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“これはサティーンという女性の物語”たらしめる相手役という存在の奇跡(『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』2024/9/26ソワレ 望海サティーン×芳雄クリスチャン ペア千秋楽感想)

『ムーラン・ルージュ!・ザ・ミュージカル!』、始まったばかりの大阪公演も、いよいよ今日が千秋楽。そして2年続いたこのお祭りの大千秋楽ですね。昨年の初演も、今年の再演の東京公演も大阪公演も本当に楽しんで、いまだに実感が湧かないけど、とにかく楽しく終われたら良いな!
その前に……ムーランルージュを楽しみ尽くしたい(特に今年は色んなキャストの組合せを観たい)という気持ちとは別で、この2人のサティーンとクリスチャンを追うことに夢中だったと言っても過言ではない。追いかけ続けた、望海風斗さんと井上芳雄さんが相手役となる回(のぞよしペアって呼んじゃいます)がついに終わってしまったので、最終回となった9/26ソワレの感想などを東海道新幹線の中に置いてから、本日の梅田芸術劇場での大千秋楽に臨みたい。私が観るのはエレファントチームの大千秋楽なので、望海サティーンにはもう自分の思い出の中でしか会えないんだ。望海サティーン、本当に大好きでした。追いかけたこと、本当に青春だったな。

それにしてもLoftの黄色い照明の映り込みが凄くて余韻もへったくれもないサムネなんだけど、ソワレ終演後のリアルな梅芸入口の思い出ということで!笑

※7000字超えてます。長い!
※ほぼ望海さんと芳雄さんの話しかしていませんが、他のキャストと比較するような内容ではありません。
※他のキャストに触れた感想は下書きに残してるので、大千秋楽後に投稿したいと思ってます!

2024再演のロマンスビジュアル!
帝劇では初演ではあった入口の柱のラッピングが無くなっていたので、梅芸で見られて嬉しかったな!
9/26 ソワレのキャストボード
帝劇にはなかったけど梅芸で爆誕したキャストボード(紙)

松村雄基さんの休演により急遽橋本さとしさんが登板され、大阪では最初から予定されていたかった望海サティーン×さとしジドラーの回が最終週で生まれることに。これについてはまた別の機会に書きたいな!

Kさんが復帰されて嬉しい!松村さんを「見納め」だと意識せずに先週見納めになってしまったことが本当に寂しいけど、大千秋楽の今日は復帰されてみんなでCAN CANできることになって本当に良かった!

「私達の物語を伝えて。そうすれば一緒。どんな時も。」

9/26ソワレ。サティーンの最後のこのセリフを体現するようなクリスチャンがそこに居た印象で、2年間の総まとめとなるような回でそんな景色を見せてくれた2人に、改めて感謝しかなかった。

「あなたはやり遂げた」と瀕死のサティーンに呼びかけられると「僕達がやり遂げたんだ」と訂正するクリスチャンだけど、幕開きを振り返ると「これはサティーンという女性の物語」だと、“僕達”じゃなくて“サティーン”の物語だと明確に言っているのが、彼がいかに彼女に人生を変えられたか、人生で大切なことを教えてもらえたのかがよくわかる。サティーンという女性の物語を伝えるための、クリスチャンの成長物語でもあったんだなと解らせてくれる。

大阪公演からの、芳雄クリスチャンのフィナーレのCome What Mayは、サティーンを見送った後のモノローグを経た後にも関わらず思い出し泣きをしちゃうというか、クリスチャンにとってCome What Mayはサティーンとの約束「私達の物語を伝えて」を守るための挨拶な曲だからこそ、サティーンを想うばかりどんなに時が経っても涙が溢れてくるんだなという心情が伝わってくるのが本当に胸に来るし、前半はサティーンにだけ聴こえればいいんだとでも言うように本当に囁くように涙ながらに歌っていて、後半の「どんな痛みも悲しみも」からは、カンパニーのコーラスも入ってくるとしても芳雄さん自身の声量もめちゃくちゃ上がって、客席を見渡しながら、胸に手を当て唇に手をやり客席に手を伸ばし、私達に「サティーンが教えてくれた人生の素晴らしさ」を届けてくれるんだ。役としてのクリスチャンではなく、ミュージカル俳優としての芳雄さんの素顔も隠しきれてないかもしれないけど、そんな極限の歌唱が本当に刺さる。大阪公演始まってからの、芳雄クリスチャンによるフィナーレのCome What Mayは、前半がサティーンへの時代を超えたラブソングで、後半が私達へ届けてくれる人生賛歌なんだと思ってるんだけど、究極のカタルシスがとにかく素晴らしくて、Come What Mayが大好きな曲になった。

サティーンにとってのクリスチャンという存在

最終的に、象の部屋から連れ出してもらうElephant Love Medleyのラストがそう示すように、クリスチャンは“サティーンが受け入れることとなる存在”というだけでなく、“サティーンに外の世界を見せてくれる存在”として強く印象付けられた。Elephant Love Medleyの、望海サティーンと芳雄クリスチャンならではの緩急のある掛け合いが大好きで、クリスチャンも「強がらないで 恋はゲーム」って言いながら攻めたって結局強がってるのはクリスチャン自身なんだという精一杯な青臭さが本当に好きで、彼の強気な姿勢というよりも真摯な心に打たれたんじゃないかなと望海サティーンに理解させられるし、この一曲の中で揺れ動く望海さんの心の機微はもうたまらない。
場面転換後にクリスチャンが魔法をかけて満天の星を見せてくれる直前、望海サティーンが信頼しきったように彼を見つめ、まぁ見てなって、とでも言いたげに一瞬彼女に目線をやって微笑む芳雄クリスチャン、という2人が一瞬視線を交わすタイミングも本当に大好きで、席によってはどちらの視線が見えない時もあるけど、なるべく見逃さなくてオペラグラス必須ポイントだったな。その後に少女のような幼さを帯びて表情が柔らかく広がっていく望海サティーン、もう本当に、大好きです。

デュエットの極意 感情のグラデーション

先ほど話した「緩急」は、のぞよしペアのどのデュエットでも感じられるんだけど、Your Songではお互いの心が徐々に開いていくような物語の展開を感じ、Elephant Love Medleyでは1幕ラストの幸せのキスに辿り着くまでの2人の攻防の過程&細かすぎる2人の心情の変化を楽しんで、Come What Mayでは「かもしれなかった未来」を歌い上げる、そういうシーンごとに2人の感情のグラデーションを感じられるのも好きで、巧みな2人の表現力に唸らされる。

この投稿の中で書くタイミングを見失っちゃったのでここに書いちゃうけど、So Excitingでサティーンが公爵に言う「理解が早い〜♡」でその状況を頭では理解できても心で理解できてないから表情を曇らせる芳雄クリスチャンと、「不滅の愛!」って歌うクリスチャンの横で苦笑いする望海サティーンが大好きなんだ… お互いが持つ「自信の無さ」がここで如実に現れる、究極を言えば似たもの同士のサティーンとクリスチャンなんだと思ってる。

ままならない2人のCrazy Rolling

上手には血の付いたハンカチを片手に天を見据える瀕死のサティーン、下手にはピストルを片手に自分の身体で抱えきれないほどの感情が制御できないクリスチャン。ままならない2人、もう私どっち見たら良い…?最後まで望海さんと芳雄さんのどちらを見るか全然決められず、どっちも見たくていつもここはもはやオペラ構えてないことの方が多かったな。
先述した複数のデュエットで豊かなハーモニーを劇場中に響かせてくれる2人だけど、Crazy Rollingの「お前の魂空に放ち その運命に感謝すればいい」から始まるフレーズは、ハモることなくピタッと音階が合うのが逆に贅沢で、こんなヒリヒリさせられる歌唱表現あるんだな…って何度聴いても痺れる。

9/26ソワレは、「この悲劇を黄金に変えて お前の罪と引き換えに」のフレーズで、望海サティーンも芳雄クリスチャンも手を天に向けて掲げ始める動作のシンクロがあったのがすごく心に残ってて、クリスチャンはピストルを持っていない方の手で天に向かって指差し、サティーンは両手で何かを掴み取り、そして祈るように。
今年の東京公演中に「その運命に感謝すればいい」で2人とも同時に左手を天に掲げた瞬間があって(自分のXを遡ってたら6/27ソワレだった)、別々の空間にいるはずの2人の動きがシンクロする奇跡に震えたのだけど、9/26ソワレは同じような奇跡に思えた。でも、同じような動作でも目的が全然違うんだ、という状況も愛おしい。違う空間にいるのにシンクロしてしまうのは、先述した「似たもの同士のサティーンとクリスチャン」という勝手な解釈を裏付けるもののようで。

望海サティーンは、東京後半〜大阪前半は死が自分を待つ運命を穏やかに静かに受け入れて、でも「全てが 全てが 全てが 狂おしいほど」からギア上げてきて泣きが強くなる印象だったんだけど、大阪後半(芳雄さんとの4連続初回から)は自嘲気味なサティーンという印象で、運命に抗うというより運命に抗えない自分を嘲笑うような印象で、理性も途切れちゃってるような、クリスチャンとは真逆の一触即発の恐ろしさがあった。

あと、原曲がRolling in the Deepに入ったあたりのクリスチャンのソロで、今までは一小節ごとに泣いたりがなったり身振り手振りも激しく変えてきた芳雄さんだったのに(ここ本当に凄すぎて井上芳雄劇場って勝手に呼んでる)、9/26ソワレはその動作の激しさを封印した芳雄さんがそこにいて、逆にそれが不意打ちでものすごく痺れたな… 声だけで感情の起伏を表現してやるよという宣戦布告のようでもあってめちゃくちゃにかっこよかった。「君はその手で運命を弄ぶの」でようやく左手を握りしめたのが、クリスチャンとしての精一杯の抵抗のようにも感じて、暴走する青年役と、それを演じる百戦錬磨の俳優が交差した瞬間だった。
逆にサティーンとのデュエットになる後半からは動作も結構激しくて、「慰めでもない もう戻れない」の前後不覚感は今まで見た中で1番不安になったので、回ごとに感情の波が最高潮に到達する瞬間が全然違うことを理解させられて益々Crazy Rollingが頭から離れないんだ… そう私はCrazy Rollingの話を一生していたいほど大好きなので……今日の大千秋楽はどうなってしまうんだろう。

Your Song Reprise  畳み掛けるようなラストシーン

先述したように自嘲気味のサティーンだけど、まさか公爵邸で自分が拒絶した(フリをした)クリスチャンが自分の元にやってくるとは思わなかった驚きと、「ここへ来てはダメ」の劇中劇のセリフそのままにクリスチャンが自分と一緒にいることで彼が公爵の刃にかかるかもしれないと心配する気持ちとで、もう決壊しそうなの。でも、彼女自身の自嘲の鎧がクリスチャンの「僕を見て……サティーン!」をきっかけに剥がれてく。そういう、何層にも重なった感情がドミノ倒しのように畳み掛けていくサティーンの心情の見せ方が望海さんは本当に上手くて、そのドミノを緩急つけながら倒していく芳雄さんも上手いから、お互い辛いけど大好きなラストシーンだったな。

多分これまでもXやnoteで同じ話を何度もしちゃってると思うんだけど、Your Song Rep.の何が好きかって、象の部屋でのYour Songと立場が逆になることなんだよね。象の部屋では、クリスチャンが「君のために作った曲なんだから自慢していいんだよ」という趣旨で自作の曲でサティーンに歌いかけるけど、このラストシーンのRep.では「君が作った曲なんだから自慢していいんだよ」とサティーンがクリスチャンを肯定してくれるんだよね。のぞよしファンとしてのバイアスもかなりかかってたと思うけど、昨年のムーランルージュ期間終了後のバイマイに望海さんがゲストで来てくれた時、芳雄さんが「(20年来の付き合いの)だいもんが俺の20年を肯定してくれた」と言っていたけど、再演のペア千秋楽となった9/26ソワレもそれをすごく考えてしまって、かなり涙腺にきてしまった。望海さんは、芳雄さんをクリスチャンたらしめてくれると思ってて、先日の望海さんのインスタで「クリスチャンはサティーンを見たことのない世界へ連れて行ってくれますが、それは芳雄さん自身にもずっと感じてること」と書いてくれてたことが本当に嬉しくて、キャリアも年齢も上の芳雄さんがクリスチャンを演じていることの肯定、大正解の解釈だと思った。ラストシーンは、途中離れ離れになろうと2人で全身全霊で駆け抜けた満身創痍のゴールだったんだなと感じされてくれる展開も大好き。

あと、「隠しててごめんなさい」に代表されるように、特に再演の東京後半あたりから望海サティーンは死期が近づくと声が高くなるような印象があって(結核だとジドラー達にバレるやり取りの中の「それがあなた達に望むこと!」も近いかな)、後半に連れて少女性を帯びていく見せ方も素晴らしいな…って思ってたの。でも、大阪後半の自嘲強めモードに入ってからはそれが落ち着いたように感じて、クリスチャンの叫びをカンフル剤として自分を取り戻したサティーンは、等身大の女性としてYour Song Rep.も歌い始めるし、クリスチャンの腕の中で息絶える時の一連のセリフも、ただクリスチャンに愛された等身大のサティーンとしての言葉として説得力が強くて、このパターンに本当に涙を誘われる。望海さんの細かい表現、たまらなく好きだな…

サティーンが亡くなった後、彼女に降り続ける紙吹雪を取り除くのが得意だと芳雄さんが言っていたけど、大阪後半の、彼女を自分の方に抱き寄せるような仕草も好きだな。ニュアンスとしてはおでこコツンに近いような。そこに彼の持つピュアな気持ちが現れていて、クリスチャンの成長物語ではあるけど、Elephant Love Medleyで「恋はゲーム」と歌いつつも駆け引きなんかじゃなく一世一代の大勝負なんだと伝わってくるような、精一杯のクリスチャン像が最後まで徹底されているのが本当に見事なんだ。

なんて素晴らしい君達のいる世界

2人が組む貸切公演は初演でもなんだか少なくないか?って思っていたけど、再演は2人の回は一度も貸切公演なし、初日も千秋楽も離されて… 絶対に2人揃っての終演後の挨拶をさせないっていう運営側の維持が見えたのは、サティーンとクリスチャンの4ペアで唯一だったと思う。本人同士の関係とかではなく、大人の事情だと思うけど、それが悔しくて沢山通っていたところもあった。(でも結局、7/30マチネの舞台機構トラブルの日に急遽挨拶をしてくれたので、既成事実ができあがってしまったけれども。)

それでも、唯一無二の解釈を提示し続けてくれた2人のサティーンとクリスチャンが大好きで、とにかく本編をまっすぐ、そして日によって感情の起伏が違う、劇場で生まれるありのままの純粋な表現を届けてくれた。何でこの2人の回を好きだったのかを突き詰めるともっと字数を割いてしまいそうなのでそろそろ終わろうと思うけど、それぞれ俳優さん個人のファンであることを前提にしつつ、声の相性の良さ、芝居の緩急の付け方、そして2人が揃うと多幸感も絶望感も相乗効果で広がっていき、とんでもないところまで連れて行ってくれるところかな。クリスチャンがサティーンを見たことない景色を見せてくれたように、私も望海サティーンと芳雄クリスチャンによって、今まで知らなかった相乗効果を教えてもらえて、ムーランルージュを大好きでたまらない作品にしてもらえた。

あと、追い出し音楽かかった直後の2人揃っての飛び跳ねてのガッツポーズも大好きで、急にオラみ雄み強くなる2人…さすが20年来の兄弟(←兄妹じゃなくて兄弟。敢えて書いてます!)…ってにこにこしちゃう。きっと感情的にも限界なラストを迎えて、フィナーレで他のキャスト達が笑顔でクラップしながら楽しく歌い踊ってる中、着替えて感情整えて、ってめちゃくちゃ大変なんだろうな〜と想像しつつも、ウェディングドレス(をイメージしたドレスだってボヘミアンズ貸切のカテコであーやが言っていたね)と(2人が新郎新婦だとするとクリスチャンは)タキシード(かな?)モチーフで、満を持してラストに2人揃って登場するシーンは本当に胸いっぱいになってしまうし、みんなで叫ぶ「みんなでCAN!CAN!」は、紙吹雪と共に感情決壊してしまうんだ。本当に楽しかったな…演じてる方は大変だと想うけど、観てる側としてこんなに細かな感情を追いながら、そして自分自身の感情を解放できる作品。これこそミュージカルが持つ魔法なのかなと改めて実感した。

ロスになった時に見返そうと思って撮った、サティーンとクリスチャンじゃない、愉快な方面ののぞよし

個人的に、ミュージカル界のベスト相手役だと思っています。2人でまた相手役として共演してほしい作品も沢山ある。それぞれの豊かな活躍を追いつつ……また共演してくれますように!

「僕の妹の同期」「会うたびにゼロに戻っちゃう」、20年来の付き合いの長さでは語れない、特別な距離感の2人なんだなと思うけど、9/26ソワレのペア千秋楽でハグしてくれて、手繋いで投げキッスし合う2人の光景に相当涙腺がやられ、今までの思い出が昇華されると共に、こんなに開放感あふれるカテコでも2人の中でOKとしたのがハグと投げキッスまでなんだなというのも愛おしくて、線を引くところは引き、でも本編では役同士として限界を超えていく2人が本当に大好きでした。

2人が相手役になってくれて良かった。Your Songの歌詞を借りるなら「何てなんて素晴らしい君(達)のいる世界」!そんな奇跡に感謝です。本当に、2年間ありがとうございました。
きっとまたのぞよしについて色々と書くと思うけど、とりあえず今日はおわり!大千秋楽行ってきます!


今までものぞよしについては色々と書いてきたけど、再演の投稿のみ再掲!

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