シェルブールの雨傘 -音楽と言葉の結婚- 砂時計のような時の流れ
映画「シェルブールの雨傘」を鑑賞。
物語の舞台は港町シェルブール。傘屋の少女ジュヌヴィエーブと自動車修理工の青年ギイの恋の話。
結婚したいと願いながらも、ある日アルジェリア戦争の徴集礼状がギイに届く。ジュヌヴィエーブは一緒に居れないぐらいなら死んでしまいたいと溢れんばかりの気持ちを伝えるも二人は離れ離れとなる。
感情の起伏が旋律として伝わる今作は
全編、歌が台詞に取って代わった「音楽と言葉の結婚」が実現したミシェル・ルグランの代表作にして最高傑作。
と称されメロディーとして軽やかに染み込んでくる。
戦地から手紙がしばらく来ない、不安で仕方ないと嘆く姿を見て「時間が解決してくれる」と説く母。ジュヌヴィエーブの溢れんばかりの気持ちも時が経つにつれ徐々に薄れていく。
まるで「砂時計」—。相手を想う一杯だった気持ちが時の経過とともに少しづつ少しづつ減り移行していくように。
ギイのいないうちにジュヌヴィエーブと一緒になる紳士。彼の過去の話が描写されるシーン。そこではジャック・ドゥミ監督自身の過去作「ローラ」のワンシーンがカラーで蘇り紳士が一体誰であるのかを知らせる。彼もまた「砂時計」のような時の流れと気持ちを体現していた。
一人ひとり異なる日々を送る中、ふとした何かのきっかけにより、気づけば誰かの人生に登場人物として交わっている。映画もまた他の映画へと橋を掛け交わっていた。
「全ては繋がっている」と言われているような気がした。
映画を鑑賞した後、居合わせた方々と感想を交わし合う。それもまた人生という異なる一人ひとりの映画が交わった瞬間であった。
話に花を咲かせたのち、偶然フランス語を話せる者同士ということも分かり、フランス映画を観た余韻も相まってお互い「Au revoir」(さようなら) と話を結ぶ。そしてそれぞれの帰路へ。
行きに降っていた雨は帰りには上がっていた。
ここでもまた「時」の流れを感じた。
シェルブールの雨傘
監督・脚本:ジャック・ドゥミ
音楽:ミシェル・ルグラン
撮影:ジャン・ラビエ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーボ
1964年/フランス/91分/カラー/ステレオ
©︎ Ciné Tamaris 1993
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