しんどい時出会った映画は人生の友達
今年2022年下半期、私はしんどいことが重なってる。介護とか仕事とか。
人生が好調の時より、「ちょっと今つらいんだけど」というときの方が、映画を見たら深く感じ入ることが多い気がする。
現実から少し離れて、映画のなかの社会や登場人物がより身近に迫ってくるというか。
というわけで、今年下半期に見た映画は明るいものも暗い深刻なものも、どれもこれも心に響く作品ばかりで、見終わってから温かい気持ちになるものが多かった。そんな中から今年出会った私の人生の友達になれそうな映画を紹介します。
ベルファスト(2021年製作/イギリス)
今年見た、断トツで好きな映画です。
(ちなみに今年は「コーダ」⇒「ブローカー」⇒「パラレル・マザーズ」⇒「ベルファスト」と一位が3回更新されてます(笑)まあ、たまたま見た順番で公開順じゃありません)
アイルランドのベルファストで、プロテスタントとカトリックの分断の紛争時に子ども時代を過ごしたケネス・ブラナー監督の自伝的映画。
否が応でも、コロナ禍やウクライナ軍事侵攻による分断が想起させられるし、たぶんそのことを思って作った映画だと思う。
こんなに苦しく辛い分断の社会でも、日常では子どもは子どもらしく明るく遊び、勉強し、恋愛もする。両親はとても「大人」でかっこよく。祖父母はユーモアに満ち優しく強く温かい。そして町中みんなが声を掛け合い子どもを育てている。音楽や映画などの文化が日常にあふれている。そんなベルファストを去るか?決断を迫られる家族。
お母さん役のカトリーナ・バルフが美しくたくましかった。初めて見た女優さんですが目が離せませんでした。おばあちゃん役のジュディ・デンチのオフィシャルサイトのインタビューが美しかった。。。
さらにベルファストの良さは「おもちゃ」にあり。
ミニカー、サンダーバード、テーブルサッカー、木のおもちゃを修理する大人。
そして大人が本当によく子どもと話したり、遊んだり、勉強を見てやったり。昔の大人は、あんなに困難なさなかでもどうしてあんなに心に余裕があったのだろう。なぜ現代はできないのかな。
アトランティックス(2019年製作/セネガル)
許されない恋愛に悩む若い女性の物語かと思いきや、ミステリーっぽい事件が出てきて見入ってるうちに、死者と通じ合う不思議なシーンがさも現実であるかのように…(絵面はホラー)。
しかし最も訴えたいのはおそらく不当労働からの移民問題。ばっちり社会派でセネガルの女性監督の作品。セネガルってサッカーの印象ですが一夫多妻制で「海」の国なんですね。
幻想的であの世とこの世が重なり合うような世界観は独特でアフリカの人の感覚なのかなぁ。面白くて不思議。Netflix。
ブルー・バイユー(2021年製作/アメリカ)
アメリカの移民強制送還の制度のために、何の落ち度もないのに引き裂かれる家族のお話し。
監督も脚本も主演もこなすジャスティン・チョンの知性的なまなざし。そして子役がかわいく賢くすばらしい。強くて温かいシングルマザー役のアリシア・ヴィキャンデル。これまで出演作たくさん見ていますが同じ女優だと気づかないほどカメレオンで、逆に印象残らない感じでしたがこの役はかなり良かった。
こんな理不尽ってない、と暗く悲しい気持ちでラストで涙ボロボロでしたが、つらいけど見てよかった。何も知らなかった。そして家族が一番大切だと見終わって温かい気持ちになる映画。primeで視聴。
聖なる証(2022年製作/イギリス)
アイルランドの小さな村で起きた不思議な出来事を解明するためにやってきた看護師。独特な世界観ですが面白いです~どんだけ古い価値観の村の中で、めちゃくちゃ現代風なたくましい女性。
フローレンス・ピューから目が離せない。「ストーリー・オブ・マイライフ 私の若草物語」でも出ていましたが、あの押しの強い存在感たるや。
ミセス・ハリス、パリへ行く(2022年製作/ハンガリー、イギリス)
大人のシンデレラストーリー+結構な冒険モノ。Diorのオートクチュールのドレスを作りにパリに行く家政婦。
よくよく考えたら、ミセス・ハリスってほぼ同年代じゃ???どんなに挫折しても夢をあきらめない彼女に共感の嵐!
子どものころからミセス・ハリスはおばあちゃんだと思ってたんだけど…www
パラレル・マザーズ(2021年製作/スペイン)
しみじみよかった。ペネロペ・クロス、年を重ねて相変わらず素敵だ。
赤ん坊の取り違え事件に翻弄される2人の女性の複雑な関係かと思いきや、
同時に通奏的に描かれるスペイン内戦の悲劇の歴史の悲劇。
どちらにも共通する真実を明かす勇気をもつこと。そして歴史は隠してはならない。
難解たけど、ひとりの女性が持つさまざまな面が描かれていて面白かった。
周囲の人との関係性によりもともと持った民族性とかその人の個性でこんなに人は豊かになるんだな、と。
ドライブ・マイ・カー(2021年製作/日本)
やっと見た。(笑)
3時間なんて長すぎて無理、と敬遠していましたが、ちゃんと見たらなんで3時間になるのか分かった。
人に打ち明けられないような心の痛みを抱えた人が人間同士の距離を近づけていくには時間がかかるよね。現実でもそうだよね。
最後の韓国パートの意味がよく分からず、あれこれ想像しました。
西島秀俊は昔ひょろっとしていて変な映画ばかり出ていた頃が好きでした。「Dolls」とか「さよならみどりちゃん」とか「真木栗ノ穴」とか。
アテナ(2022年製作/フランス)
Netflix。冒頭10分の暴動シーンの長回しがすごい。(YouTubeで探して)メイキングを見たら本編よりすごかった。
その後は事件により3兄弟のそれぞれの考え方や立場の違いと対立が深くなってしまい。これまた違った背景かもしれないけど、これも分断なんだよね。
お母さんの目線で見ていたら辛くて仕方なかった。