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愛聴盤(番外編)独グラモフォンのレコードを味わう

最近、ネットオークションで、珍しいレコードを入手したので記事を書くことにしました。

ドイツ・グラモフォンの"BEETHOVEN EDITION" の第6巻(LPレコード6枚組)。西ドイツ盤の未開封品です。

この"BEETHOVEN EDITION"は、1977年、ベートーヴェンの没後150年を記念して販売されたもので、以下のような構成で販売されていました。

第1巻:交響曲全集(ベーム/ウィーン・フィル)
第2巻:協奏曲全集(ケンプ、フェラス、ライトナー、カラヤン/ベルリン・フィルほか)
第3巻:管楽器のための室内楽曲(ツェラー、トゥ-ネマン、ザイフェルト、デームス、コンタルスキーほか)
第4巻:弦楽四重奏曲全曲(アマデウス四重奏団)
第5巻:弦楽三重奏曲(Trio Itlino D'archi)
第6巻:ピアノ三重奏曲、ピアノ四重奏曲(ケンプ、シェリング、フルニエ、ライスター、エッシェンバッハ)・・・今回筆者が入手したBOX
第7巻:ヴァイオリン・ソナタ、チェロ・ソナタ(ケンプ、メニューイン、フルニエ)
第8巻:ピアノ作品<32曲のソナタと変奏曲など>(ケンプ、アンダ、シェトラー)
第9巻:ミサ曲集(カラヤン/ベルリン・フィル、リヒター/ミュンヘン・バッハ合唱団・管弦楽団)
第10巻:歌劇「フィデリオ」(ベーム/ドレスデン歌劇場)
第11巻:劇音楽序曲集ほか(カラヤン/ベルリン・フィル)
第12巻:歌曲、その他声楽作品(マティス、ハマリ、F=ディースカウほか)

こうして見ると、当時のドイツ・グラモフォンのオールスター勢揃いの様相ですね。交響曲全集は、カラヤンでなく、ベームです。ピアノの主役はウィルヘルム・ケンプですね。この時点で、DGでピアノ・ソナタ全曲録音していた人がケンプしかいなかったからでしょう。

手元に届いた第6巻。やや黄ばんだシュリンクをペリペリとはがすと、ボックスは布地のような肌ざわりです。ジャケットの風景画が、まるでキャンバス地に描かれているようで、とても趣があります(この記事の見出しに写真を載せました)。

ゆっくりと中を開けてみると、LPサイズのモノクロの解説書のほか、同サイズでカラー刷りの資料があって、自筆譜や作品1の出版合意書の写真、当時のウィーンの風景画など、眺めていて楽しいものです。

半世紀近く前に西ドイツ(おそらくハノーファー)で製作されたレコードを、ドキドキしながら取り出す瞬間。何とも言えない高揚感があります。盤によっては、工場でカットした時に付着しただろう細い糸状のビニールのカスが、レコードの円周に付着しているものもあり、確かに未使用品であることを物語ります。

「これまでどこで眠っていたの?いずれにせよ、我が家に来てくれてありがとう!」

そんな気持ちで、ゆっくり針を下します。ピカピカな盤面がターンテーブルの上を回っている様子はいつ見ても美しいものです。

カートリッジは、解像度の高い楕円針よりも、丸針の方がマッチするようです。すこしフォーカスは甘くなり、響きが散漫になるものの、アナログらしい柔らかな音が良い感じです。特に、ケンプのピアノには丸針の方がしっくりきます。

ケンプ、シェリング、フルニエによるトリオ。有名な第7番「大公」以外の楽曲も、名手たちの美しい音色を聴いているだけで、豊かな気持ちになります。

私が子供のころ、多くの家庭に「ステレオ」と呼ばれる音響機器がありました。とりたてて音楽ファンの家でなくとも、応接間に調度品のように置かれてたものです。

そんな時代の香りを感じさせるレコードを堪能しました。


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