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【はじめての広報・PR】 やっぱり「メディアに取り上げられたい!」なら “報道分析” を

こんにちは。ごさとです。
今回は広報・PR担当として、プレスリリースの書き方と同じくらい、もしくはそれ以上に身に付けておきたい基礎力の1つ “報道分析” についてお届けします。

『はじめての広報・PR』では “コーポレート・ストーリー”“コンセプトモデル” また “危機管理広報” などを紹介して、カギカッコつき「PR」(マスメディアを対象とした報道獲得)にとどまらない “Public Relations” の可能性や考え方をお伝えしてきました。

ここで改めて、広報・PR担当にとって重要なステークホルダーであるメディアとの向き合い方や報道の「型」を整理していきます。

● 「メディア」と一括りにしない

よくクライアントから聞かれる言葉として、

「役員を『プロフェッショナル』や『情熱大陸』に出せないですかね?」
「このネタ『WBS』や『日経新聞』に出したいんですけど?」

など「社内の関係者が普段から視聴している番組や読んでいる新聞に登場させたい=広報担当として分かりやすい成果を出したい」があります。

しかしこの考えはメディアに対して失礼にあたるので注意が必要です・・・!

例えば『プロフェッショナル 仕事の流儀』の番組ホームページを見ると、下記のように番組説明がされています。

仕事の流儀には、その人の生き方が現れる。
「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、超一流のプロフェッショナルに密着し、その仕事を徹底的に掘り下げるドキュメンタリー番組です。

また『情熱大陸』の公式Facebookページでは、次のように述べられています。

日曜の夜のひと時、明日から始まる一週間を前向きに生きるパワーを感じて貰うためのテレビドキュメンタリー番組です。 毎週、文化・スポーツ・芸能などあらゆる分野で第一線を走っている“旬の人物”にスポットをあて、「情熱大陸」ならではの取材でその人の素顔に迫ります。

「人物」を入口にしているので、もしかしたら同じような「ドキュメンタリー」番組として視聴しているのかもしれませんが、その「方針=視聴者に届けたい想いや姿勢」が違っています。

・『プロフェッショナル』は「仕事を徹底的に掘り下げる」ことから「その人の生き方」を見出そうとする。
・『情熱大陸』は「第一線を走っている“旬の人物”」を取り上げ「素顔に迫る」ことで「前向きに生きるパワー」を届ける。

過去の記事でも述べましたが、メディアは何でもかんでも “ネタ” を扱うわけでなはく、番組や記事の先にいる “視聴者や読者” に情報をコンテンツとして提供するビジネスですので、扱う方針に合致しないものを提供されても「なんで?」と困惑してしまいます。

それを無視して「自分たちの伝えたいこと」だけを押し付ける(「売り込み」という言葉を使うクライアントもいました)することは、広報・PR担当としてマナー違反になってしまいます。

● 日々の “モニタリング” で「メディア知見」を積み重ねる

広報・PR担当の代表的な業務に「モニタリング」があります。

TV・新聞・雑誌・業界専門媒体など、組織として押さえておくべきメディアに目を通し、自分たちの業界に影響しそうなことはないか、競合の動向が取り上げられていないかなど、どのような報道がされているか毎日チェックし、必要があれば関係者にレポートするという仕事です。

「記事を切り抜いてクリップ留めする」という行為から「クリッピング」とも言われたりします。

「購読する予算が・・・」という場合も、多くのメディアがホームページで事前に番組情報を掲載していたり、扱った内容をタイムリーにアップしていたり、メルマガ登録すると主要なニュースのタイトルやリードが読めたりするので、それらをヒントにリサーチをかけることもできるのでオススメです。

僕も全国紙、ビジネス誌(経営全般からESG、国際、組織や人事、テクノロジーなど個別具体的なものまで)、業界専門媒体(主に医療や福祉)など、30ほどメルマガ登録やブックマークをしてチェックしています。
(個人として購読しているものもあります)

複数のメディアに目を通すことで、同じニューステーマを扱っていても見出しやリードの書き方の違いで、各メディアごとに「どんなことに注目しているのか=視聴者や読者に何を伝えようとしているのか」が見えてくるはずです。

例えば国際ネタでも、ブレグジット〜トランプ大統領の就任前後で比較すると「自国主義」や「アメリカ・中国・韓国など日本への影響が大きな国」に関する扱いが増えるなど、経年での構成変化もその時々の世の中の潮流やメディアの関心を把握するきっかけにできます。

・・・新卒、転職や異動で広報・PRに初めて携わることになった方は、この業務を「苦行」のように感じてしまう場合もあるようなのですが、がんばって取り組んでおくべきです!

その理由は、次に説明する「ストーリーの型」を学ぶチャンスになるからです。

● 個々の報道の “論調・構成分析” で「型」を習得する

モニタリングと一緒に意識して行いたいのは、その記事がどのような立場で書かれているか、構成や展開、取材されている登場人物などを因数分解する「論調・構成分析」です。

(1)見出し
(2)副題
(3)リード
(4)個別エピソード
(5)課題解説
(6)ソリューション紹介
(7)締めの提言
(8)専門家の言葉
(9)著名人の言葉
(10)写真や図などの画素材
(11)グラフや表などのデータ

「ストレートニュース」と呼ばれる、プレスリリースから抜粋した100〜200文字程度の小さな記事ではなく、しっかりと取材された記事の場合、濃淡や全体のレイアウトで変動するものの、上記のような切り分け方で読み解くことができます。

僕が最近「良い記事だな」と思った事例をもとに解説していきます。
(購読していない方は全文読めないかもしれません。。)

これは常時医療が必要な子どもを育てている親御さんの「働き方」や「支援の在り方」を提起する記事で、通常このようなテーマが扱われる「医療面」や「生活面」ではなく「女性面」に掲載され、現代を象徴する扱い方であると感じました。

(1)見出し (2)副題
「働き育てる」や「時短」「テレワーク」など、最近よく目にするワードを入れながら、子どものケアと働くことやキャリアをどう実現するか?という課題とソリューションを端的に示しています。

(3)リード
「医療的ケア児」の概要とあわせて、母親が「キャリアの継続を諦める」「子どもの預け先がない」といった当事者が直面する課題を提起しています。

(4)個別エピソード (10)写真や図などの画素材
もしかすると一般の人には馴染みのない、想像が難しい課題を身近に感じてもらえるように、実際に医療的ケア児であるお子さんを育てながら働いている家族が登場し、ケアの実態やワークスタイルを紹介しています。
またお子さんも含めた家族の写真も掲載されています(とてもセンシティブで、勇気あることだと思います)。

(5)課題解説 (8)専門家の言葉 (11)グラフや表などのデータ
厚生労働省の調査を引用しながら医療的ケア児を定量的に捉えるとともに、協議会、施設、NPOなど支援に携わっている多様な専門家の取材から得られた言葉を引用しながら「受け皿がない」「社会人として築いたものを捨てる」「働きたいという思い」など課題を具体的に浮き彫りにしていきます。

(6)ソリューション紹介 (7)締めの提言
医療的ケア児を受け入れる施設やサービスとともに、職場の制度や今後予定される法改正なども含めて「柔軟に働ける選択肢」が求められると締め括られています。

(7)締めの提言 (9)著名人の言葉
この記事を執筆した記者としてこの課題をどう受け止めたのか、また当事者の1人でもある政治家が登場し、法整備の必要性を強調しています。
紙版では本論を補足するように同じ面にレイアウトされているのですが、Web版では「関連記事」として別ページの扱いになっています。

プレスリリースの書き方についての記事でも触れましたが、報道には受け手を想定した「ストーリーの型」があります。

1つひとつの記事や番組に触れるときも、媒体・面・コーナーなどの方針や特性を意識しながら読み解いていくこと。

「自分の組織を登場させるとしたら、どの立場で、どんなことを伝えられるか」

型に当てはめて日常的に考え続けることで、メディアに提供する情報の扱い方のコツが掴めるようになるのではないでしょうか。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
皆さんの参考になれば幸いです。

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