【半小説】レシートを捨てたい
缶コーヒーの代金を支払おうと財布を開いて、ああ、これが千円札だったらな、とレシートの束を見つめながらため息を吐く。点々と灯る街灯だけが優しい夜、店員の間延びした「ありがとおざいやしたあ」と来店のメロディを背中で引き受けながら、俺はゆっくりと空中に散らばっていく白い吐息を見た。
真冬の澄んだ空気は、俺に斉藤の結婚式を思い出させた。いや、正確には二次会だったか。その日に知り合った彼は、友達の友達だった。酒の勢いも手伝って意気投合した彼は俺の財布を見て「自営業なの?」と問いか