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「道」 〜記憶と生きがい〜

時として記憶は、思いがけない形で私たちの前に立ち現れる。ある日、「道」という一つの漢字が、遠い日の合唱曲へと私たちを誘う。声を枯らして歌っていた青春の一場面が、鮮やかな臨場感とともによみがえってくる。それは単なる追憶ではない。過去の自分との深い対話の始まりだった。

なぜあれほどまでに必死だったのか。その問いは、記憶の層をさらに深く掘り下げていく。するとそこに、不安と期待が織りなす若き日の感情の風景が広がっていた。そして気づく。あの熱量は、未来の自分へと届けようとしたメッセージだったのだと。時を超えて、私たちは自分自身と対話を交わしていたのだ。

そして今、この瞬間に生きる私たちもまた、同じように不安と期待を抱えている。全力で生きようとする意志は、時を経ても変わることはない。それどころか、この気づきこそが、私たちの生きる力の源泉となっているのではないだろうか。

記憶は過去を映す鏡であると同時に、現在を照らす灯火でもある。それは私たちに、生きることの本質的な真実を語りかけてくる。不安と期待という両極の感情の間で揺れながら、それでも前に進もうとする姿。その必死さこそが、実は私たちの「生きがい」そのものだったのかもしれない。

時を超えて響く歌声は、いつしか生きることの意味への深い了解となって、私たちの心に静かに宿っている。記憶は過去と現在、そして未来をつなぐ糸となって、人生という大きな物語を紡いでいく。その営みの中に、私たちは確かな生きる意味を見出していくのだろう。


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