【別宮貞雄】今日行ったコンサートの感想:令和04年(2022年)09月30日(金)【生誕100年記念:協奏三景】
指揮:下野 竜也
ヴァイオリン:南 紫音
ヴィオラ:ティモシー・リダウト
チェロ:岡本 侑也
コンサートマスター:山本 友重
管絃楽:東京都交響楽団
『チェロ協奏曲「秋」』(1997/2001)
別宮貞雄の中で最も美しい音楽ではないでしょうか。寂しい。悲しい。叙情的。つらい思い出も、それらを乗り越えて、前を向いて行きていかなくてはならないのです。
前々から古典的だなとは思っていましたが、編成が2管編成でトロンボーンも2人しかいませんでした。派手さは無くとも、切り詰めて端正。CDを聴いているだけでは分からなかった独奏チェロの身振りが見えて、ああ、ここはそんな動きをしていたのか、と新たな発見がありました。第2楽章はまるまるカデンツァ。弾き切る。聴かせ切る。素晴らしい演奏でした。
『ヴィオラ協奏曲』(1971)第20回尾高賞
ヴィオラ。何と言ってもヴィオラ。絃楽器の中で一番好きなのがヴィオラ。低音の渋さ。燻し銀。もうヴィオラ協奏曲というだけで好きになってしまう。聴いてみて更に好きになる。
2管編成ですが今度はチューバまでいるぞ。低音バリバリ。第2楽章は金管楽器の幻想的なコラールから始まる。ホルンとトロンボーンの合奏、柔らかくて良いですね。
第3楽章はチューバのソロで始まる。凄い始まり方だと思う。独創的。主部は6/8拍子と3/4拍子の交替が特徴的。カデンツァにも出て来る。最後のオーケストラは、え? 音量絞るの? と思いましたが、飽和するよりは良い解釈だったんじゃないでしょうか、と今になって思う。
『ヴァイオリン協奏曲』(1969)
ヴィオラ協奏曲もかなり半音階的でしたが、こちらは更に前衛的。当時の最先端といった感じ。全体的に低音が半音階的にうごめいていて、おどろおどろしい。打楽器も多く、ボンゴとコンガがいて撥で叩いていました。
今度も第2楽章がまるまるカデンツァ。前衛的と言っても十二音技法や総音列技法ではなく、半音階を攻めて長調短調の枠組みから外れた、旋法的な音楽。今で言う新ロマン主義。破滅的。
第3楽章の序盤は、フルートがリズム楽器になるという革新的な管絃楽法。私はこれを自作の中で真似したことがあります。これからも別宮貞雄リスペクトとして用いて行きたい楽器法です。独奏ヴァイオリンは迫力があり、半音階的な曲想も手伝い、鬼気迫る、と言った感じでした。この曲、気が休まるところが無いな?
チェロ協奏曲からヴァイオリン協奏曲まで、作曲された年代を遡る曲順でした。晩年の枯淡、円熟と言った境地から、若い頃のギラギラした音楽へと、エネルギーが高まっていくプログラム。それにしても私は絃楽器の重音奏法が大好き。一つの音を大事に朗々と歌うのも良いですが、二つの音を、しかも半音階的にきわどい音程を使ってギャッギャッと引っ掻かれると、もうそれだけで惚れてしまう。音楽は破滅すべき!
会場ロビーで楽譜が売っていたので、即座に買ってしまいました。Amazonで売り切れになっていて出版社に問い合わせたときも在庫が無かったのですが、昔ヴァイオリン協奏曲だけは手に入れていたので、今回チェロ協奏曲とヴィオラ協奏曲を買い、これで絃楽器の為の3つの協奏曲のスコアが揃いました。