死ぬ準備を40秒で支度する。
熱い音楽や、卓越したスピーチ力を従えて
あらゆる成功者というものは
口をそろえてこう言った。
「失敗を恐れるな。」
心が弱った時や、隙が生じた時を狙って
あらゆる誹謗中傷家というものはこう言った。
「こいつは何も分かってない。
どうせ失敗するさ。」
感情や空気に呑まれたときの決断は危険だと良く聞く。
冷静に判断が下せていないと。
綺麗事は綺麗事なんだ。
大して能力のないお前にできることなんてほとんどなにもないよ。
経験がない。
知識がない。
能力がない。
だから、まだやらない。
成功した人の背中に心を焦がして
失敗して吊るされた
哀れな敗者の遺体が雨に晒されるのをみて
足がすくむんだ。
怠惰に生きたいなんて思っちゃいない。
楽して遊んで生きたくもない。
この心が動くもののために。
自分にもそんなものがあると信じて。
そのために、
立ち上がりたいと
志して
立ち上がって
己の無力さに
膝を折った日があっただけだ。
綺麗事かもしれないけど、やりたいことがある。
でも情けない姿で地に這いつくばりたくはない。
嘲られ、プライドが傷つくことが怖いから。
なにか、とんでもない間違いを犯してしまうことが怖いから。
結局、世間の目を気にせずには
生きてはゆかれないぼくがいる。
なけなしのプライドを抱えて
批判とリスクの雨の中で震えてるぼくがいる。
知識は薄く
経験は足りず
能力は及ばず
「完璧だ」と自信がないと走り出せない。
また、ないものばかりを数えて
ないものだけを指摘する誹謗中傷家の言葉だけが、心をえぐる。
ぼくは弱い。
でも、まだここにいる。
今まで生きてきた僕の価値観は
まだこうやって僕を叱咤してくれる。
「かっこいい大人になりたい。」
現実主義者ぶって、冷笑して、
高いところから見てる気分になってるやつに
ただ己の娯楽にだけお金を回す大人になりたくない。
いつまでも夢を追い続けてる。
辛さ押し込めて笑ってられる。
「おれ、明日死んでもいいんだ」って
あの最高の笑顔で笑ってみたいんだ。
まだ、そんな心だけは持ってるんだよ。
確かに若輩で
視野は狭いし
経験は浅い。
これから出会うものは果てしなく多いだろうし
「よし。準備ができた。」
そう確信してから
決断をするべきなのかも。
『もし、明日世界が終わったら。』
よく耳にするお決まりの啓発表現だ。
どうせ明日世界は終わらないだろうし
そんなこと考えてる時間はない。
でも、ほんとに明日死んだら?
今の自分に満足できるだろうか。
歩いた過去に誇りをもてるだろうか。
これからを任せる人々に
すべてを伝えられただろうか。
様々な人が多様なリスクを背負い、
選択をして生きている。
しかし万人が共通して持つものは
「明日、死ぬかもしれない」というリスクだ。
明日死ぬ。
明日死ぬ。
明日、死ぬ。
明日には全部なくなる。
何もできなくなる。
何も残らず
あなたはこの世から消える。
全部さよならだ。
全部全部、さようならなんだ。
そう、本気で考えたことはありますか。
一回しか言わない。だからよく聞いて。
「あなたは、明日死にます。」
もう一度胸に問う。
憧れた英雄の姿と
心が震えた言葉を反芻しよう。
あの人の笑顔に見た
「生きること」
の本質をもう一度確かめるんだ。
世界中の「ファンタジー」というジャンルで先駆けになった「指環物語」の中には
こんな言葉がある。
“ What to do with the time that is given to us.”
“That there’s some good in this world.
And it’s worth fighting for.”
「与えられた時間の中で私たちは一体なにを成すべきなのか。」
「世界には、命を懸けて戦うに足る、素晴らしいものがあるんです。」
そう。いつも決断を迫られている。
ひとつ。
恐れを抱えて無機質に何十年もの日々を生きていくのか
ひとつ。
たとえその生が短くとも
自分に生き、
大切なもののために生き、
信念に生き、
愛を唄い、
人々を励まし、
夢を語り、
情熱を叫んで
「自分として」、散るのか。
この人生はまさにひとつの物語で。
あなたの選択と歩む足跡が文字となって。
残酷なことに、いつ完結するのかはわからない。
でもきっと
その物語が
誰かの心を震わせる日が来るだろう。
だから、
あなたは「何を」求めるのか。
ただそれだけが大切なのだ。
その答えは
その心がしっかりと知っているはずだ。
大切に、大切に育てたその心が。
気高く生きろ。
かけがえのないものの為に生きろ。
忠義を尽くせ。
誇り高く在れ。
涙と歩め。
分け隔てのない優しさと
その愛で世界を満たせ。
笑え。笑っていろ。
どんなに辛くとも。
胸を張って。
大地に立って。
無償の愛を
この世に残し続けろ。
生きた価値を残せ。
火を熾せ。
火を熾せ。
火を、熾せ。
「作者あとがき」を書く時に
心が何かで満ちていく。
そんな瞬間をぼくは感じたい。