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『エッセイ編・9 〈反射光〉という輝き』


「じゃ、企画会議を開始します」と、

編集プロダクション、天才工場の社長、

吉田さんのダミ声が会場中に響きます。


吉田さんから、

今回の企画会議の趣旨が説明されました。


それは、集英社で発売されているすべての漫画、

それを二次利用した、企画を作ることでした。


吉田さんは、集英社の重役から直接依頼されたとのこと。


「この会議で出されたアイディアの中で、

素晴らしいものがあれば、厳選して集英社に提案します。

書籍化される確率は、ものすごく高いです!」

とのこと。


その会議が開かれたのが昨夜だった。


そして私は、今朝、ひらめいた、

企画書をファックスで吉田さんに送った。


企画書のタイトルは、

『ちびまる子ちゃん名言集・聖まるこ伝』です


この企画が生まれる瞬間を、

エッセイ5と6で詳しく書いています。

ご興味のある方は、こちらからご覧ください。


ジリリリリリ〜ン!


吉田さんから、すぐに電話がかかってきました。


「いや〜、この企画は面白い!

集英社に提案します。わはははは〜っ!」


と、まずは、第一関門突破です。





それから数日後……。


吉田さんのもとには、100通の企画書が集まっていました。

その中から絞り込まれた、上位10本の企画が、

集英社に、プレゼンされることになりました。


もちろん、私の企画書も、その中の1つでした。


と、いうわけで、第二関門へ進むことができたのです。


集英社に届けられた、その10通の企画書が、

数人の重役によって精査されました。


どの企画書が採用されるのかは、

吉田さんもわからなかったので、

その席には企画の応募者は誰1人いませんでした。


最終選考に、3通の企画書が選ばれました。


彼らの目に叶う企画書は、その中にあるのか……。


一通だけ、最終選考を通過しました。


採用が決定です。


その企画書のタイトルは、


『ちびまる子ちゃん名言集・聖まるこ伝』。


よかった、採用決定。

と喜ぶのはまだ早いのです。


これはあくまでも、集英社内だけでの決定です。


さらに最終関門があったのです。


それは、

著者の、さくらももこさんが、

この企画に、オーケーを出すかどうかです。


さて、彼女は、どう判断するのでしょうか。


そのプロセスを、さくらももこさん自身が、

このようにお話し、しています。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


『さくらももこさん談』


ある日、急に出版社の方が

「ちびまる子ちゃん」の中には、良いセリフがいっぱいある。

人間の真理がストレートに表現されている。

それを抜粋して、

『聖まるこ伝』という本を作り、改めてその良さをみんなに伝えるべきだ」


というようなことを言い出したため、私としては、

「……そうかな?」と大変疑問に思っていたのだが、

一応「……じゃあ進めてみてください」と言った。


良いセリフなんて別にないだろうし、

『聖まるこ伝』なんて本自体、実にばかばかしい気がしたので、

企画倒れ系の話になるだろうな

という予感がしていた。


しかし、それから一週間後に抜粋されたセリフの原稿が届いた。


良いセリフと思えないが、

意外にも面白く思わず何回も笑ってしまった。

抜粋した人のセンスも良いよなあと感心し、

この本を作ろうという気持ちがぐんぐんと湧いた。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


というわけで、作者本人のオーケーも出たので、

この企画は正式に採用決定となったのです。


このような二次利用の書籍の場合、

漫画は、それまでに描かれた原稿から流用されるのがふつうです。


ところが、今回は、やる気を出した、さくらももこさんが、

表紙を描き下ろしてくれたのです。


さらに、すべての漫画の一番下に、コメントを書いてくれました。

これは特例的なことです。

ちなみに、さくらももこさんは、

抜粋した私のことは全く知りません。


なぜなら私はあくまでも黒子だからです。


結局。


100通の企画書の中から、『聖まるこ伝』だけが、

出版までたどり着いたのです。



そして、ついに発売されました。



新聞広告も大きく出ました。


広告に当時のメモが書き込まれています。
21年も前のことだったのですね。



『聖まるこ伝』は、

6万部の、ベストセラーになりました。


さくらももこさんは、大喜び。


天才工場の、吉田社長も大喜び。


そして、私も大喜びしました。


なぜなら企画料として、

多額の印税を手にし、

経済的な危機を脱することができたからです。


その金額は、悪戦苦闘して、その年、12ヶ月間で得た、

すべての漫画を合わせた、原稿料を上回っていたのです。


素人の私が、初めての企画で成果を出したので、

徐々に、出版関係の方々から、注目されるようになりました。


「人を輝かせなさい」という、神様からのメッセージ、

確かにその通りにしたら、予想外の素晴らしい結果が出ました。


「この道を進めば、信号は青だよ」と、

神様が教えてくれているような気がしました。



その後、

「人を輝かせる」という気持ちで、企画を立てると、

次々とヒットしました。


道路を車で走っていると、

信号が次々と青になっていく感覚でした。


そんなある日。

天才工場を紹介してくれた、

感謝しても感謝しきれない、

漫画家仲間の〈つだゆみ〉さんから、


こんな話を聞きました。


「おかのさんのこと、吉田さんが、ほめてましたよ。

あの人は、一種の天才だって」


驚きました。

吉田さんがそんな風に言ってくれるなんて、

全く思いもしなかったからです。


その一言は、廃業寸前だった頃の自分を思い返させました。
「やっぱり、この道を進み続ければいいんだ」
心の中でそっとそう思いました


新たなエネルギーが溢れてきました。



その数年後。


私がプロデュースさせていただいた、たくさんの方々が、

ヒット作を出し、

どんどん輝いていきました。

それも太陽のようにです。
私の周りにはたくさんの太陽ができていました。


気がつくと……、

いつの間にか私も、

わずかながら、輝いていたのです。


その輝きは、

月が太陽の光で輝くように、


私が輝かせていただいた、たくさんの方々の、

反射光だったのです。



⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️



『今日のひとかけら』


誰かを輝かせることは、自分自身を消すことではありません。


むしろ、

その光がいつの日か、自分をも優しく照らし返してくれるのです。


不思議なことに、人を支え、輝かせようとする行動が、

巡り巡って自分の人生を豊かにしてくれるのです。


それはまるで、月が太陽の光を受けて輝くようなものです。


与えた光は消えず、やがて自分を照らす贈り物となるのです。


⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️


「あなたは、人を輝かせたことがありますか?」


「誰かに、輝かせてもらったことがありますか?」


ぜひ、コメントで教えていただければ、とても嬉しいです。



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