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月夜の浜辺 |詩・写真
月から象の夢色の破片が剥離して
地球では淡雪となる
ブルーシートに一人二人と帰巣してゆく
私は浜辺で本を読んでいる
月夜の浜辺
遠ざかる記憶にふと引力が働く
ボタンが落ちていた
ひんやりとしたそれを
私は月へと放ってみた
月が反射する太陽の光を反射して一瞬燦めいた後
ボタンは海へ落ちてゆく
カシャリカシャリと波打つ海は
誰かにとって大切だったボタンを
呑み込んだ
呑み込んだろうと思うが
私にはボタンが見えないのでわからない
海は呼吸を繰り返している
本を閉じる
黄土色の本を浜辺に置く
硬質な音が舞台に小さく響く
ブルーシートを捲り
私は帰巣してゆく
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