二見くんの日々 8 セミ
買い物をしに、となりのとなりの町まで出掛けた。
電車を降りて、昼下がりの住宅地を歩く。
とても静かだ。
日が強く照りつけているからか、出歩いている人はほとんどいない。
たまにすれ違う人たちは、暑さと戦う戦士のように皆険しい顔をして早足で去っていく。
ほんとうに今年の夏は異常に暑い。なんて、毎年言ってるけど。
この暑さの中でも車庫で洗車している人や庭で日曜大工をしている人がいて、お疲れさまですと思うと同時に素敵なものを見せてもらったと嬉しくなる。
懐かしい夏の映画の住人になったような気分になるから。
ぽてぽて歩みを進めると、公民館のような建物が
あった。
その生垣を横目に前進…ん?
セミの抜け殻だ。
近くに2つ…いや至るところにセミの抜け殻が引っかかってる!!
さすがに驚いた。近所の人が抜け殻を見つけては木にかけているんだろうか。
セミの抜け殻博覧会。通りがかる度キラキラな目で見つめる少年の姿が脳裏によぎった。
そういえば僕も小さいころ、うちの庭の木で羽化するセミを家族で見守ったことがあったっけ。
そういうことをそぞろに思ったとなりのとなりの町での日曜の午後。