あの夏の答えはまだ分からない
みんな、夏の思い出はできたか。
暑くて涼しいショッピングモールを歩いてただけって人も多いかもな。
それもいい思い出じゃんか。
あと少しで夏が終わっちまうな。
1つの季節には始まりがあって、終わりがある。
夏の終わりはちょっと寂しいけどな。
今ってさ、青一色の空の中に低い高さでしっかりとした輪郭の雲が浮かんでいるだろ。
でも、少しづつ空の雲が高く、かすれて、秋になっていく。
涼しい風が肌に触れると、気持ちいいけど切なくなる。
そういえば、今年は大きな花火大会に行かなかったなあ。
ある夏は花火大会で女の子が一緒だった。
仲の良い友達だったんだ。
とっても優しい子だった(正直、かわいい子)。
カフェで喋るのがほとんどだったけど。
8月の初めの頃。
その子からメールが届いた。
「ねえ、用事がなかったら一緒に花火大会に行かない」
俺は「いいよ」と短く返して、待ち合わせ場所と時間を何度かやりとりした。
当日、花火大会の会場に待ち合わせの駅から一緒に行った。
会場までは浴衣をきたカップル、何か楽しいことがあると盛り上がる子供を親が後ろから追う家族、たくさんの人が歩いていた。
会場に到着。
人が多すぎてその子と離れてしまいそうになった。
俺は彼女の手をとって、手をつないだ。
手をつないだら彼女は何もいわずに自然だった。
しっとりと汗をかいていて、あたたかい手だった。
広場に出たのに手を放すタイミングの逃してしまった。
結局手をつないだまま一緒に屋台を歩いた。
かき氷を買った。やっぱりかき氷の屋台は人気だよな。
あたたかい手を離して冷たいかき氷を持った手はひんやりとしたけど、彼女と手をつないでいた時のお互いのあたたかい空気はそのままだった。
かき氷を一緒に食べながら、一緒に夜空に咲く大輪の花火を見た。
その日は別の路線に乗るその子を駅の改札まで送ってお別れ。
それから1週間くらいしてから。
その子から電話着信があった。
普段メールから入る子なのに急ぎの用かなって思った。
電話にでると会話は花火大会のことや普通の話題。
最後に彼女が一瞬話をとめて少し空気が止まった。
「あのさ、聞きたいことがあるんだけど・・・」と言いながら少し彼女の声が小さくなった。
俺は「んー、どうした」と聞いた。
彼女は「あ、ううん、なんにもない」と笑いながら少し焦った口調で言った。
その日はその電話で終わった。
そして俺らはしばらく連絡をしていなかった。
ある日、メールを送るとアドレスが変わっていた。
あの夏の花火を一緒に見て、駅の改札で見た彼女が俺を見て笑顔で手をふってくれた姿。
それが彼女を見た最後だった。
ただの俺の想像話だって思うだろ。
でもこれは本当にあったこと。