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日本って本当に潰れないのか、、考えてみました。
こんにちは、八重洲リーマンです。
先日興味深い新聞記事を日経新聞で読みました。
記事を要約すると、
政府と日銀は現在、ドル円で160円台に迫る円安を止める為に量的緩和縮小の検討を進めている。これは円安による物価高で国内の景気が冷え込むのを避けたい思惑と考えられる
その為、日銀による国債の買入れ額を減らすことにより、国債の需給が緩み→価格が下落→金利は上昇→日米金利差が縮小→円安が落ち着くというシナリオを描いている
一方で日本のプライマリーバランス(以下、PB/政府の収支、税収で経費を賄えているかの指標)は70兆円の税収に対して歳出110兆円と40兆円の赤字(1992年度以降赤字継続中)。
赤字を埋める為に赤字国債を発行し、都銀を始めとした国内の機関投資家や個人が中心となり国債を購入し、それを日銀が吸収して、日銀の国債保有残高は589兆円(2024年3末)に達している。
つまり、金利が上昇すると日銀の国債の利払い負担、即ち更に赤字国債が必要となってしまう。円安を止めたいものの、国債の買い入れを絞ることはそう簡単にはできない、相反するジレンマを抱えている。
よって、まずはPBの黒字化を達成すべし
この記事を読んで、僕は、
「ああ。よく見る記事ね。コクサイね。赤字国債発行し続ければ国が潰れることはないんでしょ?」と読み飛ばそうとしました。
「国」のことだし、何だか遠い話すぎるので、思考停止しかけていたし、いつもは読み飛ばす記事です。
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が、冷静に考え直しました。
本当に何とかなるのでしょうか?
僕はこれまで10年以上金融機関に勤めてきました。
普通に、経済合理的に考えて、毎年赤字を垂れ流しているヒト(国)に対して、国債を発行する形で金を貸し続けられる理屈はどこにあるのでしょうか?
しかも、その赤字体質が改善する見通しは立っておらず、むしろ悪化を示唆する情報の方が多く耳にします。
少子高齢化、破綻する年金制度、順位が下がり続けるGDP、財政赤字、止まらない円安、イノベーション不足、政治家と官僚の思考停止等々。
常識的に考えたら貸した金が返ってこない未来しか見えません。
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かつて超優良企業だった企業の先行きが不安定なのにも関わらず、レピュテーションのみで金を貸しているような危うさを感じると言うか。
では何故、日本国債は発行・購入され続けるのでしょうか。
少し考えて、その答えは、「買ってくれる人がいるから」という禅問答の様な答えに辿り着きました。
そしてこの禅問答を理解する鍵となるのが、
日系投資家と家計資産(個人金融資産)というキーワードだと思っています。
前提条件
国の借金:1286兆円(2023年12末)
日銀の保有残高:576兆円 (2024年3末)
海外保有割合:6.7%(2023年12末)
個人金融資産:2141兆円(2023年12末)
という情報を念頭に置きたい。
なぜ、見通しが悪いのに国債が発行出来るのか。
売手と買手、それぞれの立場に立ってみよう。
日系投資家(国民)のマインド
日本国債であれば償還や借り換えを間違いなく政府がしてくれます。アルゼンチンやギリシャと違ってうちの国は数字に強いし、真面目だしな。
日本政府のマインド
日銀が買いオペで買ってくれる(日銀は法律で新発債を直接は買えないので、投資家からセカンダリーで)という期待感の下、プライマリーの国債を日系投資家(国民から運用委託されている)が買い続けてくれるだろう。
国債は償還される。国債は買ってもらえる。
この鶏卵ロジックが日本政府と引受手の大半を占める国内投資家の間で成り立っているからこそ日本は借金を重ね続けられます。
しかし、これは非常にトリッキーで不安定な信頼関係に基づいていると思う。
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何故ならこの関係性が成立している最大の理由は、国債の買い手の大半が日系投資家であり、「日本国債から逃げない」、「日本国債こそが安全資産」、「周りも皆買ってるし」と考えられているからだ。
これが例えば日本国債の保有者の大半が外国の投資家であれば、状況が悪くなればすぐに次の投資対象へ鞍替えしてしまう可能性が高い。そしてこれがユーロ圏であるギリシャで実際に起こったことだ。
もちろん国債の多くを購入している都市銀行も保険会社もバカではないし、過去20年で海外の案件やビジネスも加速させているので、何も考えずに購入し続けている訳ではないだろう。
しかし、日銀が自社が保有している国債を吸い上げてくれる「買い入れオペレーション」が成立することを信用してこそ、この取組に応じている。
では、鶏と卵のどちらが先に崩壊する可能性があるのか。
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僕は日銀が購入を続けられなくなるタイミングが先にくると思っている。
また、現にそのタイミングは記事の通り訪れかけているのではないかとも思っている。
日本は資源の多くを海外からの輸入に頼っている。もっと噛み砕いて言えば、海外との取引が無ければ日本国は立ち行かなくなるということは、誰しもが分かっていることだと思う。
石油が輸入出来なくなったら?食糧が輸入できなくなったら?アメリカとの関係が悪くなった場合の国防は?
つまり「海外に存亡を依存している日本国」という状況を捉えた場合、取引通貨としての「円の信認」は無視できないファクターとなる。
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分かりやすく言えば、円という集団が認められていれば、競争力のある価格でモノを仕入れられ(円高)、足下を見られていればふっかけられる(円安)。そうゆうことだ。
世の中には中央政府は輪転機を持っているから、国債を発行し続けられる、「国の借金は国民の黒字・利益」、借金が増えることは怖くないというロジックがあると聞いたが、それは他国との関係性を全く考慮していないように感じる。
円の信認という観点を踏まえると、輪転機という奥の手をちらつかせようものなら、即座に円は売られ、日本株も売られ、国債も売られ、金利は跳ね上がることになる。結果的に海外との取引があらゆる面で難しくなる。
具体的には、円の信認が揺らぎ、円安になったらモノの輸入価格は上がるし、日本国が付与されている格付け「シングルA格」がダウングレードされれば、海外に活路を見出している民間企業の格付けが下がり(日本国の格付けのシーリングを受けている)、ひいては調達コストにも影響が出て、加速度的に日本が貧しくなってしまうというリスクが顕在化する。
また、シンプルにインフレが起きて国民の資産は大きく目減りすることになる。
では何が、円の信認が揺らぐトリガーになり得るか。
それは国債の発行残高と個人金融資産のバランスが崩れるタイミング(が決定的になったら)ではないかと思っている。
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足許は国の借金(1286兆円)がまだまだ個人金融資産(2141兆円)でカバーできている。仮に日本政府が国債の償還を諦めても、国債を保有している日本国民(都市銀行も保険会社も究極的には個人から委託されている為)が吸収できる損失の範囲内だ。
例えるなら、みずほ銀行(日本国民)が金を貸し込んでいるソフトバンク(日本政府)が破綻すればみずほ銀行の経営には大きなインパクトがある。大きな貸し倒れが発生し、銀行のバランスシートが目減りする大きな痛みを伴う損失が発生するが、まだ資産超過で潰れはしない。成長が見込める新しい与信先(新政府)に金を貸せば良い。
しかし仮にみずほ銀行が保有している資産以上の融資をソフトバンクにしないといけない状況が訪れるとしたら、世間はどう反応するだろうか。
「いやいや、みずほ銀行潰れるやんけ」
「ソフトバンクにもう貸すなよ。もっと将来性が見込める企業に金貸せよ」
そう思うだろう。
しかし、その頃にはソフトバンクに貸し込み過ぎて、ソフトバンクが復活しないとみずほ銀行も潰れる道連れ状況に追い込まれているだろう。
追貸しせざるを得ない状況だ。
足許、日本政府は40兆円の赤字を毎年生み出している。この赤字額が毎年拡大しているので、簡単には試算できないが、仮に毎年50兆円の赤字が今後も生まれるとした場合、後20年もあれば、個人金融資産が日本政府が発行する国債の残高を超えることになる。
この20年の間に日本政府が日本国ご再び立ち上がる政策を取らない限り、今後とも国力の低下と共に円安が進むことになるだろう。
是非、日本政府には輪転機を回すウルトラCではなく、自国民や企業が求められている様に、財政の健全化を意識した政策を取って頂きたいものだ。