\みんなでCAN!CAN!/ 『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』2023総括
死ぬ前に見る景色ってこんな感じなのかな。極彩色の光景に、聴き馴染みのある音楽、派手な電飾、惜しみなく降る紙吹雪、そして完璧なキャスト陣。まさに走馬灯のよう。でも、一度浴びると点滴のように摂取し続けないと禁断症状が出そう。私にとっての『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』との出会い、そしてその後の熱狂期間はそんな感じでした。2023年の夏、2ヶ月強に及ぶ長期にわたる公演期間を1公演もかけることなく完走できたこと、そして再演決定、今更ながら本当におめでとうございます。サティーンがクリスチャンに言うセリフに重ねちゃうけど「あなた(達)はやり遂げた」だよ、まさしく。https://x.com/xxx3220amo/status/1696894989085659196?s=46&t=xApuoHASrApxzOSznNeIJg
楽しかった…ほんっっっとうに楽しかった。 昨年は、一年で一番通う作品にするぞと決めていたのでチケット先行も自分なりに頑張った上でmy初日を迎えたけど、それでも追加した。個人的なことをいうと宝塚以外の舞台でここまでの回数を観劇したのは初めてでした。本当にハマりました。そして今、2024年の公演に向けて再びチケット確保に勤しんでます。
何でこんなに沼なのか、何でこんなに好きなのか、自分なりにまとめました。「こんなに最高だからみんな観てください」というプレゼン感覚ではなく、自分の備忘録に近いのですが、よろしければお付き合いください!
何が好き? \ブチ上がる音楽/
この音楽に支配され続けた2ヶ月。もうBW版の音源を聴きまくり、日本人キャスト版を脳内で何度再生(という名の思い出反芻)したことか。
映画版を見たときに感じた、知ってる曲が突然流れる時の高揚感。それが洪水のように続くので、ただならぬテンション下にずっと置かれるこの感じ。本当にたまりません。ムーランルージュが上演される欧米の客席だと、聴き馴染みのある曲がノンストップで流れ続けることに、「この曲来た!」「次はこれか!」みたいな感じで会場は大盛り上がりだと聞いたけど、その感覚に近いものを私も味わえたと思ってる!公演期間中にマッシュアップ前の原曲を漁る中で、マドンナのMaterial GirlのPVを見ながら思い出したのは、私の洋楽との出会いの原点が小学生の時に見ていた『天才てれびくん』の中のコーナー、『ミュージックてれびくん』だったこと。ちょうどてれび戦士のみんながMaterial Girlの日本語カバーを歌ってたころが完全にド世代な気がする。懐かしさのあまりどうかなりそうでした。
何が好き? \圧倒される舞台美術/
開幕当初は全日程のチケットが完売していなくても、1ヶ月後には完売、そして譲渡チケットもほぼ見かけなくなった。私も、どうしても追加で欲しくなった回は、東宝がリセール方法として推奨している、桶ぴい次郎が空から見守る掲示板(この設定を覚えたの、貸切公演の挨拶で本気出してきた望海さんのおかげです笑)でアラートを付けて張ったりしたけど、後半はほぼカルタ並の早技で争奪戦が繰り広げられていたなぁ。
完売に至った理由としては、公演詳細が解禁された直後に誰もが抵抗感を覚えたそのチケット代の高さを凌駕するほどの評判だったのかな。その中でも、写真も動画も撮影OKだったあの赤い舞台セットがSNSに出回ったことが、相当大きな効果だったんじゃないかな。
公式の言う「ゴージャスの限りを尽くした」世界がまさに目の前にあるこの空間、虜にならずにいられようか。赤い照明も好きだし、舞台を四角く囲う電飾が見せる派手なアクセントも本当に好き。もちろん、上手の象と下手の風車も。そして何より紙吹雪!
プログラムの中で、装置デザインのデレク・マクレーンさんが、象のオブジェのことを「恐らく長年、それなりに(ムーランルージュでの)醜態をみてきたのであろう」と語られてるのがとても腑に落ちた。なるほどなぁ、時代と共に人の入れ替わりが起ころうと、変わらずそこにあり続ける普遍的な存在。
何が好き? \みんなでCAN!CAN!/
最高に盛り上がるのがCAN CANシーン。フィナーレまで楽しかった!正直、本編ラストにあんなに泣いて、そこからノンストップでフィナーレでブチ上がり、「みんなでCAN!CAN!」(紙吹雪パアアアン)なの、情緒おかしくなるから。情緒のジェットコースター。これだけ通い詰める中で、完全にどこかネジ外れて振り切れてたところがあると思う(狂)
最高なので、今年の再演に向けて90秒ver.の舞台画像を全人類見てください。当初30秒バージョンのみだったのに、60秒も伸ばしてくれて大感謝です…ムーランルージュは権利が厳しすぎて、舞台映像としてはこちらの東宝公式チャンネルでアップされたものと、芳雄さんとあーやがFNS歌謡祭に出演された時のYour Songしかないのよね…でも舞台映像が一曲丸々映像に残るなんて本当に嬉しかった。今年は色んなキャストが歌番組に出てくれると良いな。
何が好き? \完璧なキャスト/
日本でのミュージカル版上演を元々すごく楽しみにしていたのと、キャスト発表当時に夢中になっていた俳優さん達がプリンシパルに配役されたこともあって、この夏はムーランルージュに全振りするぞと意気込んでいたけど、こんなに沢山の素敵なキャストの皆さんに出会えたことはかけがえのない出来事だったな。今年も全員続投なことが本当に嬉しい。
観劇回数を重ねるごとに、キャストの皆さんへの解像度も高まり、舞台の上以外でもSNSで沢山発信してくださり、本当にずっと楽しかった。芳雄さんがラジオや日経のエンタメ通信の連載で語られてたのが印象的だけど、皆さんの、「日本初演のムーランルージュに出演すること」の矜持、とてつもなくかっこよかった。私も、このキャストの皆さんで日本初演のムーランルージュをこんなに観劇できたこと、ミュオタ人生の中で忘れられない2ヶ月になったな。
(超人並みのスケジュールをこなしながら、2週間に1回ここまで深く考えを巡らせて、ここまで長い文章を世に送り出してくれる井上芳雄さんよ…「ラグタイムと稽古を掛け持ちしていたからこそ感情の蛇口が開きやすくなった」とご自分を客観視しながら語るこちらの記事にも大感動したのでリンクを貼りますね。ムーランルージュの中でアブサンを飲み過ぎてついに“全能の神”になったんだと思ってる…)
プリンシパルキャストまでに限定してしまうため心苦しくはあるけど、14名の私なりの感想を進めます。(プログラム掲載順)
サティーン
音楽と感情。Wキャストの二人を語る上でこのワードをとてもよく見かけて、二人のバックグラウンドを考えた「強み」としても確かにそうなんだけど、でも二人は二人なりの「サティーン」を提示していたんじゃないかな。
この作品の主人公であり、ロートレックと同じように、私の中で圧倒的にミューズになってるほど大好きな役。素敵な歌姫である二人が演じてくれる巡り合わせに感謝です。
“輝くダイヤモンド”としての圧倒的な華やかさでムーランルージュの“家族”にも客席にも夢を与えながらも、ロートレックにクリスチャンから手を引くように懇願されるも「私には心がないと思ってるの?」と返すその一言に、サティーンの全てが詰まっているのかな。家族のために公爵が必要、でもクリスチャンにも愛されてるし、彼を愛しているという気持ちはもう隠せない。病魔も重なり、この作品における悲劇要素を全て背負わされ、胸が張り裂けそうなほど辛いけど、「クリスチャンの歌を世界に聞かせる」という使命感を持って命を全うする彼女の清々しさ。こんなに悲劇要素を背負ってるのに、愛する人の腕の中で最期を迎える彼女は、性愛意外で繋がれるハッピーエンドを提示してくれたのかもしれない。そう思わせてくれるカタルシスまで大好きです。
望海風斗さん。全てを奪ってくれてありがとうございました…
なんて素晴らしい君のいる世界。
平原綾香さん。実はサティーンとクリスチャンの4人の中で、個人的に初見からmy楽までで一番印象が変わったのが、あーやでした。望海さんよりも、クリスチャンに自称するように“ファンタジー”要素が強いなと思ってる。掴みどころかがないというか、手の届かない存在のよう。ムーランルージュのナンバーワンとして君臨するまでに地獄から這い上がった苦労を消して、完全に夢を見せる存在なのかなと思ってしまうくらい。フィクション性の強いサティーンなので、決して結ばれることのない恋ということを更に強調されるというか。自分にどんな試練が訪れようと、誰に愛されようと、うまく交わすような可愛らしい笑みや笑い声が印象的。でもその表情もその声も本当に切なくて、笑顔の裏に隠された悲壮感。自分を嘲笑うような乾いた笑いが、可愛いのに切なくてたまらないと思っています。
あーやサティーンは歌唱シーンにこそ感情が乗るというか、歌の力と感情が掛け合わされた時に放たれるエネルギーが物凄い。Sparkling Diamondも華やかなだけでなくすごくおしゃれに、自分色に染めてる感じが強くて、Fireworksももう圧巻。でもElephant Love Medleyの終盤(I Will Always Love You)でクリスチャンと手を繋ぎながら愛を爆発させる時や、Come What Mayでクリスチャンにバックハグされながら安堵感の中で喜びを歌う時のパワー、本当にすごい。
あと、おそらく最後の絶命の瞬間にもこだわりを持たれてるのかな。ぴたっと事切れる見せ方が本当に細かい。サティーンのモデルは亡くなったお父様だったとSNSで拝見したけれど、死に向かうサティーンへの魂を込めた見せ方はずっと脳裏に焼き付いています。
あーやサティーンは、歌う時こそ感情が飛び抜けて爆発するんだなとElephant Love Medleyでものすごく実感した。象の部屋からパリの夜空(クリスチャンがサティーンに見せる「星を旅しよう」の景色だと思ってる…)に舞台が変わり、2人が手を繋いてマッシュアップ中の曲がI Will Always Love Youになった瞬間の喜びの飛び抜け方ね。あーやサティーンの感情に合わせて自由自在に操られる歌声に追従する芳雄クリスチャン、という構図がとても良かった。大型犬のように必死にサティーンに迫っていたクリスチャンだけど、Elephant Love Medleyでは、必死でありつつもサティーンをエスコートする余裕もあって好き。
歌も台詞も、とにかく声色を自由自在に変えて、かなり飲み込まれてしまう。歌手の平原綾香さんとして認識している声の時は、ああ聴き馴染みのある声…って納得するし、そうじゃない猫撫で声で相手を包む時の声も好き。でもそれは、本音じゃなくて「仕事」の時。簡単には本来の自分を明かさないような凛々しい強さも大好き。
あやこさんとあやかさん。2人が幼い頃同じバレエ教室に通われていたという奇跡の巡り合わせも凄すぎて。このタイミングで大作の主演に導かれた2人だったんだな。
クリスチャン
井上芳雄さん。もうほんとに…参りました。
甲斐翔真さん。未知の世界を楽しむ余裕。根拠のない自信。純粋無垢に、心のままにサティーンを追いかけるけど、そこに余裕が垣間見えるというか、どう転ぶかわからないけどやってみようという、基本的にすごくチャレンジングで、その勢いが好きだ… サティーンとのハッピーエンドを目指しているけど、それは具体的なものではなく、まず今を懸命に生きる。でも懸命すぎて足元救われるようなことはなく、どこか遊びがあるのも良いなぁ。よく言われている「等身大」の魅力、アメリカからフランスに降り立ったばかりの若者としての瑞々しさや純粋さはもうピカイチだけど、甲斐くんの魅力ってそれだけじゃなくて、その「等身大」で終わるわけない甲斐クリスチャンに惹かれたよ。「初恋シート」に座る客席へのアプローチも!フィジカルで見せるダイナミックさにも本当に惹きつけられる。
でもChandelier以降、アブさんに飲まれていく様は繊細で脆い。ロクサーヌで足取りもおぼつかなくなるほど、一気に前後不覚になる危うさ。
「僕を見て…?サティーン…」が、ものすっごく優しいのも甲斐クリスチャンならでは。その優しさが本当に怖かったな…
サティーンの心の動きに手応えを感じる甲斐クリスチャンが、その都度本当に嬉しそうなのもすごくツボだった。
二人のクリスチャン像、対にしながら考えとすごく面白いんです。解釈の違い最高!!!ってなる。飲み込まれていく甲斐クリスチャンと、堕ちていく芳雄クリスチャン。「〜される」という被虐的な印象が強い甲斐クリスチャンだけど、芳雄クリスチャンが最後に「サティーンの物語」として語りかけながら客席に提示する印象がある中、甲斐クリスチャンは「サティーンの物語」を成長した自分の姿を通して客席に提示する印象だったので、甲斐くんの心身をどっぷりムーランルージュに漬け込んでくれたからこそのクリスチャン像だったのかな。昨年の公演後、パリの本場のムーランルージュへ行ったと先日の会見で話していた甲斐くんのクリスチャンにお目にかかれる日が待ち遠しいです。
ハロルド・ジドラー
橋本さとしさん。「みんな大好き、ハロルド・ジドラー!」の説得力たるや!元々の舞台経験の豊富さもあると思うけど、空間を支配する力がずば抜けてるので、ムーランルージュのショーに出演する支配人・ジドラーとしての口上は圧巻。そして経営難に陥ってしまった事態に説得力を持たせるほどのどうしようもなさと、経営力がなくても持ち前のチャーミングさでどうにかなってきたんだろうなという場数の多さゆえの強さも感じる。「サティーン、口紅もう少し…」とか、Crazy Rolling後の劇中劇の中でよろけるサティーンを置いて捌けないといけない時に彼女を見つめる表情とか、“家族”としての愛をそこに感じて泣いてしまう。
松村雄基さんは、コミカルな可愛らしさと慈愛に満ちた優しさがメインの役作りのように感じた。ムーランルージュが経営難に陥ってしまったのは彼のミスとかではなく、優しいがゆえにロートレック達のつけ払いを長年許してきたからかな、とか。公演期間が8月後半に入ってから、フィナーレ前に客電落としに行く松村ジドラーがほぼ毎回楽しいジェスチャーしてくれて、でもキャストですらそのジャスチャーを紐解けないほど独特で、「気になって眠れない」とローチケ貸切で芳雄さんに言われたのが忘れられない(笑)。大千秋楽の様子を映像で拝見し、この作品に本当に真摯に向き合われてたんだなぁと胸が熱くなった。松村ジドラーに出会えて良かった。
客電消灯前のアドリブ、「よしお」と「ふうと」は観測してた。可愛すぎる……↓
トゥールーズ=ロートレック
クリスチャンに過去の自分を重ね、サティーンを想い続け。時に芸術を愛する当事者として、時に二人を客観的な目線で見守る者として。そうやって重大な役割を担っているのが、実在した人物であるロートレック。
Crazy Rollingの間奏でサティーンに「僕のミューズ」と呼びかける時に、サティーンの目を見ないのが上川さん、目を見るのが上野さんだった印象。サティーンに対する距離の縮め方に個性が出てて好きだったな。
上川一哉さんの、コンプレックスを抱えた不器用なロートレック像がたまらなかった。サティーンとの、近づきすぎず、離れすぎずの距離感に当事者意識を持ってハラハラしてしまうような。クリスチャンの恋も応援するけど、かつて自分も同じように抱いたサティーンへの恋心とは完全に決別できていないような、燻らせていたような葛藤が好きでした。公爵への反抗も、切れるポイントが予想できないというか、とにかく引き込まれた。
ムーランルージュ→イザボー→ムーランルージュ、という変遷を辿る皆さんが多いと思うけど、望海さんと上川さんの距離感の違い、というか湿度の違いがこの2作品でえげつないので、まだイザボーを観てない昨年のムーランルージュ期間中の私へ唇がテカテカに光ってたチャラめな上川ルイの話をしたらひっくり返るだろうな…
上野哲也さんは、純朴さがすこんと真っ直ぐ抜ける声にロートレックの純朴さやこだわりの強さが現れてるのかなと思っていた。Nature Boyの直前、クリスチャンに自分のことを語る時、「欠陥品」の前でものすっごく溜めてた印象が強いんだけど、割と温厚そうに見える上野ロートレックにも地雷ワードはあるんだろな……などと考えてた。クリスチャンの恋も応援するけど、サティーンへの思いは愛情の形を変えて維持し続けてたのかな。温かいロートレックだったな。
公演期間中、コラボカフェでロートレックの絵葉書をいただけたのも嬉しかった!
デューク(モンロス公爵)
この二人、本当に真逆な役作りでおもしれぇ…と思いながら公演期間を過ごしました。
伊礼彼方さん。自分の発言が守られることも自分を敬われることも、さも当然ですけど何か?と、些細なことでは動じずに、その大らかさで「小さな演劇的家族」を包み込むほどだったのが、逆に恐ろしかった。千秋楽に、赤いドレスのサティーンに詰め寄る迫力(「道化師でも寝取られ男でもない」と前置きして自分の長い長い名前をようやく名乗るところ)がものすっごくて、抑えてきた芝居をようやく解放させた時の劇場の空気の揺らぎを感じた。あっぱれです。
そしてSympathy for the Dukeの曲中で、ブレスにかこつけてサティーンから脱がせた上着の匂いを嗅ぐのが大変にツボ。その紳士的な色気では欠かせない変態っぷりが垣間見える公爵像、今年もぜひ見せて欲しい…。
Kさんの公爵は、伊礼さんと真逆で、きっと導火線が相当短いんだろうなという役作り。「彼女はあなたを愛していないからだ!」とクリスチャンに怒鳴られるまでにも、なんとなく自分の思い通りにならない状況に常に若干キレてると思ってるんだけど、そういう危うさが常に付き纏う、ひりひりするような台詞回しと表情が良き。わっっるい顔を何度も見せてくれて、それがたまらなかった。しかも、初見時から徐々にその役作りが深くなっていくのがわかるのも本当に面白かったな。そしてカテコで見せてくれるお茶目な様子が本編と違いすぎてびっくりだよ…思えば蓮華ニニの脚上げに続いて出てくる伊礼公爵とK公爵、どちらもノリノリで脚上げてて凄かったな。
あーやサティーンと組んだ時のSymphathy for the Dukeのライブ感は、音に酔いしれる気持ちよさもあって、この作品ならではの魅せ方だなぁと唸る。ミュージカルとはいえ、音楽がメインの作品だという考えもあるから、あーややKさんが配役されたのは当然のことというか、適材適所ってこういうことなんだなと思わせられた。
そして望海風斗のサウンドイマジンにゲスト出演された際に、二人の駆け引きや、サティーンから見た恐怖のK公爵像の話を伺えたことが嬉しかったな。この話の内容を胸に、早く今年のムーランルージュを早く観たいんです。
私、この役が本当に好きで…これぞヴィランという役回りなのに、「自己紹介から始めよう〜」って歌いながら全然名前名乗らなかったり(Sympathy for the Duke)、サティーンを恫喝するシーンの長椅子がありえないくらい長かったり、恋敵のクリスチャンのことを「美しい顔を耳から耳まで切り裂く」ってサティーンを脅すからクリスチャンの顔が良いことは認めちゃってるし、敵役なのに最後の大団円はハブにされるかと思いきや何故か一番後ろにいるし、個人的に色んなところが大変にツボな役。映画版のように直接武器を向けるような展開はないから最初は物足りないかと心配したけど全然そんなことない、憎めない愛すべき公爵像。
サンティアゴ
Backstage Romanceの冒頭、サンティアゴがニニの胸に顔を埋めて歌う一瞬、中井智彦さんの声がさっきまでよく響いてたからこそ、一瞬くぐもるのがもう最高でした。ニニにだけに聞かせたい声、ニニの心臓に一番届けたい声、良すぎる。中井さんは「歌」を武器にされている方だと思うけど、ロートレック達と一緒に夢見るボヘミアン像がとてもハマっていて、クリスチャンがサティーンに見初められたことを素直に喜び、ニニに対する憧れや愛情も体当たりで、プリンシパルの中で一番共感できる人物像だったな。
ローソン貸切で、芳雄さんの無茶振りに押され「ローソンを鉄道に例えると小田急」だと語ってたのが忘れられないよ…あと楽屋でプラレール祭りが開催されてたのも!個性溢れるカンパニーが大好きだな。
中河内雅貴さんは、伊礼さんの配信番組でのトークを伺ったり、その舞台姿を観てもわかるとおり、ダンスに懸ける想いとプライドが眩しくて、立ち姿や一つ一つの決めが美しくて、そのパッションがサンティアゴとしてすごくハマっていたな。二人のニニと組む時も上手くリードされてて、熱く漲るBackstage Romanceの冒頭、ヒリヒリとした始まり方に本当に引き込まれたよ。
上川さんもそうだけど、甲斐くんも中河内さんも、みんなイザボーでムーランルージュとは別の形で、しかも湿度高めに、時には猥雑に望海さんと絡んでて、ムーランルージュカンパニーに再集合したらきっと昨年とは違うボヘミアンズになるんだろうなとワクワクしてます。プリンシパルキャストにイザボー経験者4名が揃う回も確保してるので楽しみ!
ニニ
プリンシパルキャストの中で、二人それぞれのポテンシャルやアプローチが一番違うのがニニだと思ってて、一年後ここが売春宿だったらあんた出て行かなくて済む、と言われた後に一緒に呆れるのかムッとするのかとか、サティーンとの“シスター”としての距離感とか。二人のアプローチの違いが味わい深くて、二人とも大好き。
加賀楓さんのニニは、サティーンへのライバル心を燃やしつつもどこか高貴な印象。雑草魂があるというよりも、サティーンと育ってきた環境は違うけどたまたま今同じクラブで競ってるのかな。サティーンの「ママの仕事ぶりを見ていてにゃーん!」を従順に守る“プッシーキャット”感もあって、本当に可愛いなぁと愛でたくなるし、ムーランルージュ内でもコアなパトロンがついてそう。高貴だけど、たまに激しさを併せ持つのがたまらないよ。そんなギャップに突き落とされてしまうし、だからこそ加賀さんがこんなにも多くの方々に愛されてるんだなとよくわかった。公演中に発見した、ニニになる前のラストシングルがまさに“概念ムーランルージュ”で、ニニを演じる運命だったのかな、とすら思ってしまう。勿論、その経歴ゆえに楓さんに惹かれただけでなく、Lady Msの一員として華々しく活躍する姿に心奪われたな。
藤森蓮華さんのニニ、ほんっっとうにかっこよかったね… 長い手足から繰り出されるダンスも一挙一動も、ダイナミックで見惚れるしかない。サティーンと同じ境遇で切磋琢磨してきたけど、いつもサティーンのほうが一枚上手で、悔し涙を飲んできたのが蓮華ニニ。そのハングリー精神が反映されているような役作り、オフマイクの芝居やLady Ms登場シーンでも、客席やパトロン達を思いっきり煽ってくれて最高に楽しかった。今回プリンシパルキャストとして蓮華ニニに出会えたことは私の財産です。こないだ観劇できたトッツィーでも、どこにいても絶対わかるし絶対オペラで追ってしまうんだ。早くまた劇場で会いたい!
Wキャスト、こんなに「みんな違ってみんないい」を揃えられるのも天才だなと思うんだけど、観る側それぞれの好みに合わせて選択できるキャストでもあるのかなと思った。濃いめ、アレンジ強め、基本重視、遊び有り。作品違いだけど、これを書きながら『マダムヴォルフのコレクション』が脳内で流れてます。「味付けも食べ方もあなたの好きに お好み次第なの!」
何が好き? \席ガチャのドキドキ&キャストの化学反/
色んな景色を拝めたので記念に!印象的だった席のことや、その日の感想を。そしてWキャストだからこそ、シャッフルされたキャストによる化学反応が本当に面白い。
日本初演かつ普段の帝劇とは違う舞台機構だからなのか、Show must go onを何度も感じた作品でした。
これ以上ないほどの極上体験 B列ドセン
流石に余韻がすごかった。多分「骨抜き」ってこういうことなんだろうな…などと思いながら、観劇後はひたすら感想壁打ちマシーンでした。↓
2階席に届くFireworks、トラブルも見せ場にしちゃう最高の布陣
望海さん、芳雄さん、さとしさん、伊礼さんが揃った“ザ・ミュージカル”な不陣。私がこの4名の並びを見られるのは本公演初日とこの回のみだったので、初日から約1ヶ月経って更に増す円熟味をすごく楽しみにしていた。
この回のサティーン、クリスチャン、ジドラー、公爵。技術面では申し分ないのだけど、この4人だからこその確立させられるコミカルな「間」、ドラマのあるシリアスさ、このあたりにすごく胸を掴まれた…だけでなく、この回は舞台機構のトラブルがあって、本来生まれなかった見せ場まで生まれてしまった回。
https://x.com/xxx3220amo/status/1682771750009049088?s=20
https://x.com/xxx3220amo/status/1682774793731571713?s=20
https://x.com/xxx3220amo/status/1682776973662384129?s=20
https://x.com/xxx3220amo/status/1682779877114777602?s=20
“ザ・ミュージカル”な布陣は、Show Must Go Onだと見せつけてくれる最強の布陣。一時はどうなることかと唸ったトラブルすらお土産にしちゃうんだから本当に凄いよ。真実こそ劇場で生まれるんだと改めて。
もう観劇前の自分には戻れない、沼底オケピ席
この没入感をどう表現したら。書くのも恥ずかしくなっちゃうけど、「全てを浴びる」ってこういうことなんだなと。思い出深い「イマーシブ・クリスチャン」(命名:私)な回でした。一挙一動から目が離せないというのも、心奪われ夢中になるきっかけの一つだけど、それを足がかりにして思いっきり浸された感がある。(&その翌日のNHKのど自慢でもう一段深い沼に入った自覚が大いにある私です。)自由や愛を歌う喜びも、愛ゆえに身を焦がす危うさも、勿論以前から存じ上げているもののこれが沼かと悟ったのは昨年なので私は新参だけど、芳雄さんにこんなに沢山のファンがいてここまで長く愛されてる理由がとてもよくわかった。というか、理解させられた感が強い。「なんて素晴らしい君のいる世界」と歌っているのに、「君」がいなくなった世界に直面したクリスチャンの慟哭が忘れられなくて脳裏に焼き付いてる。
あーやサティーンは、歌う時こそ感情が飛び抜けて爆発するんだなと間近で芳雄クリスチャンと歌い上げるElephant Love Medleyでものすごく実感した。象の部屋からパリの夜空(クリスチャンがサティーンに見せる「星を旅しよう」の景色だと思ってる…)に舞台が変わり、二人が手を繋いてマッシュアップ中の曲がI Will Always Love Youになった瞬間の喜びの飛び抜け方ね。あーやサティーンの感情に合わせて自由自在に操られる歌声に追従する芳雄クリスチャン、という構図がとても良かった。大型犬のように必死にサティーンに迫っていたクリスチャンだけど、Elephant Love Medleyでは、必死でありつつもサティーンをエスコートする余裕もあって好き。
Kさん演じる公爵とあーやサティーンとのSymphathy For the Duke。シンガーの顔を持つ二人が圧倒してくれる回だったな。声の表現力と説得力。
公爵の鏡になりたい風車の下 B列上手
個人的にこの前方上手席は公爵かぶりつき席で、ムーランルージュに到着した公爵がVIP席に辿り着いて飛ばすウィンクを浴びたり、サティーンと象の部屋での情事を終えて鏡を見ながら身支度する時とかの色気にやられて帰ってきました。
もはや共犯、どこまでも堕ちたい象の足元 超下手席
象徴的な象越しに舞台を拝めるこの構図、「非日常感」が強くてすごくわくわくしたな。舞台との距離の近さも相まって。前述した、装置デザインのデレク・マクレーンさんがプログラム内で象のオブジェのことを「恐らく長年、それなりに(ムーランルージュでの)醜態をみてきたのであろう」と紹介されていたことを踏まえると、劇場の長い歴史の中で見れば、クリスチャンが語る“サティーンの物語”だって、ちっぽけなただの歴史の一ページなんだと思わせられるほど退廃的な魅力で溢れてる。
舞台との距離はとても近いけど、観劇できた回を振り返ってみると一番の見切れ席だったかもしれない。この帝劇で、舞台姿が見えないのにあの井上芳雄の声がするぞ…という贅沢すぎる経験をした。声だけで感じる井上芳雄、耳がどうかなりそうです。(Crazy Rollingの冒頭、暗闇に座り込むクリスチャンが完全に消えたのでした… それもまた思い出。)あと、「僕は君を不滅にする」とロートレックなりの告白を受け止めた最下手側のサティーンの葛藤まで見切れるの。不満じゃなくて記録として…
ちなみに昨年は、沼底オケピ席(最前XA〜XC列)でもB列ドセンでも、Crazy Rollingで舞台奥に座り込むクリスチャンの全身は見えなかった。でも舞台のでも見切れが起ころうと、前方席で得られる感動は何物にも替え難いと思ってる。ついつい見切れの話はしてしまいがちだけど!
望海さんと芳雄さん回のCrazy Rollingがあまりにも好きなので気を抜くとその話をしがなのだけど、「お前の魂 空に放ち」から2人が同じ音域をバチバチに歌うのが本当に良い。望海さんが、サティーンに待ち受ける運命に対して、来るなら来い、撃つなら撃てと言わんばかりにふわっと両手を広げたのがすっごく良かった。望海さんの手のひらの腕で転がされていたい。
クリスチャンと共犯になるような感覚がたまらないなと感じた。El Tango De Roxxane、クリスチャンの一挙一動でこの舞台の進む道が決まるのでどこまでもついて行かせてくれという気持ち。
銀テープが飛んできた! N列センターブロック
銀テープが私目掛けて飛んできたので、あわあわしながらキャッチしたけど、銀テープって長いんです。そして銀テープって思わせぶりなんです。「私のところに飛んできた!」と認識しちゃうのは私だけじゃないんです。そんなわけで、突然勃発したバーゲン会場の如き綱引き(銀テープ引っ張り合い)大会に負けた、というか怯んで不戦敗となった回。無念!
ほんと不真面目な感想で申し訳ないんだけど、クリスチャンvs公爵のリップ音の応酬、激しすぎない…?ってめちゃくちゃどきどきした回。
なんだかんだ1階A席が程よく見やすくて好き
個人的に思い入れの深い上記2公演は、安定の1階A席でした。なんだかんだこの距離感が一番落ち着いて観られるし、ちょうど良いなと思う。
視界を遮るものが何もないって最高! 2階前方ドセン
めっちゃくちゃ見やすかったな…2階サイコーってなった。夜公演だったのもあり、ただならぬ高揚感と、芳雄さんとさとしさんと伊礼さんが揃った時の、「何が起きても大丈夫」という謎の安心感ゆえの盛り上がりも。
1幕ラストはサティーンと彼女を抱えるクリスチャンのキスで幕が下りるけど、あーやサティーンが芳雄クリスチャンに抱えられてキスされるだけじゃなく、彼の首に手を回してて、やるなぁと唸った。あーやサティーンは、アブサンの緑の妖精の時も結構ワイルドなので、コケティッシュのようでいて実はうちに秘めたる欲の強さみたいなのもあるのかなぁ。そんなの好きに決まってる。
ラストの紙吹雪も、2階のこの黒い迫り出した装置からも発射してたんだとようやく気づいた。視界が紙吹雪で覆われてるその先に本舞台が見える光景によって、これは“フィクション”だという感覚を植え付けられてしまう。
この日、生まれて初めて「井上芳雄さんの舞台をマチソワする」ことを達成したんだけど、なんか、ある意味逃れられない呪縛のようなものを自分で掛けたような気がする。この勢いのクリスチャンをマチソワどっちも浴びたらどんな感じかな…と幾度となく考えてたので、埋め尽くされるのはもう本望なんだけど、その深みに合法的に迫れるのって舞台と客席という関係性ならではだな、と改めて考えたりした。
これが「初恋シート」だったのか…いや違う? A席上手 公爵のボックス席がもう目の前
Welcome to the Moulin Rouge!のナンバーから相当ブチ上がってました。大音さんのベイビードールにめちゃくちゃ煽られて楽しかったなぁ。Lady Msも沢山視線をくれて素晴らしすぎる席。公爵への挑発が流れ弾となり客席のおたくは被弾しました。もう最高。
Your Song終わりのサティーンとのキスで、唇を離された甲斐クリスチャンが本当に嬉しそうに溶けてて可愛かった… 純度100%超えのザ・恍惚に萌え転がりました。
あとは初恋シートのこと。衝撃だったよ……これがカイショーマ……指されたの私かと思った……違った……無念……
芳雄さんと甲斐くんで、話しかける座席も人数も違ってびっくりした。
↓これは先述したB列観劇時の衝撃。
公爵のボックス席かぶりつき席ということは、Crazy Rolligの望海サティーンの歌い出しも目の前ということで、この日の望海さんがずっと脳裏に焼き付いてるんだ。
席ガチャ振り返りまとめ
1階の超前方席から2階B席まで、色んな距離感と角度で観劇できた中で思ったこと。距離が近いほど没入感が半端ないのは言うまでもなく、距離が遠いならそれはそれで、遠くに光り輝くネオンのような哀愁を感じてめちゃくちゃ沁みたなぁ。
振り返ってみて改めて思うのは、超前方席で得られる衝撃がやっぱり段違いなので、チケットの価格帯を3種類だけでなくもっと細分化すべきなんだろうな本当は。けど今年もそれは叶わなかったね。C席新設とか、貸切の主催が独自で席種を細分化してくれたことは評価されるべきだと思うけども…
開幕直後、1階D列にも座れたんだけどあの日もめちゃくちゃに凄かった。超前方席はS席じゃなくて「うずらの卵とキャビア席」に名称変更してもっと値上げして良いし、見切れ席はそれ相応にチケット代を調整するべき。でも、ムーランルージュを皮切りにその後の東宝ミュージカルのチケット代が軒並み据え置きになってる現状から覚悟はしていたけど、今年の再演が昨年と同じ価格帯を維持できなかったことも事実。チケット代が高くても、代わり高水準の舞台を提供してくれるのであればやむを得ないと思いつつ、やはりチケット代は「同行者の誘いやすさ」に関わってくると思う。「ゴージャスな限りを尽くした」が謳い文句なので、敷居を下げることを求めているわけではないけど、本当に素敵なミュージカルなので、みんなで楽しんで、みんなでCAN CANできたらもっと幸せ。私ごとながら、自分のTwitterがXに変わるどころか、赤い画像と共にムーランルージュの感想を流しまくるアカウントに変貌を遂げてしまった中で、元々フォローしてくださってる方や友達が、この狂乱アカウントの投稿をきっかけにムーランルージュを気になってると言ってくれた時がとてつもなく嬉しかったな!
おわりに(「チケット代」と「見切れ」以外も語りたい)
本当に駆け抜けた、やり切った。大変よく通いました。とんでもなく夢中になった。死ぬほど楽しかった。
全方向に感謝。ありがとうございました!
あとは、ムーランルージュの話題としてよく湧き上がる2大テーマが「チケット代」と「見切れ」だと思うけど、劇場に行けば待ってる「非日常」について、もっと語り合いたいんだ。それを思う存分ここで語れたのが、自己満ながらとても楽しかったし、Twitterや、壁打ちじゃなくてオフラインでも、たくさん語れたら嬉しい。今年が終わったらいつ再演されるかわからないし、キャスト全員が続投することは無いと覚悟を決めてるので、もっと楽しい話題で盛り上がりたい。「さぁみんな……眠りから覚めるんだ……起きて、語っておくれ……ムーランルージュのことを!!」という気分です。(エリザベートはミュージカル界の共通言語だと信じてる)
今年も、帝国劇場で、そして新たに上演される梅田芸術劇場で、「みんなでCAN!CAN!」できることをとても楽しみにしています。昨年に続き、絶対に完走できますように!
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書いてる内容の偏りが激しいけど、『ムーラン・ルージュ・ザ・ミュージカル!』のことを書いた今までのnoteをまとめて再掲してしまうね。これよりも出演者さんのSNSや、芳雄さんの日程エンタメ通信を読んでいただいた方が良いに決まっているけど、思い出の結晶ということで!色褪せることなく残りつづますように。
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