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「虚空へ」 谷川俊太郎
2020から2021年に書かれた最新詩集とあるから、谷川さんが89歳から90歳にかけて書いた作品ということになる。
一つ一つの作品の文字はとても少ない。
でも文字が少なくなればなるほど、文の意味は広がるから不思議だ。
意味が広がるというよりは、情景が広がるということなのだろう。
こちらの頭の中の理解にゆだねられているものの、少しだけ、谷川さんが方向を指し示しているという感じか。いや、輪郭線かな。
心地良さと心許なさが同時に進行していくから、道に迷ってはいけないという緊張感もあったりする。
でも迷ってもいいんだよなと、谷川さんのお顔を思い浮かべながら思う。
「いのちの無言」という最後の詩は圧巻だ。
ヒトの沈黙は
喧噪の
擬態
こんな言葉は逆立ちしても思いつかない。参りましたと言うほかはない。
「哲学を壊すのが詩だ」と言ったのは誰だったか。
この一節はまさしく、哲学を粉々に破壊している。
思わず笑みがこみ上げる。嬉しい。
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表紙カバーを外した内側の装丁も素敵だ。
装画は、望月通陽さん。
詩集はこういうものも全部合わせて一つの作品だから、出来る限り紙の本で買いたい。