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”光る都”のタクシー
フランスはモードの国。たとえシャンゼリゼ通りに犬のフンがコロコロ落ちていても、いまだに道路が凸凹で車椅子の人にとっては走りづらいだろうと想像できたとしても、フランス語が話せないとまともに接客してくれなかったとしても、あからさまなアジア人差別があるところだとしても、フランスはいつも個人の自由にのみ支配された国。私はそう思っていた。
女性の権利が低かった時代があったことは知っていたが、この映画を観るまではそれほどまでにひどかったとは思わなかった。
2022年に公開されたフランス映画『パリタクシー』、運転手と介護施設に向かうマダムとのコミカルなやりとりの合間に、マダムの過去とかつてのフランス社会が明かされる。
まだ観ていない方のためにネタバレはしないでおくが、この映画を理解するために少しだけ書かせてほしい。
こちらはフランス政府のウェブサイトである。
「既婚女性の地位は未成年者と同様だった」と書かれている。
フランス語が読める方はぜひ原文で、読めない方は翻訳を使って読んでみていただきたい。
かつてのフランスでは既婚女性は銀行の口座を開設するのに夫の許可が必要だった。それ以外にも様々なことで夫の許可を必要とした。
ひどいDVにあっても離婚もできなかった。
それが「チーズの国」の現実であった。
しかしフランスはひどい国であるばかりではない。それはどこの国も同じで、良い国だと言われる日本だって住んでみればいろいろなことがある。私のような障害を持つ人にとっては、むしろ住みにくいと感じることの方が多いような気もしている。
『パリタクシー』に出てくるフランスの1950年代は、特に女性にとっては暗黒の時代だったに違いない。しかし、そこだけを切り取ってフランスは女性に優しくないとか、差別をする国だなどと思ってしまうのは危険だ。
映画を観ていると、主人公のように、強くてお洒落でエスプリの効いたパリジェンヌになりたくなる。あんな目に遭っても、ユーモアを忘れず、そして最後まで自分の意志を貫く、そんな女性に憧れる。
原題は Une bell course(美しき道のり)である。主人公のマダムと、タクシー運転手との”最後の美しい道のり”をぜひ観ていただきたい。
※チーズの国(Le pays du fromage)
フランス語の文章は、単語の繰り返しを良しとしないので別の単語に言い換えることがよくある。「チーズの国」はフランスを指す。
また、タイトルの「光る都(la Ville lumière)」とはパリを指している。
ちなみに日本は Le pays du Soleil levant 日出ずる国 である。
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