K SIDE:GOLD 03-4
著:高橋弥七郎
第三章 霧ノ市の弁治(四)
ここ『霧ノ市』は、名前通り夜霧の内にある。今では滅多に見ない、地面に筵を敷く形式の露店と、その周りをうろつく人々が、吊した裸電球の下にぼんやりと窺えた。行き交う声は大小に揺れ、近くのような、遠くのような、曖昧な距離感で来訪者を惑わせる。
そんな市の、内か端かも分からない広場で《かぎろひ組》と《法務庁法制第四局》が幾つかに分かれ、七輪に置かれた鍋を囲んでいた。誰もが心身の疲労を鍋で補充すべく、市の自称・名物『なんやら鍋』(なに