教育×見える化!3つの高校大学でグラフィックレコーディング授業をしてみて見えてきたもの
1. 高校や大学でどんな授業を行ったか(島田商業高校、明治大学、千葉大学)
2. なぜ学校で可視化の授業を実施するのか
3. 可視化授業の今後の野望
こちらはグラフィックレコーディングのアドベントカレンダーの記事です。
私は普段はアプリ開発してるデザイナーですが、2014年からグラフィックレコーディングの活動もしています。高校大学で可視化の授業を行っているので、どんな授業をなぜやってるかを振り返ろうと思います。
1. 高校や大学でどんな授業を行ったか
2015年頃から全国各地でグラフィックレコーディング勉強会という団体を仲間と立ち上げて体験ワークショップを開いたりしてたんですが、これらの可視化体験のワークを大人ではなく学生向けにやってみたらどうだろう?と"グラフィカシー"という言葉を恩師から学んだこともあり、ここ2年程挑戦しています。
静岡県立島田商業高校 情報クラス情報デザイン専攻(高校2年生)
島田フューチャーセンター運営も行っているこの学校の鈴木滋先生のお誘いで行ってきました。卒業後就職する子も多い中、"人に伝える能力"のひとつとしてグラレコを使えないかという背景で始まりました。授業当日のレポートはこちら。
構造表現の練習後に日本昔話の朗読を聞いてリアルタイムに可視化しようという実践問題を行いました。矢印で繋げてプロセスを描く子や、登場人物の相互関係を描く子などさまざまでした。写真は最後に自分の目標を構造で可視化してもらったワークのアウトプットです。
これ普通に書きましたが、自分の考えやその場で聞いた話を即座に解釈しアウトプットができて人に共有できるってすごくないですか?!私はこの日授業をして特に衝撃だったのは、高校生が社会で通用するような図解を描けていることと「描いて共有」に対する抵抗感の無さでした。自分のブログにも最後にこう書いてました。
正解を求めるのではなく違うことに対する他者自己への理解の深さに驚きました。これだけ情報に溢れた時代、自分の頭で考え自分の思考を外に表現して人に伝える力というものがより強く求められてくるのではないかと思います。だからこそ、情報の海に溺れてしまい自己表現というものを学校という環境で学ぶことができない子供たちにとって、可視化はひとつの生きる力になるのではないかと思いました。
明治大学 情報コミュニケーション学部
恩師である株式会社チューブグラフィックスの木村博之さんのお声がけで、木村先生の担当授業「造形表現論」の時間をいただき授業を行いました。去年と今年の2回連続授業させていただきました。大学2、3年生を対象にしたこの授業の目的は、アイデアを思考して人に伝え、共通言語を生み理解し合うことで人と共に課題解決のためのネクストアクション(表現)が可能になることを伝え、思考して伝え合う手段としてグラフィックレコーディングを活用してもらうためでした。
ワークショップ形式で行った授業の中身の特徴的なも1つ目は「プロセスお絵描きワーク」といって、5W1Hに構造を順番に捉えてシーンの絵を描こうというものです。
絵を描くのが苦手!という人は全てを一度に描こうとするからなのでは?という仮説から、段階を踏んでプロセスにしたがって完成する絵を描くというワークを作ってみました。
意外とみんな描けるのがこのワーク何度かやってわかりました。衝撃。でも、限られた情報からだと足りない要素が出てくるから対話の必要がある!ということに気付いてもらい、次の「スケッチブレストワーク」に取り組んでもらいました。
アイデアのシーンや構造を描きながら共有しブレストを進めるワークです。何も描かないブレストと比較してもらい伝えやすさの違いに気付いてもらうことが狙いでした。絵はちょっと苦手だ!とか全然描けない!と言っていた学生もワークを進める内に抵抗がなくなっていき、イラストでなくても構造を活かして人に伝える技が磨かれていく子もいました。
千葉大学 工学部デザイン学科「コミュニケーション・デザインⅡ」
こちらも株式会社チューブグラフィックスの木村博之さんが担当される授業の中で2週にわたりグラフィックレコーディングとグラフィックファシリテーションの授業をさせていただきました。
この授業自体の概要は、インフォグラフィックスの基礎と展開とコミュニケーション手段としてのデザインを学び「伝わる感じるデザインをつくる」です。その中で、授業目的として思考・情報・対話の見える化を伝えました。
千葉大学での授業はグラグリッドの和田あずみさんに取材していただいたので、こちらの記事を見ていただくとよりイメージがつくかと思います。
なぜ今、学生がグラフィックレコーディング・グラフィックファシリテーションを学ぶのか?
https://www.brush-go.com/single-post/2017/11/27/universityclass
一回目の授業で一番盛り上がったのは「チームドローイング」です。
1人目は目、2人目は輪郭、3人目は口、4人目は体、などチームで一枚の紙を使ってまわし描いてひとつのオリジナルキャラクターを作ってもらい、各チーム全体に発表してもらいました。
ネーミングの由来やキャラクターの性格などもチームで共有しながらアイデアを膨らませていく中、面白いのは想定通りの最終形態には決してならないという点です。このワークは偶発生ワークショップで学んだものを元にやってみました。
授業スライド:千葉大学コミュニケーションデザイン 情報・思考を可視化する グラフィックレコーディング ワークショップ
二回目の授業で盛り上がったのは発散と合意形成の体験をしてもらう「デザインプロセス可視化」ワークです。
新しい記念日を作ろう!というテーマで最初は個人で、そしてチームでよりアイデアを深め最後にプレゼンをしてもらうところまで行ってもらいました。社会人の方も参加してくれていたので多様なメンバーでのグループワークになり学生にとっても刺激になったようです。
参加者49名に授業後アンケートもとった所、こんな感想も聞けました。
・あまり絵が描けなくても伝えやすい上、逆に変な絵からアイデアが生まれることもあってすごくよかった
・絵や図で可視化されることで同じイメージを共有でき同じ目的に向かいやすい」
・今まで議論をする時にニュアンスの違いがはっきりしないことがあったが、絵ならもっと明確になると思う
・思ったことを言葉のフィルターをかけず表現できる
・絵で伝えると言葉が完璧じゃなくてもいいのでよかった。人の意見をたくさん聞ける
・多種多様な人が誰でも簡単に理解を深めるためにも必要。などなど。
授業スライド:千葉大学コミュニケーションデザイン 対話を可視化するグラフィックファシリテーション ワークショップ
アイスブレイクでやった、相手を食べ物に例える他己紹介ワークも個人的には見ていて楽しかったです。メタ表現の練習になったのか、みんな頭を悩ませながらもコンセプトがしっかりした表現になってました。
2. なぜ学校で可視化の授業を実施するのか
長々事例を書いてしまいましたが、なぜ学校で授業やるのかというと「アウトプット→共有」を当たり前にしてコミュニケーションデザインをもっと教育の場で子どもたちに広めたいからです。
デザインを行う工程には全てコミュニケーションが発生します。そこで必ずこれらの工程をつなぐコミュニケーションデザイン(赤い矢印部分)が必要になります。
このコミュニケーションデザインの手法のひとつとしてグラフィックレコーディング・グラフィックファシリテーションが有効なのではないかと私は考えています。
現在の教育現場では情報のインプットが中心だと思いますが、社会に出て必要になるのは自分の思考を伝え、人と対話をしながら物事を進めていく力です。これはどんなデザインやものづくりにおいてもどんな行動や仕事にも必要になっていくと私は考えています。
「私」と「対象物(暗記やテスト)」で終わってしまう世界を、「私」と「あなたたち」で何かを生み出す教育の新しい世界を作りたいのです。その共通言語の橋渡しができる可視化の力をより多くの子どもたちに伝えていきたいです。
毎回授業する度にパワーや新しい視点を学生からもらえて楽しいから続けている、という単純な理由もありますが(笑)
3. 可視化授業の今後の野望
小学校で授業をしてみたいです!チューブグラフィックスの木村さんは東北の小学校でインフォグラフィックスを中心としたグラフィカシーの授業を行ってるそうですが、小学生たちの浸透の早さに聞いただけで驚いています。授業後1年ぶりに学校に行き小学生が数人で観察しながら描いてる(?)ところを発見した木村さんが「何をしているの?」と声をかけたら、その子たちは「見える化だよ〜!」と答えたそうです。これ、すごくないですか!彼らの中では「表現して伝える」が当たり前になっているんです。
社会人より大学生、そして高校生中学生小学生と子どもになるにつれさまざまな抵抗や自分で張ってしまう線引きがない分描いて共有の世界観が浸透しやすいのかなと思います。私も小学生で可視化の授業をしてみて、より新しい教育の形づくりや見える化の浸透に向けた活動を来年はしてみたいです。どうやるのかはこれから作戦考えます。。!
最後まで読んでいただきありがとうございます!グラレコを活用した「見える化」教育活動をしているのでよかったら他の記事も読んでもらえたら嬉しいです🙏