⑥『カレー屋になったけどごまどうふ屋』
結婚してカレー屋に
いきなりですが、結婚しました。
そしてカレー屋になりました。
安心してください、ごまどうふ屋もやっています。時系列でいうと、
2019年10月の終わり頃〜2020年7月9日の間に、出会いから入籍へ、お店を持ちたいと思ったことからオープンまで、目まぐるしい毎日を送っていました。
キッカケは滞在時間
なぜ、ごまどうふ屋がカレー屋になったのか、と聞かれることも多くあります。しかし、いきなりカレー屋になりたかったわけではなく、「お店を持ちたい」という想いから始まりました。
石本商店はもともと、「じいちゃんのごま豆腐を売っている、ばあちゃんの金物屋」です。
じいちゃんは、ごま豆腐をぼくに引き継ぎ、いよいよばあちゃんも、お店に立つのがシンドイと、ため息まじりに言うようになりました。
ごま豆腐が売れるようになった頃、メディアの影響か、1日に2〜3組ほど、遠方からの来客がありました。しかしお店は、住宅街の金物屋。せっかくきてもらったのに、ごま豆腐を買ったら、それでオシマイ。
売り切れていようものなら、残念そうに、来た道を帰っていきます。
なんだかもったいないな。
せっかく来てくれたのに、滞在時間でいうなら約2分。周りにぶらぶらできるお店があるわけでもなく、見渡す限りの家、家、家。
もしも、ばあちゃんがお店を閉めるなら、ぼくがこのお店を活かしたい。そうして、せっかく来てくれたお客さんだし、珈琲の一杯でも御馳走したい。それがお店を持ちたいキッカケでした。
お茶しましょう
いつだったか、「ぼくとお茶しましょう!」なんてTwitterで投稿すると、たった1人だけ手を挙げてくれました。
カフェで待ち合わせをしたのが2019年10月23日。出会ってビックリ、アナウンサー。
歳も同じで仲良くなって、2週間後には交際開始。そのまた2週間後に「お店を持ちたい!」なんて、相談してました。
そしたらビックリ、仕事を辞めると言うもんだから、こちらも本気で挑まなきゃいけません。
2人の共通点は「カレーなら毎日食べたいくらい、好きなこと」。
どうせお店をやるなら、自分たちが好きで、楽しく続けられるものがいい。
どんなお店にしましょうか
好きだから、毎日でも食べ飽きない。そんな理由でカレー屋に決めました。
飽きないためにも、週替わりのカレーを作ろう。お皿やグラスは可愛いものを。御手洗いには大きな鏡。観葉植物いくつか欲しい。外観はそのまま残そう。大きなテーブルをドカンと置きたい。2020/7/9オープンだ!
たくさんたくさん妄想を膨らませました。
これまた出店
さて、ごまどうふ屋さんとして、あちらこちらで出店販売を続けることは、この頃も変わりません。
どこで聞きつけたのか、新潟県庁での販売で「カレーも販売しませんか?」なんて、声をかけていただきました。
ぼくたちまだお客さんに出せるカレー作れませんから…なんて言うはずもなく、二つ返事で「喜んで!」。
そこからは、出店日に間に合わせるよう、カレーの試作。容器はどうしよう、スプーンとおしぼりも用意しなくちゃ。ポップなんかも用意して、記念すべき初出店だと、告知に告知。
なんとか初出店を終え、ドキドキしながら用意していた60食のカレーが、あっという間に売り切れました。これはいけるぞと、この日から出店の嵐。なぜなら出店は慣れっこです。
3月.4月.5月.6月。奇跡的に持っていたキッチンカーをフル活用。あちらこちらでカレーとごま豆腐の販売です。全世界に猛威を奮った新型ウイルスの影響もあり、テイクアウト需要に火がつきます。
オープンの7月9日までにやったことといえば、①とにかく多種多様のカレーを作り、カレー経験値を高めること。②7月いっぱいは予約制にして、席の予約チケットを売り切ること。③改装工事の費用を1円でも多く稼ぐこと。④出店をひとつでも多く重ね、未来のお客さんを作ること。でした。
ついにオープン
2020年7月9日、だれが予想できたか、ごまどうふ屋とアナウンサーが結婚し、カレー屋になりました。
『カレーとごまどうふの店 石本商店』、これがぼくたちのお店の名前です。
たくさんのお祝いをいただき、オープン当初は植物園。出店販売から知るお客さんも「よくやった!」と一緒に喜んでくれました。
お客さんとの触れ合い、これがお店を持つことのなによりの価値なんだと感じます。
たくさんたくさん、たくさんの方がお祝いに訪れてくれました。
そして今
これを書く現在、2021年2月21日。ぼくは今日で28歳になりました。
ごまどうふ屋になったのが22歳のときです。もう6年経ちました。
なんだか、どうしようもなく売れなくて、たくさんたくさん悩んだり、たくさんたくさん落ち込んで。できることならやってみよう、全てはじいちゃんのごま豆腐を知ってもらうためでした。
キッチンカーを作ったり、カレー屋になったりと、なんだかよくわからないことを、たくさんやってみたけれど、結局立ち帰るのは「じいちゃんのごま豆腐まじで美味いから食べて欲しい」。その気持ちひとつです。
カレー屋さんになったことで、若い方々にもごま豆腐を知ってもらえるようになりました。 カレー屋さんを通して、初めてごま豆腐を食べたって人も、1人や2人じゃないはずです。
カレーの食後に、ごま豆腐のデザートを。
それがどこにも真似できない石本商店のアイデンティティ。
最近では「プリンください」なんて言われます。プリンじゃなくてごま豆腐。
でも、この一言が嬉しかったりするんです。ごま豆腐を知らない人がソレを買う。
つまり、時代に合わずに、廃れてゆくはずのものを、ちゃんと今の時代に、繋ぐことができている。
なーんて、調子に乗ったらまた売れない日々に戻りそうで、あの頃の気持ちを、いつでも思い出せるよう、未来の自分のためにこんな雑記を書いてみます。
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