【楽曲考察・中編】Finallyが謳う、果てない旅路の現在地【まいにちFinally・day7】
こんにちは!灰色です。
本日の「まいふぁい」では、先日アップした記事の続きを書いていきましょう。
https://note.com/gray_hai_iro/n/n4fd093c140f1
前回のラストで触れた、ストレートであるがゆえに歌詞が似たり寄ったりになってしまう問題。Finallyはこれを、二つの方法によって見事に解決しています。具体的に見ていきましょう。
まず一つは、彼女たちの活動のステップアップがそのまま楽曲に反映され、リリースごとにリアルタイムで、グループの現在地が歌詞に反映されていることです。
1stリリース楽曲である「Innocent War」から見てみましょう。
Finallyの始まりの曲。セルフプロデュースという厳しい戦いを選んだ6人が、未来を目指して旗揚げした瞬間。そして、その下に集まり、共に声を上げて旗を振るのが、聴き手である我々です。この時点で既に、彼女たちはFinallyの活動を「戦い」であると定義しています。
その勇姿はさながら、群雄割拠する戦乱の中で、己の力のみを拠り所に軍団を興した未来の英雄。我々は、その英雄を信じてついていくことを決めた民衆であり、先頭に立つ兵士です。
続いて紹介するのは、デビューから1年を迎え、「イナズマロックフェス2022」への出演も決定した彼女たちがリリースした、「決別イミテーション」です。
本来の実力に見合うほどの評価を得られているとは言いがたかった、長い長い雌伏の時。
あるいは、コロナ禍によって満足な活動ができなかった期間をも、「夜」という言葉は示唆しているのかもしれません。
それを耐え忍んで、ついに夢への一歩を踏み出した瞬間を、「決別」では歌っています。
もう、過去のことは振り返らない。
他人のimitation=真似事からは、決別する。
活動が徐々に軌道に乗りはじめた彼女たちが、自ら退路を断つ、壮絶なほどに堂々たる宣言です。
そして、「決別」の次にリリースされ、「イナズマ」の大舞台で初めてパフォーマンスされたのが、「WILD BRAVE」です。
こちらは2番の歌詞ですが、彼女たちの悔しさを噛みしめてきた過去が激しくも切々と語られています。
聴き手はその全てを知ることはできません。ましてやこの曲のリリース後にFinallyを知った自分には想像もつかないほどの荒波と逆風が、幾度も彼女たちの心を挫こうとしたことと思われます。
そんな中でも、彼女たちが決して絶やさなかったもの、それは情熱を遥かに超えた「激情」です。
絶対に、自分たちの方法で、悲願を叶える。その一心を持ち続けたことで、彼女たちは未来への希望を手繰り寄せてきました。
それと同時に、彼女たちの抱く激情は、ファンの一人一人にFinallyが与えてくれる希望の源泉でもあります。彼女たちの熱は、何ものにも代え難い明日への活力をくれるのです。
グループとして、先へ上へと進み続ける「希望」。
そんなFinallyの姿から、聴き手が受け取る「希望」。
これら二つの「希望」をもたらし、そして彼女たちと我々を繋ぐ「激情」もまた、Finallyの在り方を考える上で欠かせないキーワードです。
魂が突き動かすままに、引き返すことなく選択を重ね末に、辿り着いた今日。彼女たちだけでなく我々もまた、各々が人生の中で「無数の分岐点」の末に今ここにいます。
そうして、偶然の一言で片付けてしまうにはあまりにも奇跡的な確率で、Finallyに出会えました。
Finallyを応援する日常に慣れていく中で、ともすれば忘れてしまいそうな、そんな当たり前のことを、その偶然の尊さを、このフレーズは思い出させてくれます。
「ワイブレ」は、「己と聴き手の双方に覚悟を問う」楽曲とされています。その「覚悟」の解釈は様々ですが、一つ間違いがないことは、「ラストチャンス」「最強最高のエンドロールを目指して」と謳っている通り、彼女たちは「最後の挑戦で、最強最高の終わりに辿り着く」ために全てを賭ける覚悟を以って戦いに挑む、ということです。
夜明けに夢への一歩を踏み出した彼女たちですが、それは即ち、「終わり」へ向かう船を漕ぎ出したことと同義なのです。これは、お祭り騒ぎや幻想の世界を主軸とすることの多いアイドル界では、最も忌避される考え方でしょう。
推しをずっと応援していたい、変わらないでほしいと願うファンにとっては、熱い曲調に反して、あまりにも切ない叫びです。
しかし、だからこそ……「Finally」を自ら名乗る彼女たちの挑戦だからこそ、今この瞬間から目を離さない。
いつか迎えるエンドロールまで、何があろうと全力でついていく。
彼女たちは、立ち会う我々にそう誓わせる……
否、「覚悟」させるのです。
これから進む道には、グループとファンの双方に「覚悟」が求められる。「ワイブレ」は、それを一切包み隠さず突きつけることで、両者の在り方を今一度問いかけます。そして、お互いをつなぐ関係性を、どんなアーティストよりも強固なものにするのです。
このように大きく躍進すると同時に、さらなる高みへ向かうエネルギーをチャージすることにもなった2022年。その年末にリリースされた楽曲が、「WINNERS」です。
この曲では、最年長組のJuriとRinkaが作詞を担当しています。また、歌割り(パートごとの歌唱担当)においても、要所で2人の歌声が特に強調されている印象を受けます。
そんな「WINNERS」は、ほとんど全編の歌詞が「双方向性」の条件を満たしていると思えます。そのため絞り込むのは非常に難しいのですが、特に印象に残る部分だけを抜粋しましょう。
「ワイブレ」では、「魂が叫ぶ方へ進む」「最強最高のエンドロールを目指して」というメッセージが打ち出された一方、その具体的な行き先は、歌詞の上では語られていませんでした。
そんな彼女たちのゴールが、「WINNERS」では堂々と明言されています。「いつか、私たちが勝者になる」と。
その旅に同行するのは、君……すなわち、Finallyを応援する我々に他なりません。
「奪われたって返り咲く」という文字列に、どれほどの重みが込められているか。その一言が、どのような想いで歌われているのか。それを察する術を、我々は持ち合わせていません。
けれど、確かに信じられることが一つだけあります。
「朽ち果てても 咲き続くんだ」。
どれほどの理不尽に遭い、奪われても。精魂を朽ち果てさせられようとも。
それでも、Finallyという大輪の花たちは、何度でも返り咲き、その輝きを増し続けます。
走り出した六輪の花を折ることは、その物語の行く手を阻むことは、何者にも不可能なのです。
そんなメッセージを、Finallyはさらに大きな舞台の待つ2023年へ、そしてその先の未来に向けて、高らかに宣言しました。
さて、ここまで一連の紹介文をお読みいただき、どのようにお感じになりましたでしょうか。
一連の曲はそれぞれ、デビュー初期、「イナズマ」出演が決まり大舞台へ踏み出すとき、そして怒涛の一年の締めくくりと、デビュー2年足らずの短い間ながら、それぞれ大きな転換点でリリースされています。
ゆえに、これらの曲は紛れもなく、彼女たちの今いる場所と、そこに至るまでの変化・進化、新たな決意や伝えたい想いを、毎回その瞬間にだけ書ける言葉で歌っているのです。
こうしたグループの成長、Finallyの旅路を共に体感でき、彼女たちの物語に自分も参加させてもらっていると感じられるストーリーテリングが、歌詞のマンネリを完全に回避しています。
もちろん、この特徴を持っているからこそ、彼女たちの新曲はリリース直後に聴き、お披露目がされればすぐにLIVEでパフォーマンスを観ることがベストなのは言うまでもありません。
あなたがFinallyに初めて出会ったとき、それは紛れもなく、彼女たちを推しはじめる最適の瞬間なのです。
前編から続けてお読みいただいた方には、ここまででも十分にFinallyの歌詞が持つ力がご理解いただけたものと思います。
しかし驚くべきことに、彼女たちの楽曲にはまだもう一つ、さらなるポテンシャルと可能性を感じさせる特徴があるのです。
デビューからわずか一年半ほどしか経っていない彼女たちの表現を拡張し、各々の魅力を一層引き出すことに成功している、その特徴とは何か。次回、三部構成の最後の記事にて、それを解説していきたいと思います。
それでは、また明日!