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小説と詩を嗜んでみた。

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駄文ですが、お暇な時に。
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#桜

翼は桜のようだった。【春弦サビ小説】

翼は桜のようだった。【春弦サビ小説】

Inspired by Ao lyric.
Composed by Ao
Song by Ao

春の日に歌うあたしはーー。

飛べない鳥。
だから歌って、此処に居るよと言っているんだ。

みんな飛び立って行った。
遠くへ。
とにかく遠くへ。
あたしはまだ此処で歌っているよ。

あたしには翼が無かったから。
歌うことしか出来なくて。

泣いて。
鳴いて。
歌って。
唄って。

突然聞こえたアコース

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先輩。

先輩。

いつもバカばっかやってる先輩が居た。
周囲を笑わせるのが得意な先輩。
花粉症が酷くて変なくしゃみが特徴的だ。
新人のわたしにいろいろ教えてくれた。笑いを混ぜながら。

「知ってるか?齋藤。これ」
綺麗な河津桜の写真。
「さくら、ですね」
「おれの地元、今年も綺麗に咲きそうなんだよ」
「地元、ここじゃないんですか?」
「伊豆の方」
毎年春に休み取って地元に帰ると笑顔で言う先輩。
「年に一度桜の時期に

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桜の木の下で。【しめじ氏cover小説】

桜の木の下で。【しめじ氏cover小説】

4月。
夕暮れはまだ冬の名残があって少し肌寒い。
川の向こうに陽が沈んでいく。
川面は静かに茜色を薄めた様な綺麗な彩りを写している。

桜の木の下にはひとりの老婆。
上着を抱き締めるように立ち、遠方遙か彼方を見つめている。
わたしの祖母の『妙』ばぁちゃん。
母からお祖母ちゃんを迎えに行ってきてと頼まれる。
春が来る度の日課になってきた。

桜の蕾が開く頃。
お祖母ちゃんはお昼を食べた後、この木の下

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