昇華を続ける生き様。宮沢賢治の名著「よだかの星」を紹介。
どうも、宇宙ゴリラです。皆さん、宮沢賢治といえば、どんな作品が頭に浮かびますか?「銀河鉄道の夜に」や「雨にも負けず」など。私の世代はクラムボンが登場する「やまなし」が教科書に掲載されており、印象深い作品になっています。200以上の作品を世に送り出した宮沢賢治ですが、その中でも私が勝手に最高傑作だと思っている作品があります。それは
「よだかの星」
です。「名前聞いたことあるな~」という人は多くいるのではないでしょうか。しかし「読んだことあるよ」という方は意外と少ないイメージがあります。そこで、この記事では「よだかの星」のあらすじと感想を語っていきます。※ネタバレ有りなので注意。
「よだかの星」あらすじ
よだかは、美しいはちすずめやかわせみの兄でありながら、容姿が醜く不格好なゆえに鳥の仲間から嫌われ、鷹からも「たか」の名前を使うな「市蔵」にせよと改名を強要され、故郷を捨てる。自分が生きるためにたくさんの虫の命を食べるために奪っていることを嫌悪して、彼はついに生きることに絶望し、太陽へ向かって飛びながら、焼け死んでもいいからあなたの所へ行かせて下さいと願う。太陽に、お前は夜の鳥だから星に頼んでごらんと言われて、星々にその願いを叶えてもらおうとするが、相手にされない。居場所を失い、命をかけて夜空を飛び続けたよだかは、いつしか青白く燃え上がる「よだかの星」となり、今でも夜空で燃える存在となる。
あらすじを読むと悲しい話に思えますが、決して悲しいだけの話ではありません。読み終わったあとには、どこか爽やかさが感じられます。この爽やかさが宮沢賢治作品の特徴ではないでしょうか。
あらすじが分かったところで次に登場人物(鳥)を紹介していきます。様々な鳥が登場しますが、彼らは実際にはどんな姿をしていたのでしょうか?
登場人物(鳥)
醜い容姿から仲間の鳥たちに嫌われているという「よだか」の姿がこちら↓
醜くない!むしろ、可愛らしい気がする…
美しい姿をしたよだかの兄弟である「はちすずめ」と「かわせみ」の姿がこちら↓
はちすずめ(ハチドリ)↑
かわせみ↑
両者ともにカラフルで可愛らしい鳥です。「はちすずめ」「かわせみ」「よだか」この三者を比べると確かによだかは地味に見えてしまいますね。周りから、疎まれていたのもなんとなく分かる気がします。
最大の魅力「よだかの生き様」
よだかは美しい「はちすずめ」や「かわせみ」と比べられ蔑まれ、鷹に殺すとまで言われ絶望の淵に立たされます。しかし、よだかは決して他者に迷惑をかける選択を選びませんでした。暴力のような短絡的な手段を選ばなかったのです。こんな、よだかの生き様こそが「よだかの星」最大の魅力だと私は思っています。
中盤、よだかは自分自身も虫を食べて生きていることに嫌気がさし、飢えて死ぬことを選びます。これは、食物連鎖としては当然の事なのですが、虐げられたよだかは他者の命を犠牲にして、生きることに疑問を感じたのでしょう。その後、よだかは死を覚悟し遠くの空に向かって飛び続けます。太陽や星、誰もよだかの相手をしませんでしたが、それでもよだかは飛び続けました。やがて自分が飛んでいるのか落ちているのかも分からなくなったよだかは、星に姿を変えます。
他者の命を犠牲にすることを拒否し他者のために命を使うことを選んだ、よだかだからこそ、最終的に夜空に輝く星になれたのではないでしょうか。この自分の名を落とすことなく、自身を昇華していく生き様こそが「よだかの星」最大の魅力だと私は思います。
よだかが表したものとは
本書を読み終えたときに私が最大の魅力だと感じた、「よだかの生き様」がある人を表しているように思えてなりませんでした。それは、作者である「宮沢賢治」その人です。宮沢賢治は多くの童話や詩を残し、教科書にも載るような立派な人物です。しかし、生前彼の作品はほとんど見向きもされず、評価されたのは亡くなって数年が経過した後でした。生前、宮沢賢治の作品が評価されることはありませんでしたが、彼自身は農業指導などをしながら、多くの人の手助けをして生きていました。宮沢賢治は他者を助け、評価されなくても自身を作品という形で昇華し続けました。この生き方は、死後星になって夜空を照らした「よだか」の姿と被ります。こんな生き方をした宮沢賢治だからこそ「よだかの星」を書けたのではないでしょうか。
“よだかの星”の印象に残った一節
よだかが星になる直前の場面での一節です。
「もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居おりました。」
死を目前にして一切後悔を感じさせない「よだか」の姿が非常に印象的でした。私もよだかの様な生き様を見せたいものです。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。