あなたはこんな人、と簡単に決めつけられない~映画「朝が来る」
久しぶりに日本映画を見ました。「朝が来る」(2020年製作)です。
育ての両親(井浦新と永作博美)が主人公と思いきや、実は生みの母(蒔田彩珠)が主役だったのか!と思えるほどに、蒔田彩珠が素晴らしいに尽きる映画でした。前半の少女の美しさと後半のすさんだ孤独感とのギャップのすごさ、末恐ろしい18歳。
立場が違う女性達
育ての両親、産みの母、産みの母の母親、特別養子縁組を支援するNPOの代表、それ以外にも出産を控えた女性達や特別養子縁組の説明会に訪れた人々、新聞配達の女の子…
一見、あまりにかけ離れた違う立場のように見える女性達が出てきます。「自分はそんな生き方はしない」と思っていても、何かのきっかけでそうなる可能性は誰にでもある。どの人にもなりうる。さて、私はどの人?
「あなたはこんな人」と簡単に決めつけられない
映画では、子どもが里親に引き取られた後の産みの母の6年間の有り様を見せてくれるから、視聴者はひかり(産みの親)のことを理解しようと思うけれど、実際に6年ぶりに再会したその人の背景は、他人にはわかりません。
里親夫婦は、最初はひかり(産みの親)だとは気づかず敵対してしまいます。けれど、他人への想像力を働かせることができたから、ひかりのことを受けとめられたのかも?
ひかりの母親や家族や親せきは、あんなに近くにいてもひかりの内面のことを想像しようとはせず、娘を傷つけてしまう。ありがちで悲しい。
だから、他人への想像力を、もっと!子どもたちへの想像力を、もっと!
そして、朝斗の優しさ…
そして子どもはいつでも誰にでも「あなたはこんな人」という決めつけをしません。大切に育てられたであろう朝斗の最後の言葉に、救われる思いがしました。
ひかりの人生も、きっとその一言で変われる、そう信じたい。
河瀨直美監督は作品によって印象が大きく異なる
河瀨監督の「あん」はとても好きでしたが、「Vision」は全く付いていけなかった…
今回「朝が来る」は、どっちかな?とドキドキしながら見ましたが、いい意味で考えさせられる映画でした。
このチラシ、見終わってからしみじみ面白いなぁ、と思いました。
育ての両親(井浦新と永作博美)の戸惑いと疑いと恐れが入り混じった表情と、ボサボサの脱色した髪にペラペラのスカジャン後ろ姿の女の子。
「あなたはこんな人」という先入観、決めつけ、を持っているのか?と試されているように見えなくもない。