【はじめての広報・PR】 インターナルコミュニケーションが “組織の総合力” を高める
こんにちは。ごさとです。
これまで10回にわたり、広報・PRに携わる方、これから仕事にしていきたいと思っている方に向けて書いてきた『はじめての広報・PR』も最終回です。
今回は、国際的に人道支援や医療活動を行っているNGOの会報誌より、広報アドバイザーの立場として「COVID-19禍における危機管理と広報体制」というテーマでインタビューを受けまして、そこでお話ししたことをベースに「インターナル(組織内部の)コミュニケーション」についてお届けします。
会報誌とはいえ数万人の職員が読むものですので、襟を正してお受けしました!
今回も最後までお付き合いいただけますと嬉しいです。
Q 事故・事件・不祥事など不測の事態に直面したら?
A まずは一呼吸置いて、落ち着いてから事に当たりましょう。
(あまりにも普通すぎて恐縮ですが、、)
慌ててしまうと、大切な情報を聞き漏らしてしまったり、事実と見解を混同して物事を進めてしまったりと、後々につながる小さなミスを招きかねません。
「もしかすると、こういう可能性もあるのでは?」
関係者間で憶測や想像で話をするような場面も出てくるかもしれませんが、お互いが “ファクトチェック” を心がけ、思い込みを排除して情報に接することが大切になります。
Q 関係者がきちんと情報を共有してくれるでしょうか?
A 有事の際に何を優先すべきか、組織と個人の行動規範が試されます。
何か問題を起こしてしまった際に、当事者が言い出せずに対応が遅れてしまうことはママ起こりうることです。
組織によっては始末書を懲罰的に書かせる場合もあるかもしれません。
「何のために『始末書』を書くのか」
本来であれば、
・発生した事案に関する事実関係を明らかにして
・原因を特定したうえで
・再発を防止するための方法に言及する
このような書類であるはずですが、その目的が形骸化されているからこそ報告を躊躇してしまうのではないでしょうか。
組織のなかで、悪い情報も包み隠さず言える “信頼関係” や “心理的安全性” を築くようなコミュニケーションが日頃からできているのか、普段から正しく反省やデブリーフィング(※)が行えているのか。
今一度、振り返ってみる機会にしてはいかがでしょうか。
※「デブリーフィング」とは軍隊で行われる作戦の結果報告や振り返りのことで、上手くいったこと、いかなかったこと、その原因について分析します。
下記もご参照くださいませ。
Q 危機管理体制で一番重要なことは?
A 組織内コミュニケーションの活性化と横のつながりの強化です。
先ほども述べましたが、有事の際には日頃から積み重ねてきた “組織の総合力” が試されます。
何か問題が発生したときに組織としてどのように対処するのか、各部門ではどのように行動するのか、方針を隅々まで伝えて納得を得られないと、現場で迷いが生じるだけでなく「私は聞いていない」など対立構造を生み出しかねません。
何か問題が起きたとき、TVの報道では出退勤する社員を歩きながら問いただすシーンが放送されますが、その場で方針を知らない人や組織の対応に不満を持っている人がマイクを向けられたらどうなるでしょう?
また現代はSNSなどインターネット上で匿名で告発をしたり、不満を明かすことも容易になっています。
さらに個人を特定しようとする人たちもいるので、遅かれ早かれ第三者が議論に加わることで事態がエスカレートしてしまうかもしれません。
そうした状況に陥らないために不可欠なのは、普段からお互いに声をかけ、顔見知りになり、話しあえる雰囲気や文化をつくる “心がけ” ではないでしょうか。
Q 準備ができていないときにTVや新聞の取材が来たら?
A 取材は来るものと想定し、共通認識を持って対応しましょう。
【3つの心構え】
①「聞かれなくても言うこと」を用意する
②「聞かれたら言うこと」を頭に忍ばせておく
③「聞かれても言わないこと」を統一する
特に③の「聞かれても言わないこと」は必ず守るべきです。
個人情報にかかわることなど、自分たちの発言によって特定の人や外部の組織が追及を受ける事態になった場合、さらなる責任問題に発展する危険性があります。
また「自分で受け答えせずに、広報部門を紹介するので所属と質問を聞き取る」などのルールを早期に通達することも考えておくべきでしょう。
Q 情報を公開する責任と、関係者を守る責任、どちらを優先すべき?
A 「目的は何か?」を第一に考えましょう。
事業が多岐にわたり、BtoBやBtoCだけでなく、BtoS(Society)を意識せざるを得ない組織の場合は、ステークホルダーへの説明責任を果たさなければならないシチュエーションも容易に想像できます。
COVID-19の場合は「公表するのか、しないのか」という単純な構図で考えるのではなく、濃厚接触者の範囲や感染拡大の可能性、事業継続への影響など、様々な観点で状況を見定めたうえで、一度「情報を扱う目的」に立ち返ることが大切です。
● 改めて組織内コミュニケーションを見直す機会に
インタビュー終了後、制作担当の方が声をかけてくださったのですが、
「『危機管理』という言葉から、ドライでビジネスライクなインタビューを想像していたのですが、日頃からの組織コミュニケーションや横のつながりなど、とてもウエットで『自分の仕事でもできることがあるのでは』と考えさせられる内容だったので、良い意味で裏切られた気分です(笑)」
まずは1人でも、意図が伝わり、意識を変えるきっかけとなったようで、とても嬉しく思いました。
危機管理だけでなく、すべての事業活動に当てはまると思っていることですが、例え素晴らしいビジネスモデルが構築できたとして、非の打ち所がない戦略が描けたとして、それを実現するのは、そこで働く1人ひとりである、と。
だとすれば、組織にかかわるコミュニケーション活動は、最終的にはインターナルに行き着くのではないかと思うのです。
そこにコミュニケーションのプロである広報・PR担当として、どのように貢献していくべきか・・・これは読んでくださった皆さん自身で考えていただけると有り難いです。
● 最後に御礼と今後について
もともと『はじめての広報・PR』を構想していたときから「10回くらいで必要最低限の内容をコンパクトにまとめた方が、振り返る場合にも読みやすいかもしれない」と考えて構成を組み立てていたこと。
また僕自身がPRコンサルタントとして仕事をしていくなかで実感したこととして「しっかり身につけるべき基本の考え方は、実はシンプルなものだ」ということもあり、ギュッと凝縮した形にまとめました。
もちろん技術の進歩や新しい理論の登場など、スキル向上のためにはアップデートが欠かせないものと思います。
その母体となる “基本OS” のような意味合いで、広報・PRで押さえておきたい「基本の型」をお届けしてきました。
“スキ” や “フォロー” をいただくたびに「こんな人に読んでもらえるんだ」と発見と励みになり、書くのが楽しみになりました。
この場を借りて御礼申し上げます。
本当にありがとうございます。
今後は「経営企画としての経験を振り返るnoteを書こうかな」とぼんやり考えており、また構想から始めることにしました。
それまではゆるりと、NPO関連や個人で勉強していることについて書いていこうと思います。
今回も最後までお読みくださりありがとうございます。
皆さんの参考になれば幸いです。
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