『エッセイ編・7 輝くものはいつも目の前にある』
仕事部屋の本棚には、
当然、ちびまる子ちゃんの本が何冊もあります。
彼女の作品に、憧れていたからです。
その1冊を抜き出し、パラパラとめくりました。
数秒後。
あるページで、目が止まりました。
「よし、企画ができた!」
一瞬で、それを確信しました。
それが、このページです。
このページ中に、
企画の、素晴らしいヒントが輝いていました。
そのヒントと言うのは、
2コマ目に書かれている、
このセリフでした。
『う〜、
情熱家の友人を持つと
めんどくさいなあ…』
素晴らしい名言だと思いました。
だから、その瞬間、
『ちびまる子ちゃん名言集』
という、アイディアが浮かんだのです。
このようなことは、誰でも日常で経験していることです。
だから、「あるある」と共感してもらえると思ったのです。
1ページ目に、名言を大きな文字で載せる。
2ページ目に、その名言が出ている漫画を、
そっくりそのまま載せる。
2枚で1組です。
このようなペアを、60個集めれば、
1冊の本になると思ったのです。
名言とその背景を見せる2ページ構成は、
視覚的にも内容的にも分かりやすく、
読者を惹きつける力があると思ったのです。
タイトルは……。
誰でも一度は耳にしたことがある、
聖書の『マルコ伝』を模し、
『聖まるこ伝』と、決めました。
この企画を考えていると、
ワクワク感が盛り上がり、
漫画家になってから数十年ぶりに、
我を忘れ、アイディアを考える楽しさに没頭していました。
とても、ハイになっていました。
寒さも全く感じていませんでした。
ただただ、素晴らしいアイディアが浮かんだことに、
興奮していました。
嬉しくて、嬉しくて、
「そうだ、このアイデアを、吉田社長に知らせて、喜んでもらおう!」
そう、思ったと同時に、
天才工場に、電話をかけていました。
プルルルルプルルルル
ガチャ
「……。……。はい……吉田です……誰ですか……」
とても不機嫌です。
明らかに怒っていました。
「昨日の会議に参加した、おかのと申します。
とても素晴らしいディアが、浮かんだんです!」
「あんた非常識だよ。
まだ5時過ぎじゃないか。
昨日の会議の後、みんなで飲みに行って、
さっき寝たばっかりなんだ」
私は、あまりにもハイテンションになっていて、
時間の感覚も飛んでいたのです。
今でも、なぜあんな時間に電話をかけたのか、
自分でもわかりません。
謝罪をし、それでも、プレゼンを始めようとすると。
吉田さんが激怒しながら、
「じゃあ!とにかくそれを、ファックスで送ってよ!!」
ガチャン。
私はアドレナリンが、出まくっていたのだと思います。
吉田社長の怒声にも、全くビビリませんでした。
図々しくも、作り上げたばかりの、
名言と漫画のペアを、ファックスで送信しました。
送信が終了すると、間髪入れず。
吉田さんから電話がかかってきました。
「いや〜、これは面白い!
こういうの、あと、10個ぐらい作って下さい。
集英社に提案します。わはははは〜っ!」
ガチャン!
吉田さんは、とてもクセのある人ですが、
ある意味、とても正直で、こだわりのない人だと感じました。
まずは、第一関門突破です。
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
改めて、先程の、
不思議な、神様との対話を、反芻しました。
神様「あなたがこれからやるべきこと、それは、
人を輝かせることです。」
私「人を輝かせる。確かにそれは素晴らしいことだと思います。
でも、こんな落ちぶれているボクが、
人を輝かすなんて、できっこないじゃないですか!」
神様「できます!
靴墨になればいいのです。」
私「靴墨!?」
神様「靴墨は真っ黒です。
でも、靴をピカピカに光輝かせることができます。」
私「なるほど、確かにそうですね。」
神様「あなたは今日から、靴墨になればいいのです。」
私「それなら今のボクでも、できそうです。」
神様「とにかく、だまされたと思って試してみなさい。」
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
そして、だまされたと思って、やった結果が、
今、僕の手の中にあるのです。
ついさっき、ファックスで、送信した2枚の紙が、
ボクの手の中にあるのです。
この紙の感触は、
幻想ではなく、現実です。
カーテンを、思いっきり、左右に開きました。
あたり一面、雪が舞い散っていました。
思わず胸が熱くなりました。
目が潤みました。
なぜなら……。
天から舞い散る雪が、
まるで、桜吹雪のように見えたのです。
桜吹雪が回転しだし、
まるで拍手が湧き上がるような感覚を覚えました。
そうだ、黒い努力が終わったのだ。
フィニッシュ!
……われるような拍手
つづく
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
『今日のひとかけら』
「自分を靴墨だと思えば、輝くものはいつも目の前にある。」
靴墨自体は黒く目立たない存在です。
ところが靴を磨くと靴が光り輝きます。
たとえ、自分自身が完璧でなくても、
誰かのために力を尽くすことで、
その人や状況が輝き始めます。
日常の中で、
「自分なんて大したことない」
と感じることがあるかもしれません。
でも、この「靴墨」のような心で行動すれば、
あなたの存在が誰かにとって、
特別な輝きをもたらすかもしれません。