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納豆と風呂

母が納豆嫌いだと知ったのは、父が他界してしばらく経った頃、はっきり覚えてはいないが今から5~6年くらい前だろうか。少なくとも、父が生きていた頃にはそんな話は聞いたことがなかった。同じ頃、実はレバーも嫌いだったということも知った。大変な驚きだった。テーブルには普通に納豆が並んでいたし、頻度だって少なくはなかった。レバーもごく普通に食べていた。

どうやら我慢して食べていたようなのだ。母は障害を持つ私が将来どんなところに行っても何でも食べられるよう育てた。おかげで私は苦手な食材があっても絶対に口にしないというようなことはない。美味しいとは感じなくてもとりあえず何でも食べられる。そんなふうに育てた手前、親が苦手なものを食べないのは良くないと「まずい!おいしくない!」と言いながら食べている。

今日、ひょんなことから、実は私は風呂が嫌いと言った。てっきり母は知っているものと思いきや、目をまん丸くして私の顔をジッと見た。あまりにジッと見ていたので「え?」と言うと「知らなかった!」と彼女は答えた。


風呂できれいになる、上がった後はさっぱりする…というのは良いが、今より動けていた頃から風呂は苦痛だ。立ったり座ったり、転ばないように細心の注意を払ったり、湯船につかってぐったり疲れるわ、そこから上がらなくてはならないわ、介助を受けるようになってからはケガをしないようにとか、体勢が辛いとか、人に気を使ってとにかく疲れる。「人に洗ってもらって良いね」なんて言ってくる人がいるが、なんと無神経な言葉だろうと憤慨してしまう。上がってからのボディケアや着替え時間がかかるし、これからの季節は風呂場から出てからすぐに身体が冷えてくる。
ゆったり、のんびり、バスタイム♪ なんていう楽しみは私にはないのだ。

今夏「風呂キャンセル界隈」という言葉がSNSのトレンドワードに挙がっていた。非障害者にとっても風呂はシンドイらしい。
良かった、私だけじゃなくて。でも、私はキャンセルしないよ…

それにしても、生まれてからずっと共にいる親子でも、知らないことはあるものだ。
それだもの、人と人が分かり合うのは難しい。

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