刻印
わたしの体には、印がある
それはもう物心ついたときにはあった
普通には見えない位置にある
それは、わたしとしたひとだけが知っている
そもそもわたしは性への罪悪感が強かったから
罪の共有みたいな気がしていた
けれどそれを見られる恐怖は
小学校低学年の時点でもうあった
痴漢にあったとき、
「見られてしまった」みたいな意識があった
今も考える
あのときの痴漢は
わたしの印を覚えているだろうか、と
つきあっていたひとに浮気を疑われたとき
この印が踏み絵みたいに使われた
そんな風だったから
おいそれと誰かを受け入れることができなかった
そうやって淫乱は封じられた
罪の刻印
ふいに浮かんだ言葉がよぎったのち
「魔女だ」
そういわれて焼印をおされたイメージが浮かぶ
ヒリヒリ、どころではなかった
自分の皮膚がジュワっととけて鉄にはりつき
べろりと捲れた
ただのイメージ
だけど墨汁みたいにからだのどこかが黒く滲む
彼に、
痴漢のひと覚えているかな?
と聞いたら
覚えているかもね
といった
怖い
といったら
だいじょうぶ
という
いつも通りの彼だった
わたしが負っている傷を知っている
けれど彼はひとの傷を痛がったりはしない
なぐさめたりもしない
ただ見ていてくれる
話を聞いてくれる
何も変わらない彼にわたしは救われる
この印の場所に何かある
そういうYouTubeをみたあとのこと