【書籍紹介】世界の取扱説明書 ジャック・アタリ
著者 ジャック・アタリ
本を選ぶとき、どんな著者かというのは重要な要素のひとつですが、この本は著者だけで決めました。この知の巨人、実務の巨人はどのように世界を捉えているのでしょうか。
ジャレド・ダイアモンドは「病原菌・銃・鉄」で、歴史を、地理的な要素が決定づけたように説明しています。ユヴァル・ノア・ハラリは「サピエンス全史」の中で、認知、農業、科学をキーワードに歴史を説明しています。
子供の頃、歴史と言えば、時系列順に出来事を覚えていく作業でしかなく、面白いと思いませんでした。しかし、大人になり、こうして歴史や世界をどう理解していくかという課題に触れると、自分が世界を理解したような気持ちになります(笑)。
ジャック・アタリはどう説明するのか、ワクワクがとまりません。
3つの秩序
ズバッと切っています。帝国主義とか、資本主義とか、そういうことではなく、要は3つの秩序であると。
儀礼の秩序から帝国の秩序になり、11世紀以降、世界は商秩序に移行しているとしています。
商秩序 「形態」と「心臓」
これが定義です。
司祭や将軍にかわって新たな支配階級となった商人たちは、自らの商業的、政治的な自由を得るため、多少の汚職があったとしても、法律が整備され、軍備が整っており、イデオロギーを流布するのに秀でている都市に自然と集まり、そこが「心臓」となりました。「形態」と「心臓」については、歴史的にどこが「心臓」で何が商行為を支配していたかをたどると理解が深まっていくように構成されています。
第1~第9の「形態」と「心臓」
歴史上の第1~第9の「形態」と「心臓」が列挙されていきます。そして、一つの「形態」と「心臓」ごとにひとつずつ法則が導き出されていきます。
第一の「形態」と「心臓」:ブルッヘ
第二の「形態」と「心臓」:ヴェネチア
第三の「形態」と「心臓」:アントウェルペン
第四の「形態」と「心臓」:ジェノヴァ
第五の「形態」と「心臓」:アムステルダム
第六の「形態」と「心臓」:ロンドン
第七の「形態」と「心臓」:ボストン
第八の「形態」と「心臓」:ニューヨーク
第九の「形態」と「心臓」:カリフォルニア
ひとつの「形態」と「心臓」につき、ひとつ法則が導きだされます。例えば、第五のアムステルダムからは、第五の法則として『「心臓」の成功条件のひとつは、外国からの人材、商品、アイデアに開放的であることだ』と定義しています。
心臓の周辺には心臓のライバルになりうる「中間」があり、さらにその周囲には搾取の対象となる「周縁」があります。心臓はあらゆる手段をつかった中間と周縁を支配しますが、危機に対応しきれなくなったとき、別の心臓にその座を譲ります。そして、また新たな心臓が商秩序を支配します。
2050年ごろ
これまでの「形態」と「心臓」の捉え方、導き出された法則、現在の環境などから、今後を予測していきます。
一体次の心臓はどこなのか、答えは簡単にでてきません。これ以上説明するとネタバレになるので止めておきますが、世界の現状を観察したときの脅威、各地域の強み、弱みが予測を複雑にします。一体リーダーシップをとれる都市がどこにあるのか。イアン・ブレマーの著書「Gゼロ後の世界」にもあるように、もはや世界の責任を背負える一つの国はないのかもしれません。また、気候変動、紛争の激化、あらゆるものの人工化が人類の脅威となります。一体人類に未来はあるのでしょうか。
最後、これまでの法則、現在の環境、未来予測に基づき、かなり厳しい要求ではあるものの、こうすれば明るい未来はやってくる、という提言を示して完結しています。
感想と学び
世界で最も信頼できる未来予測家の提言として、鬼気迫るものがあり、メッセージに迫力を感じました。これは純粋に内容に対する感想です。
ビジネスマンとしては、こういった抽象度の大きい課題を取り扱っている著作は、ビジネス環境分析の刺激物となります。日常、自分のいる業界の常識、歴史的経緯に則って、もっと言えば、上司や先輩に教わってきたことの影響下でビジネスプランを考えがちです。しかし、細かい事実をもう一度積みあげ、どのように変遷してきたかを自分なりに考えてみれば、ジャック・アタリのようにはいかなくても、今までにない切り口があるのではないか、ビジネスを変えられるのではないか、と思ってしまいますね。かなり偉くなったような気分になります♪
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