【映画感想】『BanG Dream! It's MyGO!!!!! 前/後編』恋愛でも友情でもない「居場所・仲間」を見つける為もがき苦しむ。2024年の隠れた傑作メロドラマ映画
●『BanG Dream! It's MyGO!!!!! 前編 春の陽だまり、迷い猫』
●『BanG Dream! It's MyGO!!!!! 後編 うたう、僕らになれるうた&FILM LIVE』監督 柿本広大、シリーズ構成 綾奈ゆにこ 、アニメーション制作 サンジゲン
川崎チネチッタで観賞(良い映画館です)
バンドアニメシリーズ『BanG Dream!(バンドリ)』について
アニメファンには有名、そうではない方は知らない可能性が高いですが『BanG Dream!(バンドリ)』シリーズは、複数のガールズバンドの青春を描いた群像劇作品です。
アニメ/ゲームをメインに展開し、バンドによっては声優さんが楽器も演奏したりするリアルライブ(!)も行っています。なんと、泉谷しげるや竹原ピストル。KEYTALK、ヤバイTシャツ屋さんといった有名アーティストが出演する普通のロックフェスに出演したりもしています。
現役アニメファンや声優ファンの中だけであれば、知名度はほぼ100%。今は新作アニメの本数が異常に多いため、作品自体には触れたことがない人もいるかもしれませんが、楽曲は少し知っている。キャラクターを見ればなんとなくバンドリの人だと分かる。みたいなアニメファンはかなり多いと思われます。
『BanG Dream! It's MyGO!!!!! (以下MyGO!!!!!)』は、2023年に放送された1クール全13話のTVアニメです。『MyGO!!!!!』は、バンドリのTVアニメシリーズとしては4作目。3作目までの主人公バンドは同じでしたが、今作で主人公が新たなバンドに変わりました。
今までのキャラクターが出てくる場面もありますが、同じライブハウスの通路ですれ違う人、くらいの扱い。ガンダムで例えると『機動戦士Zガンダム』のような、同じ世界観の少し先を舞台に別の主人公を描く、という立ち位置の作品です。そのため、過去作を一切知らない人が『MyGO!!!!!』だけを単独作品として観て問題無い作りになっています。
劇場版『MyGO!!!!!』前後編は、そのTVアニメの総集編映画です。
映画ファンの選択肢から外されがちな「TVドラマの続編」と「TVアニメの総集編」
映画ファンの中には、かなり幅広いジャンルの映画を分け隔てなく観賞する、「良い映画」そのものを愛している/常に求めている方が多いと思います。しかし、そういった方でも、「TVドラマの続編映画」と「TVアニメの総集編映画」は、観る選択肢から外したり、優先順位を下げていることが多いのではないでしょうか?
私も「面白い映画であれば本当は、時間と予算が許すならできるだけ全部観たい」と思っている映画ファンなので分かりますが、「TVドラマの続編映画」と「TVアニメの総集編映画」は、どちらかというと外れ映画である可能性が高い。
というのも、どちらも元のTVドラマ/アニメを観ていることを前提としたファンムービーの水準である場合が多いからです。
単独の映画作品として見ると、他の通常の実写映画やオリジナルアニメ映画よりも作品の質が低く、ただ映像をスクリーンに映しているだけで、「映画」になっていないケースが多いのです。(ちなみに、ドラマの続編やアニメの総集編だけでなく、TVドラマをメインとしている人気監督が手掛けるタイプの新作映画にも、この傾向は見られます)
私は日本の特撮番組以外のTVドラマには詳しくないので、ここからはアニメの話に絞ります。上記のように、ファンムービーである場合が多く、単独の「映画作品」を期待すると外れ率が高い「TVアニメの総集編映画」。そういったタイプのアニメ映画は、昔から沢山ありそうなイメージが、なんとなくあります。
しかし、Wikipediaの「日本のアニメ映画」を戦後から全部確認していくと、実は割と近年増えた傾向であることが分かってきました。
TVアニメ総集編映画の変遷を調べてみた!
1960年には、東映動画初のTVアニメ『狼少年ケン』の劇場公開が始まります。ですが、当時のTVアニメは、1話完結のいわゆる「テレビまんが」形式の番組が多く、劇場公開作品も、ピックアップしたTV版の2エピソードを再編集して中編映画として上映する形式になっています。
他にも『エイトマン』『オバケのQ太郎』『鉄人28号』といった社会現象クラスの多くの作品が、同様の形式で劇場公開しています。
その中では、『巨人の星』『巨人の星 行け行け飛雄馬』(1969)の2作は、本編の30話分くらいを編集した長編となっており、総集編映画と言えます。
70年代でも、TVアニメの劇場版は、「東映チャンピオンまつり」の中で複数同時上映作品の一つとして、TVアニメの人気エピソードをピックアップする形式の劇場公開が主流のようです。総集編の長編映画と呼べる作品は『宇宙戦艦ヤマト(劇場版)』(1977)と『科学忍者隊ガッチャマン』(1978)くらいです。
80年代は最初のアニメブームで、劇場版アニメの作品数も370本以上に増えます。しかしそれに伴い、完全新作のアニメ映画が激増。
総集編の長編映画に該当するのは、①『あしたのジョー』②『家なき子』③『母をたずねて三千里』(1980)、打ち切りにより十分に描ききれなかった結末を追加した④『劇場版 宇宙戦士バルディオス』(1981)。⑤『六神合体ゴッドマーズ』(1982)。⑥⑦⑧後述もする『機動戦士ガンダムⅠ-Ⅲ』(1981-82)。⑨『伝説巨神イデオン 接触編』(1982)。⑩『ザブングル・グラフティ』と、同時上映の⑪『ドキュメント 太陽の牙ダグラム』(1983)。TVアニメ『ガンバの冒険』(1975)の総集編である⑫『冒険者たち ガンバと7匹のなかま』(1984)です。
Wikipediaなので、掲載漏れがある可能性もありますが、370作品以上の中で、総集編映画は12作程度しかありません。
90年代も、その傾向は続きます。劇場アニメの本数は280作以上あります。ですが、TVアニメ作品の劇場版と言えば『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『ポケットモンスター』『名探偵コナン』のような、TV版よりもスケールの大きい新作劇場版が当たり前になった時代。
そんな中で、TVアニメ総集編の長編アニメ映画は、90年代の映画としては場違い感のある①『ペリーヌ物語』(1990)。そして、エヴァンゲリオンの完結編として上映されるはずでしたが、最後までは制作が間に合わなかった映画『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』(1997)の中の総集編パート、②『DEATH』のみ。
それ以外の総集編映画は、『マクロスプラス MOVIE EDITION』(1995)といった、OVA(オリジナルビデオアニメ ※セルやレンタルの新作アニメ)の総集編がほとんどです。
なんと、90年代にはTVアニメの総集編映画は、劇場公開280作品以上の中で2作しかありません。90年代にTVアニメの総集編映画は、一旦ほとんど絶滅したと言えるかもしれません。
ゼロ年代(2000~2009年)はどうでしょうか?
アニメ映画の作品数は90年代よりも増え、320作以上。その中で、OVAの総集編を除くと、①『アレクサンダー戦記 劇場版』(2000)。前後編の、②『∀ガンダムI 地球光』③『Ⅱ月光蝶』(2002)。TV版の素材も使っていますが、実質リメイクである、④『ラーゼフォン 多元変奏曲』(2003)。TVのZガンダムに新作カットを加え「新訳」した3部作、⑤『機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-』⑥『恋人たち』(2005)⑦『星の鼓動は愛』(2006)。
その後は難しい漢字が多くごちゃごちゃしてるので読み飛ばしてもいいですが、⑧⑨⑩総集編3部作『KIDDY GRADE -IGNITION-覚醒篇』『氾濫篇』『黎明篇』(2007)。前後編の、⑪⑫『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇』(2008)『螺巌篇』(2009)。⑬『東のエデン 総集編 Air Communication』(2009)。7割以上が新規作画らしく、総集編とは呼べないかもしれない⑭『劇場版マクロスF 虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜』(2009)と続きます。
新作カットが多く、別モノとなっている作品が多いですが、それを含めても、320作品以上の中で総集編映画は僅か14作しかありません。
2010年代から激増するアニメ総集編映画
ところが、2010年代になると様子が変わります。TVアニメ『スクライド』(2001)を再構成し新作カットを追加した『スクライドオルタレイションTAO』(2011)を皮切りに、急にTVアニメの総集編映画が増えます。
私が数えただけで55作もありました。これまでに挙げた、60年代からゼロ年代までのTVアニメ総集編映画を全て合わせても32作しかありませんが、2010年代の56作だけで、その本数を上回ります。そのまま本文に羅列すると読みにくいので、以下の表にまとめました(なにをやっているのか)。
2010年代は複数の大きいアニメブームが立て続けに発生しました。
『アイドルマスター』(2011)と『アイカツ!』(2012)を起点とし、『ラブライブ!』(2013、2014)などの人気タイトルが群雄割拠する、アイドルアニメブーム。
『けいおん!』(2009、2010)の京都アニメーションや、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)『物語シリーズ』(2009-)のシャフト。『Fate/Zero』(2011、2012)、『鬼滅の刃』(2019-)のufotableなど、高品質で商業的にも成功した深夜アニメを制作するアニメスタジオの台頭と注目。
2016年『君の名は。』(監督.新海誠)の国民的ヒットと、同じ年の『聲の形』(監督.山田尚子)、『この世界の片隅に』(監督.片渕須直)という立派な「映画」が連続で公開されたことによる、アニメ映画市場の再評価。そして、それにともなう作品数の増加。などなどです。
2010年代に一気にTVアニメ総集編映画が(も)増えたのは、それらの複合的なアニメブームの影響によるものだと考えられます。また、Netflixがアニメに本格的に力を入れ始めた作品の公開が2018年頃からであり、2010年代はまだ、「劇場公開⇒その後Blu-ray/DVDソフトを販売」というビジネスが主流だったことも、大きな要因だと考えられます。
その結果、あくまでTVアニメ視聴済みのファンにターゲットを絞って製作された総集編映画も急激に増加。「祝!劇場公開!」的なイベント要素が強く、ファン以外の人が初見で観賞しても、ついていくのが難しいファンムービーも増えました。
しかし実は、「TVアニメの総集編映画」の中にも、よ~く見ると、2種類あることは、映画ファンの間でもそれほど認識されていません。
TVアニメの総集編映画には2種類ある
その2種類をざっくり言うと、「映画になっている」か「なっていない」かに分けられます。
「映画になっていない」タイプの作品は、映画ファンも感じているように、多くの総集編映画が当てはまります。
現在の1クールTVアニメの場合、およそ「20分×12話=240分前後」の本編映像があります。それを100~120分程度にまとめただけ。ファンがTVアニメの感動を追体験する目的で作られており、単なるダイジェスト版にすぎない。無理やり1本にまとめた結果、TVアニメでは丁寧にエピソードを重ねることで描かれていた展開が、総集編で初めて観た場合、不自然に感じることもあります。
もう一方の「映画になっている」タイプの作品は、制作側がTVアニメをあくまでも「映画を作るための編集素材」と考え、「1つの映画」を作ろうと意識している作品です。
「映画になっている」タイプの作品
「映画になっている」タイプを少し紹介します。代表的な作品は、ガンダムの生みの親として有名な、富野由悠季 監督による総集編映画です。中でも分かりやすいのは、先に80年代の総集編映画として数えた劇場版『機動戦士ガンダム』。特に『II 哀・戦士編』『III めぐりあい宇宙編』です。
『禁断の惑星』(1956.監督:フレッド・M・ウィルコックス)などのSF映画が好きだった富野は、映画監督を志し日大の芸術学部映画科に入ります。しかし、就職活動のタイミングでは映画会社は求人を出しておらず、母がたまたま見つけた求人で『鉄腕アトム』を制作している虫プロを知り入社。以後、(TV)アニメも映画である、という考えのもと、日本アニメ黎明期の1964年から継続して、無数のアニメ作品の演出/監督をしています。
著書『アニメを作ることを舐めてはいけない-「Gレコ」で考えたこと』(2021,KADOKAWA)の中で富野は、実写では難しい、アニメだけが持つ性質について語っています。
ガンダムについては、非常に大勢の人が様々な解説や批評をし、書籍も沢山出ているので、ここで多くは述べません。『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』は、戦場で死んでいく人々の「かなしみの哀」で構成された映画。どこを見ても名場面となっています。
『III めぐりあい宇宙編』は、テレビ版の終盤で病気により降板したキャラクターデザイン/アニメーションディレクターの安彦良和による新作カットが大幅に追加された見応えのある作品。
私はこれらをDVDで最初に観た際は、普通に超面白いロボットアニメとして観ていました。しかし、池袋の名画座「新文芸坐」にて大スクリーンで観賞したところ、全く息をつく暇の無い緊張感と、ニュータイプの宇宙に頭が巻き込まれ、心のタガが外れてしまう映画体験をしました。
映画の古典的名作は、元々ソフトや配信でのモニター観賞を想定しておらず、映画館での観賞でその映画の力を120パーセント発揮するように作られています。今でも映画監督としての自覚がある監督は皆そういう映画作りをしています(クリント・イーストウッド監督の最新作『陪審員2番』も配信で済ませるのではなく、一刻も早く劇場公開するべきです)。私はこの時、ガンダムの劇場版も、それと同じように「映画」として作られていたことに気づかされました。(ただし、『機動戦士ガンダム』という作品は、TV版の時点でアニメ史上に残る傑作であることに変わりはありません)
※ちなみに、1985-86に放送されたTVアニメに新作映像を加え、20年後に「新訳」した『機動戦士Ζガンダム A New Translation』3部作も、優れた映画です。(私はファンの多いTV版よりも、この劇場版の方が圧倒的に面白いと思っています。ですが、それを書き始めると地球の重力に魂を引かれてしまい、この記事の本題にいつまでも到達しないので、「見てください!」とだけ書いて話を進めます)
私がアニメも映画も大好きなせいで前置きが異常に長くなりましたが、話を最初に戻します。この記事で最も伝えたいことは、劇場版『MyGO!!!!!』前後編も「映画になっている」タイプの、大変面白い総集編映画だということです。
劇場版『MyGO!!!!!』は、2人の少女が3人の少女と出会う物語です。
先述のガンダムⅢではありませんが、この劇場版『MyGO!!!!! 』にも、TV版から大幅に追加された新作シーンがあります。それは、同じ場面を綺麗にするようなリソースの使い方ではありません。映画の強度を上げるために、2人の少女の、現在に至るまでの姿が追加されています。
2020年代の邦画ムーブメント「生きづらい人々」ジャンルの映画
『MyGO!!!!!』のアニメジャンルは「ガールズバンドアニメ」。美少女キャラクターの魅力を売りの一つにしている、いわゆる「美少女アニメ」の一種です。
アニメも漫画も一切見たことがないタイプの方が奇跡的にここまで記事を読んでいる可能性も考え一応説明しますが、「美少女アニメ」と言っても、それはキャラクターデザインに注目した大まかなジャンル分けであって、作風は作品ごとに様々です。
美少女アニメの中にも、パンチラのようなラッキースケベを売りにしたラブコメもあれば、ドタバタの楽しいギャグアニメもある。子どもに夢を与える作品もあれば、人間ドラマを重視したシリアスな作品も沢山あります。『MyGO!!!!!』は人間ドラマを重視した作品であり、さらに言えば、2020年代邦画の一大ジャンルになりつつある「生きづらい人々」を描いた映画でもあります。
私が2024年上半期映画ベスト10の記事で3位に挙げた映画『夜明けのすべて』(監督:三宅唱)もその一つです。病に苦しみながら、なんとか生活していた人が、大変なのは自分だけではなく、自分にも人と助け合える部分がある、ということに気づいていく名作です。
また、別の記事で紹介した、2024年公開の邦画『Cloud クラウド』(監督:黒沢清)と『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』(監督:阪元裕吾)も、それぞれサスペンスとアクションという別ジャンルの映画ですが、これらも「生きづらい人々」を描いています。
2020年代の邦画には、そういった「生きづらい人々」を描く作品が増えています。
ぬいぐるみにしゃべりかけるサークルに入っている、やさしくて敏感、だが鈍感な人々を描いた『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』(2023.監督:金子由里奈)。イジメに遭った女子高生が港町に転校し、海釣り同好会で友情をはぐくむ『放課後アングラーライフ』(2023.監督:城定秀夫)。生活に疲弊した3人の女性が、昔好きだったアニメ「おジャ魔女どれみ」の聖地巡礼をきっかけに友人となるアニメ映画『魔女見習いをさがして』(2020.監督:佐藤順一、鎌谷悠)。都会で何か生きづらさを感じたらしき女の子が、謎の男と出会い、お互い気持ちが少し楽になる『石がある』(2024.監督:太田達成)。自分に嘘をついていることに気づかず苦しい生活をしていた女性が、出会い系でサクラを演じるうちに人生が一変する『STRANGERS』(2024.監督:池田健太)など、「生きづらい人々」を描いた様々な邦画が公開されています。
劇場版『MyGO!!!!!』も、その系譜に加えられる映画。この作品は、2人の少女が3人の少女と出会う、5人の苦しんでいる少女の物語です。
1人は、素晴らしい家族に自由に育てられた結果ギターの天才に育つが、自由な性格と天才さゆえに居場所が無い少女。もう1人は、承認欲求が高くみんなの人気者になりたいが実力が伴わず、理想と現実のギャップに苦しんでいる少女です。
3人の少女は、かつて他の人と一緒に同じバンドを組んでいたようです。しかし、何かがあったらしくバンドは解散。そのことで3人も傷つき苦しんでいます。
先に、この劇場版『MyGO!!!!!』にも、TV版から大幅に追加された新作シーンがあると書きました。
劇場版での追加シーンは、天才ギター少女がこれまでどのような環境で育ってきたかを入念に描きます。人間ドラマには我が子をコントロールしようとする、いわゆる「毒親」が登場しがちですが、彼女の家族はそれとは真逆です。教育の古典、ルソー『エミール』を哲学者、苫野一徳が解説した本「『エミール』を読む」(2024.岩波書店)から引用すれば「お互いを、尊厳ある人間同士として尊重(68ページ)」して接し「みずからが生きたいように生きる(37ページ)」ように育てています。
彼女の祖母は、かつて伝説的ロックバンドのメンバーとしてギターを演奏していました。生まれた時からその姿を見てギターに触って成長し、真似をして弾き、祖母の経営していたライブハウスに入り浸り、多くのバンドに囲まれ演奏を聴くのが日常だった彼女は、譜面を一度見たり曲を聴いただけで何でも弾ける天才ギタリストに育ちました。しかし、そのライブハウスが事情により閉店した後、生きたいように生きている彼女は学校にもなじめず、自分の居場所を失っています。
追加シーンでは、もう一人の少女が今の高校に転校するまでの経緯も描かれます。英語の成績が良く、得意なつもりで高校進学タイミングでイギリスのハイスクールに留学した彼女。しかしその英語力は、日常会話レベルでも通用しませんでした。留学を挫折し日本にひっそりと帰国。彼女が転入した、中学校時代の同級生がいない女子高には、高校生ながら有名なバンドをやっている卒業生/在校生が多数存在。その影響により学校では、バンドをやるのが流行していました。表には見せていませんが、理想の自分と折り合いがつかず苦しむ彼女は、周りの話題に合わせ自分に注目してもらうために、自分もバンドを組もうと行動します。
恋愛でも友情でもないメロドラマ映画
『MyGO!!!!!』はバンドアニメであり、バンドの名前でもあります。しかし、ライブシーンばかりで話の薄いPV映画というわけではありません。主軸は会話劇であり、映画のジャンルは登場人物が障害にぶつかり、それを超えられずにもがく姿を軸に物語が展開するメロドラマです。
多くの恋愛ドラマや映画、漫画に見られるように、メロドラマは、男女や同性同士の恋愛模様を描いた作品が主流です。『MyGO!!!!!』のメインキャラは、主人公5人以外も全員女性。それだけを聞くと、メロドラマジャンルに詳しい人は、女性同士の淡い恋愛を描いた、いわゆる「百合作品」なのかな?と予想されるかもしれません。『MyGO!!!!!』のメロドラマは濃厚なので、ファンがそのキャラクター同士の関係性の中から百合の気配を感じ取ることは十分に可能です。ですが、この作品はメロドラマでありながら恋愛ドラマではありません。(これは他の「百合作品」や、ファンによるドリームを否定する意味では言っていません。俺は燈×愛音 ※アクスタは劇場でもゲーマーズでも品切れでまだ持ってない)
さらに言えば、『MyGO!!!!!』のメロドラマは、友情を育み「真のお友達」を見つける物語かというと、それも正確ではありません。主人公の作詞/ボーカル、高松燈(ともり)の印象的なセリフには、それが顕著に表れています。
「一生、バンドしてくれる?」
劇場版『MyGO!!!!!』は、「自分の居場所」を失い、「生きづらさ」に苦しんでいる女の子たちが、時にその苦しさから逃げ出し、逃げ出した人をどこまでも追いかけ、目を見て何度も対話を繰り返しながらグチャグチャにもがき苦しみ、一生を共に生きようとする自分だけの「仲間」と「居場所」を、自分の力でなんとかつくりだそうとする、傑作メロドラマ映画です。
私は前編だけ観た段階で「これ1本で既に傑作!」認定しましたが、もちろん後編も最高なので、両方観るとさらに素晴らしく良いです。『MyGO!!!!!』のメイン舞台となる街は池袋なのですが、私は最早、サンシャインシティのスペイン階段や、西武百貨店の向かいにある老舗洋菓子店「タカセ」の看板を思い浮かべただけで『MyGO!!!!!』を想起し、泣いてしまいそうになる人間になってしまいました。絶対観てください。
超絶直近では、この記事をアップした本日12/27(金)。川崎チネチッタで15時から、前後編の連続上映があります(←!?)。行ってください。TOHOシネマズ上野と、福山駅前シネマモードでは、後編はまだ上映中です。
他の映画館も、前後編を合わせて追加上映してください。TVアニメの続編が1月から始まるので、まだ潜在的な集客力はあります。池袋 新文芸座さん。目黒シネマさん。早稲田松竹さん。キネカ大森さん。立川シネマシティさん。下北沢トリウッドさん。シネマ・チュプキ・タバタさん。菊川Strangerさん。イオンシネマ海老名さん。名古屋シネマスコーレさん。扇町キネマさん。京都出町座さん。ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13さん。よろしくお願いいたします。
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