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営業はプロジェクトマネジメント力(第3章~最終章/100円)

―3章 プロジェクトの推進―
 
私が営業活動を行ってきた中での経験になりますが、実は2章の内容が最も大変な山場だと思っております。2章の活動はゼロをイチにするような活動だからです。それに対して、ここからはその創り出したイチを育てていき、大きくしていく活動になりますので、ここまでのプロセスが盤石になっていれば、この先も大丈夫です。
1つの営業活動全体を10としたとき、ここまでできれば既に6~7は既に乗り越えたも同然です。せっかくお客様に情報を開示していただいた大切な案件です。その課題解決に向けて、引き続き頑張っていきましょう。
 
打ち合わせに向けた事前準備をする
自社が推進役となって進めていくところまでたどり着いたここから先は、DMU全員と行う定期的な打ち合わせが主な活動になっていきます。そのため、ここではその打ち合わせに向けた事前準備としてすべきことを3つご紹介します。営業において、事前準備は非常に重要です。「事前準備8割、当日の瞬発力2割」というのが私の考えです。
さて、1つ目は、DMUのメンバー一人一人と面談をし、各人が抱えている悩み、疑問、リスク等の聴き取りを徹底して行い、寄り添うということです。以前に打ち合わせを行っているのであれば、前回の打ち合わせからの心境の変化も大事な確認ポイントになります。
聴き取りの際に特に気を付けていただきたいことは、できる限りマイナスの感情を吐き出してもらうということです。営業担当者として、前向きな声を受け止めたい気持ちはよくわかりますが、ここは我慢です。できる限り、プロジェクトを進めていくことに対する疑問点やリスクとして考えている不安点等を共有してもらうようにしましょう。
もし、お客様からマイナスの感情が出てこなかった場合、私はあえてこちら側から考えられる不安やリスクを提示することを心掛けています。なぜマイナスの内容が重要なのかは後ほど説明します。
2つ目は、商談のシミュレーションを徹底して行うということです。これは、1つ目で申したお客様が抱える疑問点や不安点を踏まえた上で実施することが重要です。シミュレーションという表現に聞きなじみがない場合は、ロープレという表現に置き換えても大丈夫です。
シミュレーションを行う際に考えてほしい代表的な項目としては、その打ち合わせで到達したいゴール、打ち合わせ参加時のメンバーの認識や関心事、話し合いたい論点、その論点を議題に出した際に想定されるメンバーの反応、その反応に対する自分自身の反応(対策)等です。
これらについて、できる限り場合分けを行いながら、自分の頭の中でシミュレーションを行うことで、当日の瞬発力に頼る部分を最小化することができます。
また、商談のシミュレーションを行う際に私自身も気を付け、よく後輩に指導していたこととして、最悪のケースを想定してシミュレーションを行うということがあります。
ついやってしまいがちなのが、事前に商談のシミュレーションをする際に、お客様の反応が自分に都合の良い方向に行くということを前提に考えてしまうということです。
最悪のケースというのは、例えば、お客様に質問をした際に教えてもらえなかったケースや、論点を投げた時に想像以上に後ろ向きの反応を示されたケース等です。
おそらくですが、事前に準備をする中で、参加者の意見が分かれそうな部分、全員が気にするであろう部分、反論が来そうな部分等は感覚的にわかるはずです。そこに対して、時間が許す限りで構いませんので、最悪の反応が返ってくることを想定し、それに対してどのように対応するのかというところまで踏み込んで準備をしてください。ここをあいまいにしたまま商談に臨んではいけません。
そして、言わずもがなですが、このシミュレーションは一人で行うのではなく、当日一緒に参加してくれる上司や同僚がいれば、彼らと共に行うことをおすすめします。上司や同僚には最高の支援者になってもらいましょう。
最後に3つ目ですが、提案資料の作成です。提案資料を作成する際には、これまでの準備も踏まえ、あえて文字化して伝えたい部分と、口頭のみで留める部分とを区別します。
文字化することで、打ち合わせ終了後にも思い出しやすくなる、打ち合わせに参加していなかったメンバーにも共有がしやすくなる等のメリットもありますが、議論の活性化を阻害することも多々あったため、私は必要以上に文字化することはしていません。
その代わり、打ち合わせ終了後の議事録を充実させています。議事録についてはできるだけ細かく文字化して残すようにしています。
 
当日のファシリテーションをする
さて、いよいよDMUが一斉に集まる打ち合わせの場です。この場で最も発揮する力が、議論を進めていくファシリテーション力です。ファシリテーションというと身構えてしまう方もいらっしゃると思います。私が在籍しているグロービス経営大学院でも、「ファシリテーション&ネゴシエーション」という科目があるくらいですので、本来であればしっかり学ぶ必要がある分野ではありますが、本書はファシリテーションを説明する本ではありませんので、ここでは詳細は割愛します。
私が毎回のファシリテーションを行う上で重視していたことが4つありますので、その4つをご紹介します。私はこれらを行うことで、ほとんどの場合で問題なく議論の進行を行うことができています。
1つ目は、冒頭で前回までのおさらい、その場の設定理由、当日到達したい目標を全員に共有するということです。当然ですが、これを行わないと参加者の認識がそろいません。
私たち営業担当者は、当日の打ち合わせに向けて何日も前から事前に準備を重ねておりますが、お客様はそうではありません。お客様には他にやることが膨大にあり、前回の打ち合わせ以降、その案件について考えていた時間はほんのわずかだと思ってください。また、ほとんどの場合で当日の5分前、10分前まで別のことを考えており、この打ち合わせが終わった直後もまた別のことを考え始めるのです。
これくらい、私たちとお客様との認識には大きなギャップがあります。このような理由から、冒頭に認識のすり合わせを行うことが非常に重要なのです。
2つ目は、参加者それぞれの関心事(特に疑問点や不安点)や所有している情報を議論の中に論点として出し、全員でそれらを共有し、情報のズレを是正するということです。
3章の「打ち合わせに向けた事前準備をする」というパートの中で、事前にDMUそれぞれから疑問点や不安点のようなマイナスの感情を吐き出し、共有してもらうことが重要であると記載しましたが、ここでようやく本領を発揮します。このタイミングで彼らが抱えていた疑問点や不安点を全て全員と共有するのです。共有する際には、情報源を明らかにしないことがポイントです。あたかも、自分自身が思いついたという体裁で臨みましょう。もちろん、情報源を明らかにすることで議論が活性化するケースもありますが、「あの人はそんなことを気にしているのか…」と他のメンバーに思われることを嫌がる人も存在するためです。こうして、事前に聴き取りをしていた疑問点や不安点を議論に投げ込み、全員で話し合いをすることで、マイナスの感情が払しょくされる可能性が高まります。
そうすることで、当の本人からも「そうか、○○さん(私たちのこと)は自分が以前相談した疑問や不安を覚えていてくれて、それをみんなで話し合う場を作ってくれたんだな。ありがとう。」という感覚を持っていただけ、私たちへの信頼に繋がります。
3つ目は、論点を絞り全員で深めていくということです。
説明してきた通り、議論の場においては全員が持つ関心事や情報を出し切ることを目指しますが、全てについて議論をする時間は取れません。その中から優先すべき論点を決め、それについての意見交換を深めていくことが大切になります。その場のメンバーと優先順位付けをして、議論をしていきましょう。
最後の4つ目は、議論の中で出すことができた結論と、そうでない結論を整理し、共有するということです。結論が出た部分のみならず、結論が出なかった部分についても触れるというのがポイントです。結論が出なかったからと言って、触れずに商談を終わらせてはいけません。むしろ、結論が出なかった部分のほうが重要です。ここについては、今後どのように進めていくのかを確認するようにしましょう。次回までにお客様の中で考えてきてもらうのか、それとも次回の打ち合わせの場で、再度全員で再度話し合うのか等です。
この際、なぜ結論が出なかったのかも把握しておくことが重要です。単に時間切れであれば次回の場で話し合えばよいのですが、情報が足りずに判断ができなかったということであれば、判断をするために必要な新しい情報を次回までに用意しておく必要があります。それらの情報を、誰が、いつまでに、どうやって集めておくのかを確認しておくことを忘れないでください。
最後に余談ですが、プロジェクトの打ち合わせを行う際には、毎回、冒頭に「第〇回」という回数をつけてみてください。回数を重ねるほど、メンバー同士の団結感が増し、そのプロジェクトに対する思い入れも一層強まっていくことでしょう。
 
打ち合わせ終了後のフォローをする
ここでは毎回の打ち合わせが終わった後のフォローについてお伝えします。議論が終わったからと言って気を緩めてはいけません。議論後のフォローとして私が実際に行っていたことを3つ紹介します。

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