沢渡温泉♨️は遠きにありても、また行くよ!
横浜市青葉区出身
川崎市高津区在住
僕が旅に出たくなるポイントは「現実逃避」一点。
勤めに疲弊し、そのストレスを発散するために事前に計画をたてて、その日を楽しみにして勤めのモチベーションを上げる。
また、僕の旅には決まりがある。
1.鈍行列車を使用すること
2.旅先で出会いとか求めない、言うならば誰とも接さずに時を過ごす
旅の出発点は武蔵小杉駅固定で、大抵、西は熱海、東は宇都宮。
行き先はテキトーだが・・・
西も東も高層マンションが立ち並ぶ都会の喧騒から徐々に緑や海が広がっていき2時間半程度の移動で心が物凄く癒されていくのがいとをかし。
そういった中で僕の旅ルールで必ず使うのが関東限定になるが、鈍行列車のグリーン車に片道800円くらい足して乗車し、プチな優越感を味わうこと。
ということで、最近の旅で思い出に残った行き先は「沢渡温泉」。
「沢渡温泉」への旅は、いつものように計画をたてて、どんな未知の場所なんだろう…とか思いを巡らせながら週末を迎えた。
武蔵小杉駅から湘南新宿ラインのグリーン車に乗り込み、とりあえず高崎駅までプチな優越感と流れてゆく景色の中で心のマッサージをされ現実逃避されていく。
高崎駅からは吾妻線に乗り換え、中之条駅には午前10時までに着くように設定してあって、中之条駅自体は初めて訪れる駅であった。
そこで「沢渡温泉」まで向かう一日に数本しかないバスに乗るのは海外旅行に似た感じであった。
中之条駅に降り立つと年配層が多く30 人くらい駅のバスロータリーにいた。
で、僕が乗るバス停1番だったかな…人が並んでいるので、その乗り場だろうと思い行き先と時刻表を見るとバス停4番で…四万温泉行きだった。
四万温泉行きのバスは先に出発してしまい、残されたのは僕だけ。
それでも目的地は「沢渡温泉」なので気持ちに揺るぎはない。
いよいよ目的のバスに乗り込む、とりあえず僕ひとり、後からひとり乗ってきたところで乗客二名で出発進行!
半分は街な雰囲気、あと半分は何処に連れて行かれるのだろうか?という過疎的な不安を思わせる雰囲気。
30分くらいで間違いのないようにピンポン押して680円かな、運賃を後払いして下車。
「沢渡温泉」第一歩の感想は特にないし、実際何もない。
意味もなく神社に立ち寄ったり、川の方に行って自販機でブラックコーヒーを飲んで佇んだりしても30分で終わり、目的の温泉に入ろうとも、ひなびた旅館の日帰り入浴に魅力は感じなかったので、町営と思しき温泉施設に。
パチンコの景品交換所のような小さな窓口で迎えてくれたお爺さんに300円支払って手拭いを貰って男湯の入り口をくぐり新世界へ!
といっても、まずは脱衣所があり先客が2名いるようで裸になり浴室の扉を開いていざ!
浴槽が二つありルール的なものはわからないので、奥の浴槽のお湯をケロリンの洗面器ですくいかけ湯をした。
これがメチャクチャ熱い!
水がホースでチョロチョロと足されていたが、今までの経験上、この水の調節は温泉の主がおこなうものであって、僕のような新参者がその神の行事に参加してはならないことくらい知っている。
要するに、このメチャクチャ熱い湯が適温なのだ…ろう…
誰も押すなよ、押すなよ、と思っても誰もいないんだから、普通につま先から入湯。
かなり熱くて肌が痺れる。
幸い、主だか知らないが先客二人は僕に無関心。
ビリビリ痺れる肌など関係なしに肩まで湯船に浸かる。
我慢はかなり必要でも、なんとなく慣れた気がしないでもない。
お湯としては、お世辞抜きで結構いい湯質で、僕の中では上山温泉の葉山館を抜いて歴代暫定一位を獲得した。
他人のことを気にせず、むしろ誰も話しかけてくれるな!主義なんで、冷静にかつ健やかに入浴を満喫していた。
気づくと一人先にあがったようで、70歳くらいの老人と僕は気まずく過ごす。といっても僕主観の考え方であって、話しかけてくれるなスタンスに同調している由もなく、いつ襲いかかってくるかわからない恐怖にはおののいている。
少しすると、30代の男性があとから入ってきた。
その男性は残っていた70男に「あっ、どうもこんにちは!」と挨拶していたので知り合いのようだ。
でも、巻き込まれに注意しなければという思いから、僕はすべてのオーラを消した。
二人の話を聞いていると、彼らは温泉マニアのようで、30男は群馬の伊勢崎からバイクで4時間かけて来ているらしく、70男は「沢渡温泉」の湯に魅せられて移住してきたとのこと。
この温泉が指折りの良質な湯のようで、二人で愛で合い、温泉話に花が咲いていた。
もちろん、僕は盗み聞きしているだけで、このひなびた温泉に来てまでコミュニケーションなど取ろうとも思わない。
でも、僕が入り込む余地もないけど、こういう温泉での顔馴染みも素敵だなーとかも思った。
聞いていると、僕が最初に入った奥の浴槽は水で温くして良いらしく、手前の浴槽はダメらしい。
やはりそこは新参者が手を出さなくて正解であった。
僕はこのままコミュニケーションを取らずに見えない心の耳栓をして時を過ごそうとしていた。
なんかの拍子に70男が30男に孫の話を始めた。
ここから孫の住んでいるところまで4時間くらいかかるらしく、ずーっと湘南新宿ラインに乗って渋谷で乗り換えて、そこから電車に揺られて一時間くらいのところでというと、30男がその先を聞き始めた。
「何県のなんという駅ですか?」と、僕の心にはにわかに暗雲が立ち込めてきた。
神奈川県の…(僕の心:まあ、神奈川県は広いし)
横浜市の…(僕の心:横浜ね…)
田園都市線の…(僕の心:もう先を言わないで!)
青葉台!(爺さんビンゴだよ!)
(もう、言うしか他になかった)
「青葉台は僕の地元です!」
もう、そこからはlet it be♫
孫は20歳で理容師の学校でて青葉台の隣の藤が丘(もちろん知ってる)というところの店に勤めているらしい。
たまに行くけど青葉台は遠いわ!と言う…こちらから言わせてもらえば「沢渡温泉」が遠いんじゃ!
まあ、温泉好きに悪い人はいないと思ってるんで、スイッチ入れ替えてコミュニケーションONにしましたわ、致し方なく。
この温泉は飲用目的で汲んでいく人がいるらしく、70男はペットボトルに詰めていくとのこと。
「ここの温泉は飲みやすいんだよ!」って言って、おもむろにケロリンの洗面器で僕が浸かっている湯をすくって飲んでいた。(それって温泉の効能以前に衛生的にどうなんだ?)
で、70男は用事を終え30男に「じゃ、また!」と言って出て行った…と思われたが、親切に僕が温泉汲んで帰るための使い古した2リットルのペットボトルを持ってきてくれて「まだ入っている中身飲めるけどね…」と言い戻っては来なかった。
僕は「まあ、この中身は捨てるけど、使い古したペットボトル嫌やな。」と思いつつ30男の目を気にして満タンに詰めました、もちろん栓から出でいる新鮮な湯を。
僕はこんな常連さんのコミュニケーションは良いなーと思い、30男に「よくご一緒するんですか?」とありきたりな質問をした。
30男は平然と「今日初めて会いました!」と返してきたのにはカルチャーショックを受けた。
お前らなんなん?
温泉もひなびていたが、客もひなびていた。
30男に食事処を聞いて吉野家の蕎麦を勧められ、30男も適当なところで上がっていき、お風呂場は僕の貸切になり願ったり叶ったりとなった。
そもそもお湯の温度が熱いので3分と入れないのだが、上がった後も汗が止まらないんでケロリンの椅子に座ってボーッとしていた。
時が経つと、隣の女風呂から「おとーさん!おとーさん!」と声が掛かってくる。
もしかして、この男湯には僕に見えない「おとーさん」がいるのか、この老婆の掛け声が幻聴なのか…
僕としては真摯に「こちらには誰もいませんよー!」って返してあげたが、そのまま無視された。
その後誰も入っては来なかったが、程なくして僕も上がった。
脱衣所にある扇風機を当ててもなかなか汗が引かず、落ち着いたところで町営温泉をあとにした。
時は13時40分を回っていた。
あとは、昼ごはんの吉野家を目指し、と言っても歩いて3分で到着。
困ったのは次の中之条駅行きのバスが14時14分であること、その次のバスが16時を過ぎること。
一瞬、吉野家を諦めるか、バスを一本遅らせるかとは思ったが、もう2時間ここです過ごす自信は無かったので、かき込むように蕎麦と天ぷら盛り合わせを食べてギリギリ14時14分のバスに乗り込めた。
あとは、ひたすらバスの景色がひなびた温泉郷からスモールターミナルまで移りゆく景色をボーッと眺めバスの終着地、中之条駅に到着。
行きには感じなかったが、帰りの吾妻線は長かったなー。
あとは高崎駅に出で、職場へのお土産を買い込み湘南新宿ラインで、今度は緑多き景色から高層ビルが立ち並ぶ大宮あたりまでくると寂しさを覚え、グリーン車内の案内掲示が武蔵小杉と表示されると、僕の旅も終わり。
こんな思いを毎回しつつ、翌週以降の勤めに向かっての英気を養う。
でも、「沢渡温泉」の泉質はとても良く、今でも僕の温泉暫定一位であった。
70男が言っていた様に、確かに遠いので、ちょっと「沢渡温泉」行ってくるわ!とはならないので、僕の中では秘境温泉として心に留めて置きたいと思っている。
月曜日、会社に行って職場の仲間に中之条土産であるサブレーを渡しても誰も興味を持ってくれないし、仮に話しても沢渡温泉を知らない。
それは覚悟して行こう!
「沢渡温泉」最高!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?