、アウト。
というところで働いている人たち。
ありがとう。
誰かのために頭を下げている人。
分かります。
私もそんなときがあります。
◇
もっときちんと対応できるようにならねばと思いながらも、そんな行為に慣れたくない自分もいる。
そこに誠実さがなくなるようで。。
慣れなくていい。むしろ慣れてはいけない。
対処の仕方をある程度知っておくことは重要だけどね。
と、上司は言ってくれました。
この人もまた、私の知らない所で頭を下げている。
働く人ほとんどがそうなのでしょうけどね。。
◇
山の『尾根歩き』の魅力を語っている人がいました。
登山をする者にとってそれは醍醐味のひとつであると。
尾根は風当たりが強く、大きな危険を伴う。
変わりやすい天候にも注意が必要。
でも、そこでしか出会えない絶景がある。
後ろを振り返ると、自分の辿ってきた道がはっきりと見える。
自分の目でそれを確認できることに、得も言えぬ達成感を味わえる。
山の機嫌を気にしながら、その歩みを続ける人がこの世界にたくさんいるのでしょうね。
そんなことを考えていた一日でありました。。
読んでいただき、ありがとうございます。