アブダビ子供図書館-自由と学びを与えるソーシャルな空間デザイン
アブダビにある子供図書館は、子供達が好きな場所でリラックスしながら読書を楽しめる空間を提供しています。
この図書館に初めて入館した時に「なんて心地良い場所なんだろう」と従来の図書館の概念を覆されたのです。
図書館とはそもそも静かにしなければいけない場所で、床に寝転んだり動き回るような子供は入館を断られるし、何度も注意されるような子供は途中退場になることもあると思います。
本来は誰もが利用できる学びの共有スペースなのに、とても堅苦しく利用者に制限をかけてくる場所。それが唯一図書館のデメリットでもありました。
けれどもこのアブダビの子供図書館はそんなイメージを180度変えたような自由な空間でした。
ではいくつかこの図書館のコンセプトを挙げてみましょう。
①遊びをメインにしたエンタテイメント性のある空間デザイン
②椅子ではなく床やソファなど自由なスタイルで読書ができる
③空間に仕切りがなく回遊性が高いので、
興味のなかった分野の本にも偶然出会える
④実験ラボやワークスペースが見える化されているので
子供の好奇心を引きやすい
⑤個室空間に“隠れ家”のコンセプトが盛り込まれている
⑥そもそもそんなに静かじゃない
ざっと挙げるだけでもこの図書館は「本を読ませる場所」ではなくて
あくまでも「本が読みたくなる場所」になるように、
子供が主体性を持ち自主的に本を手にできる設計になっているんですね。
そしてこのコンセプトそのものが、
子供達にこれから必要なソフトスキルの力を育む場にもなっているのです。
リラックスして楽しい気持ちになると人は自然と
“何かを学びたくなる”生き物です。
ルールで縛らない自由な空間で、子供達は好きなように本を読んだりお友達と話したり、遊んだりもします。
これはまさに子供版のコーワーキングスペースと言えるでしょう。
同じ場所で一人一人違う事をしているけれど、
決して一人じゃない、むしろ他人のオーラや動きが視界に入ることで
よりポジティブな自制心(モラル)が働くわけです。
子供を子供扱いしすぎない。
幼児期の子供はルールに従わせるよりも、野に放つ方が親でも見つけられな
い宝物をいとも簡単に見つけてくるものです。
「遊びが仕事で仕事が遊び」なんて言葉を昔聞いた記憶があります。
私はそのどちらも正解なんじゃないかなと思っています。
ユーモアのないコミュニケーションから有能なクリエーターが
生まれてこないように、正しさよりも「楽しいか楽しくないか?」
この判断基準を子供自身に委ねる環境設計は、特に教育の現場では必須になる課題ではないでしょうか。
子供が自分の自由意志を尊重できるように、私達大人の固定概念が子供のそれ(自由意志)を傷つけたり邪魔したりしないようにデリカシーを持って未来ある子供達と接して行きたいものですね。
“学ぶ”をいつでもどこでも、どんなスタイルでも。
“自分の時間は自分で決める”
そんなアブダビの子供図書館のコンセプトに一人でも共感して下さる
方がいたら嬉しいです。
グレイス