見出し画像

電線交信 |短編・写真 

「私、電信柱好きなんだ」

「どうして?」

「繋がりが可視化されてるみたいだから」

そう言ってきみは、電柱とハイタッチした。

それから向日葵の笑顔と口笛を吹くようなさよならを僕にくれて、

この町を去っていった。


あれから僕は

電柱を見るときみを思い出すようになったんだ。

電柱に触れたら、

言葉に変換できない僕の気持ちが電線を走って

五線譜にしるされた音楽になって

たまたま電柱に触れているきみに伝わってくれるんじゃないか。

なんて、そんな妄想をして、僕は今日も電柱には触れず生きている。

そっちでも元気にしてるかな。

全部伝えられなくても、せめて大事なことだけは伝えられるように、

歌をつくるよ。

どうかきみに届きますように。


photo by Yuzu Tsukishina



いいなと思ったら応援しよう!

月階柚
お読みくださりありがとうございます。紙の本をつくってたくさんの人に届けるという人生の目標を果たすため、応援いただけるととても嬉しいです。読んでくださる貴方に少しでも幸せを渡せるよう進み続けます。